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第94話 学年末試験 4

魔法科の試験から数日後。遂に学年末試験の結果が発表される。


「今日は結果発表だね!」

「だね〜……合格してると良いけど。」(岩壊したから失格とか無い……よね?)


内心不安になりながらも教室に入り、少ししてテストの答案と、合否通知書が渡される。降助はおそるおそる確認すると、通知書には合格と書かれていた。


「良かった〜、合格だった〜!」

「私も合格だったよ!」

「おめでとう。そういえば、中庭に成績順位が張り出されてるみたいだから放課後にでも見に行こっか。」

「うん。行こう!」


その日はテストの解説だけで授業が終わり、降助はクレイと共に中庭にやってきていた。中庭では学年ごとに成績の順位が張り出されており、多くの生徒達で賑わっていた。


「休み時間は人多いかなと思ったけど、放課後でも結構いるね。」

「だね。ちょっと待とっか。」

「あんた達も見に来てたのね。」


ふと後ろから声をかけられたので振り向くと、リリィがいた。


「あ、リリィ。」

「リリィちゃんだ。」

「んっ……い、いつの間にそんな呼ばれ方する間柄になったのよ……にしても、いつも2人で居るわよね。そんなに仲良かったの?」

「まあ、付き合ってるし。」

「なんなら婚約者なので!」

「ふーん、付き合ってんのね。……は、え、こ、婚約者ぁ!?あんた達付き合ってるの!?」

「そうだよ。だから俺は平民部から貴族部に転入したの。」

「そ、そういう事だったのね……なんだ……好きな人いたんだ……って、あたしは何を……こいつの事なんか別に……」

「?何か言った?」

「な、なんでもないわよ!ほら、空いてきたからさっさと見てきたら!?あたしはもう行くから!」

「あ、ちょっと!見なくて良いの?」

「うっさい!」


後半がよく聞こえなかったので聞き返すも、リリィは踵を返して足早にどこかへ行ってしまった。


「行っちゃった……」

「あ、ほら!リリィちゃんが言ったとおり、空いてるよ!見に行こう!」

「うん。」


(まば)らになり始めた人混みの中を掻き分け、張り出された順位を確認する。張り紙はまず学年で分けられ、次に座学、武術科や魔法科など各部門で上位10名が記載されていた。


「えーっと、1年は……嘘……」

「ん?お、おお……」


1年生の順位を確認すると、座学、武術科、魔法科の1位を降助が独占していた。


「独占してる……」

「昔から勉強できるタイプだったもんねえ……」

「3つも1位を独占してさぞ舞い上がっているようだが……それもそこまでだ。」

「その声は…!」


嫌味たらしい声が聞こえたかと思うと、ふんぞり返ったレインが歩いてきた。


「平民が貴族部の試験、3つの部門で1位?面白い冗談だ。どうせ不正したのだろう?」

「まだ言ってるのか……いい加減飽きないの?」

「チッ、どこまでも癪に障る野郎だ……!座学の試験ではカンニングを行い、武術科と魔法科の試験では禁止されている魔導具を使って不正を働いた!これが真実だ!さあ!この貴族の品を貶める平民を排除しろ!」


レインは声高に叫ぶが、同調する者は誰1人いなかった。


「…?おい、何をしている!こいつを糾弾しろ!排除するんだ!!ボサっと立ってるんじゃない!!」

「って言われてもなあ……」「レイン様、まだあんな事を言ってるのかしら……」「流石に俺達もついてけないよなあ……」

「どいつもこいつも……っ!もういい!俺が直接―」

「騒がしいな。」

「!」


レインが杖を取り出して魔法を放とうとした瞬間、レインの兄であるクウルが現れ、周囲がざわめき立つ。


「クウル様だ……!」「まさか、こんなところでお目にかかれるとは……!」

「あ、兄上……」

「で、何をしている?このような往来で騒いでいるのだ。何かあったのだろう?」

「は、はい。丁度ここにいる生意気な平民に身の程を分からせようとしていました!」

「平民?」


クウルはレインに指を差された降助を下から上までじっくり眺め、問いかける。


「白髪混じりの黒髪に青い瞳、元平民の生徒……コウスケ・カライトだな?」

「はい。」

「君の噂は聞いている。何度か魔王軍幹部と交戦し、見事撃退に成功しているとか。父上も大層褒めていらしたな。そして今回の試験、3つの部門で成績1位を取ったとも。しかも魔法科の試験ではあの岩を破壊し、直らなかったそうだな。」

「そ、それです!平民がそのような事、できる筈がない!不正を働いたに違いありません!だから貴族の品位を貶める、この者を糾弾し、排除しようと―」


会話に割り込み、必死に説明するレインをクウルが鋭い目で睨みつける。


「黙れ。むしろ、その行為こそが品位を貶めていると気付かないのか?数刻前から見ていたが、何かと理由をこじつけて喚きたて、僻んでいる様は見るに堪えなかったな。」

「な…!お、俺は……!」

「いい加減、他者ではなく己に目を向けろ。これ以上騒いで俺や父上を煩わせるな。」


それだけ言い残し、クウルは去っていった。


「クソッ……!どいつも……こいつもッ……!」


レインもこれ以上降助に絡む事はなく、歯軋りしながら足早に去っていく。


「えっと…か、帰ろっか?」

「…だね。もう用は無いし、帰ろう。」(ガーヴといい、リリィといい、レインといい……この世界にマトモな兄弟姉妹はいないのかな……コウさんとボウさんくらいだよ、マトモなのは……しかもあの2人義兄弟だったし。)


関係性に難ありな兄弟姉妹ばかりに呆れつつ、クレイと共に寮へ帰る降助だった。

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