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第97話 修行の後は美味しいご飯

一行はいつもの修行用の広場にやってくる。ベルとクレイは隅に寄り、岩に腰掛けて応援する事にした。


「さて、じゃあやろっか!はいっ。」

「わっとと…」

「おっと!」


降助は木剣を2人に投げ渡し、体をほぐしながらヴニィルに問いかける。


「ヴニィルもたまには剣とか使ってみる?」

「いや、我はいらん。剣…というか、武器は我に合わぬ。手から抜けたり折れたりと、どうにも使いこなせなくてな。結局、魔法か直接殴ったほうが早いし強いし、楽なのだ。」

「そうなんだ…」

「んで師匠、今日はどんな修行するんだ?」

「今日は皆対俺でやるよ。皆の勘を取り戻しつつ、3人以上での連携を上手くできるようにしたいかな。あ、ベルは後で一緒に魔法の練習しようね。」

「はい!」

「3対1か…まあ丁度よかろう。クーア、トーカよ。準備は良いな?」

「良いぜ。今日こそ師匠に勝ってやる!」

「いくよー!」

「来いっ!」


降助が2本の木剣を構えた瞬間、クーアとトーカが距離を詰め、上段と下段に分かれて攻撃を仕掛ける。しかし、降助は難なく木剣で防ぐ。


「おっと…!」

「ぐ…!」

「やっぱり防がれた〜!」

「上段と下段、2箇所に同時に攻撃するのは良い手段だね。もっと練習して練度を上げてこ―」(あれ、待った。ヴニィルはどこだ?さっきまで2人の後ろにいた筈…)


瞬間、降助の頭上から手刀が振り下ろされる。


(上か!)「ふっ!」

「わっ!?」

「ぬうッ!?」


降助は咄嗟に左手に持っていた木剣を蹴ってトーカの姿勢を崩し、そのまま振り上げてヴニィルの手刀を弾き、後方に距離を取る。


「《縮地》!」

「速っ─」

「隙あり!」

「「あだっ!」」


降助は縮地で距離を詰め、クーアとトーカの頭をこつんと木剣で叩く。


「う〜…」

「修行やっとけばよかった……」

「ね?継続は力なりって言うでしょ。これからまたちゃんと修行するように。」

「ふっ、説教は良いが我がいる事を忘れていまいな!」

「おっと。」


ヴニィルは次々と鋭いパンチやキックを繰り出すが、降助は全て躱していく。


「ぬおおッ!」

「そこっ!」

「ぐっ!?」

「えいえいえいえいえい」

「ぶぶぶぶぶ」


降助はヴニィルの隙を突いて木剣で頬をぺちぺちと往復して叩く。


「えーい」

「ぶぶぶぶぶぶぶ…って、いい加減やめぬか!」

「あはは、ごめんごめん。」

「ぬう…おかげで頬が少し赤くなってしまったではないか……」

「ごめんって。じゃあ続けるよ。」

「うっし、やるぞ!」

「おー!」


その後、ヴニィルが多少善戦したくらいで3人の修行は終わり、ベルの魔法の修行に切り替わる。


「そうだね…久し振りにやるし、ホーリーボールの練習をしよっか。」

「はい!」

「まずは詠唱ありで俺に撃ってみて。」

「えっ!?だ、大丈夫なんですか…?」

「大丈夫大丈夫。だって俺だもん。」

「…それだけ聞くと不安な筈なのに、不思議と説得力がありますね……分かりました。では、いきます!」

「いいよ〜!」


降助は少し距離を取り、ベルは詠唱を始める。


「聖なる玉は、触れるものを清める!《ホーリーボール》!」

「成程、こんな感じなんだね。」


降助に向かってホーリーボールが放たれるが、腕で払ってかき消してしまう。


「そんな、蝿を払うかのように……」

「それじゃあ、詠唱ありで練習していこうか。」

「詠唱省略での練習はしないんですか?」

「うん。まずは詠唱ありで安定して魔法を使えるようにしないとね。だから、ベルには詠唱と魔法陣の構築を素早く行えるように頑張ってもらうよ。」

「分かりました。頑張ります!」


ベルは魔法陣を構築し、素早く詠唱をしようと試みる。


「聖なる玉は触りぇるっ…か、噛んでしまいました……」

「まずは落ち着いてみようか。素早くやるのと、慌てるのは違うからね。いきなり早くなくて良いよ。まずはしっかり言えるようにイメージして。」

「はいっ!」


降助の指導の下、ベルは練習を続けた。そして…


「聖なる玉は触れるものを清める《ホーリーボール》!」

「良いよ!最初よりだいぶ上達したね!」


降助は笑顔でベルを褒めながら、お手玉のように遊んだ後、パンと叩いてかき消す。


「まったく実感が湧かないのですが……それにしても…く、口が疲れました……」

「沢山詠唱したからね…お疲れ様。そろそろ日も暮れてきたし、今日はこれで終わりにしよっか。」

「皆お疲れ様ー!ご飯できてるよー!」


修行の終わりと同時に、夕食を作り終えたクレイがやってくる。


「わ〜い!」

「メシだメシ〜!」

「今日のメニューは?」

「今日はね〜…ミートボールスパゲッティだよ!」

「いいね!早く食べたい、あ、皆、手洗いは忘れずにねー!」

「「「はーい!」」」

「ふふっ…コウスケ、なんかお母さんみたい。」

「そ、そうかな…?」


降助が少し照れていると、ヴニィルが不思議そうな表情でクレイに尋ねてくる。


「ところでミートボール…スパゲッティ、だったか?なんだそれは?」

「簡単に言うと、丸めた肉とトマトソースで作るスパゲッティだよ!」

「ほう?そんなスパゲッティがあるのだな。丸めた肉というと…肉団子か?それをスパゲッティに入れるとは、中々無い発想だな。」

「そうなの?」

「少なくとも我にはな。スパゲッティといえば、トマトソースか緑色のやつくらいしか知らぬ。あとは油と唐辛子を使ったものくらいか?」

「ジェノベーゼとペペロンチーノかな?スパゲッティにはまだまだ種類があるから、また今度作ってあげるね!」

「ほう!まだ種類があるのか!楽しみだな。」


その後、皆でミートボールスパゲッティを堪能し、ゆっくり風呂に入って明日に備えるのだった。

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