プロローグ
7歳の私は森の中をひたすらに走っていた
外のことを何も知らない私はただ純粋に外の世界のワクワクを目に焼き付けた。
ただひたすらに前を見ていた私は下の木の根に気づかず転んでしまった。
擦りむいた膝から真っ赤な汁が垂れる
ズキズキして、ヒリヒリして、
「い、たい?」
その言葉は父がたまに言っていた言葉だった
これが『いたい』なの?
そんな自身の新たな出来事にも、ワクワクした。
森の奥の世界をもっと見たかった、立ちあがろうとしたが力が入らなかった。
どうしようかと空を見上げた。
止まってたらいずれ父が見つけてくれる…
だけど、そしたら外の世界に出たことがバレるし、怒られるし、家に戻されてしまう。家は嫌いじゃないけど、ワクワクは感じない
「お前、何してんの」
後ろから声がかけられた。
黒髪黒目の少年。
声で返そうと思い、口を広げ、今を教える事にした。
「動けない」
その少年は赤の汁を察したのか背中をこちらに向け、屈んだ
「乗れよ」
少年のやりたいことがわかった
少年の背中に乗ると、少年は私の背中を抱え、体制を整えると目的地も聞かず歩き出した
「お前、家はどっち?」
「お前じゃない。リーシュナ」
「わかった。俺はシルベ、リーシュナ、家はどっち」
「あっち」
声に抑揚が感じられない少年は指を刺した方向に歩き出す
しばらくすると家が見えてきた
「ありがとう、もう大丈夫」
いたいがなくなってきた。
「お前、歩けるか?」
頷いた
「歩ける」
「じゃあ、またな。もう転ぶなよ」
少年は手を振った。
私も真似して振ってみた。
「じゃあね?、シルベ」
少しワクワクした。
家に帰ると、しばらくして父が帰ってきてた。
「お父さん。ラズベリーあったからとってきたよ」
お父さんは優しい顔を向けて撫でてくれた
「そうか、じゃあ今日はラズベリーのパイでも作ろうか」
私は頷く
父は私を見ると急に顔色が変わった
「シュナ、その怪我どうした!」
「転んだ?」
「庭の外に出たのか?」
父の顔を見るのが怖かった。だから
「出てないよ。」
嘘をついた
父はホッとした顔を見せ
「手を洗ってきなさい」
と洗面所へと促した
この頃から、少しずつ髪の色が白くなっていった