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第93話 学年末試験 3

武術科試験の次の日。降助は魔法科試験の会場に来ていた。


「よし、これが終われば学年末試験も終わり……あ、リリィ!」

「…あんた、そういえば魔法科も入ってたわね。それと…聞いたわよ。昨日の武術科試験、一方的で戦いにすらならない怪物だったって皆が噂してたわ。」

「そ、そっか。でも怪物呼ばわりは傷付くなぁ……」

「あのレインでさえ手も足も出なかったって聞いたわ。ま、当然だろうけど……と、噂をすればご本人の登場ね。あんたに用があるみたいよ。」


リリィの視線の先には、降助に向かって歩いてくるレインがいた。


「おい。昨日は貴様に遅れを取ったが、今日は上手くいくと思うなよ。」


睨みながらそう言うと、レインは足早に去っていく。


「え、それだけ?」

「みたいね。じゃ、あたしも行くから。」

「ああ待って!俺も行くよ……」


降助はリリィの後を追いかけ、列に並ぶ。それから少しして、試験官の指示の下、職員のグループが巨大な岩を運んでくる。


「本日の試験は制限時間内に放った魔法が何種類か、その魔法がこの岩にどれだけの影響を及ぼしたかを基準とする。この岩には特殊な魔法が刻まれており、攻撃魔法に強い耐性を持つ他、一定時間が経つと元通りに修復されるようになっている。心してかかれ。それでは順番に名前を呼んでいくので、前に出て合図と共に魔法を撃つように。ではまず―」


試験官に名前を呼ばれた生徒達が次々と岩に魔法を撃っては時間になって交代していく。おおよその生徒は岩に傷をつける事はできていたが、半壊とまではいかなかったあたり相当な魔法耐性があるようだった。


「次、レイン・ラジット!」

「どいつもこいつも話にならんな。俺が本当の魔法というものを見せてやろう。」

「始め!」

「《トルネイド》!《アサルトサンダー》!」


レインは次々と魔法を放っていき、岩を半壊させる事に成功したところで時間切れとなった。


「フッ。」

「次、コウスケ・カライト!」

「はい。」


降助はレインと交代で岩の前に立つ。


「始め!」

「《ファイアボール》」

(ファイアボールだと?あいつ、試験を舐めているのか―)


ファイアボールが岩に着弾した瞬間、岩が激しく燃え上がり、数秒で灰と化した。


「え…あ、しゅ、終了!」

(うん、やりすぎた!参ったなぁ…マナは魔力と気に強いが故に、防御魔法も再生魔法も粉々にしてしまった……かといって俺が新しいのを作ると、魔法がマナで構築されるからこの後の人が皆傷1つつけられなくなっちゃうし……うん、スペアがある事を祈ろう!)


降助は若干冷や汗をかきながら、列へ戻っていく。


「あんた、一体どうやったらあんな事ができるのよ!?」

「どうやったらもなにも、ああやったらこうなっただけだよ…」

「ふ〜ん?初級魔法をぴょーいと放ったらガチガチの再生能力付きの岩が塵になって再生しないんだ?あんた人間辞めてんじゃないの?」

「能力的には否定できない……けど、まだ生物学的には人間だから!自己認識としては人間やってるから!」

「どういう弁明よ……」


リリィが呆れていると、試験官からアナウンスが入る。


「えー、本日の試験は中止となった!今回試験を受けられなかった者に関しては後日、新たな岩を確保し、魔法をかける作業が終わり次第日程を伝える。既に試験を受けた者に関してはそのまま結果を待つように。我々の不手際、準備不足によりこのような事態を招いた事を詫びる。申し訳なかった。では本日は解散とする!」

「あーあ、やらかしたわね、あんた。」

「う……」

「おい」


突然、レインが降助の前に現れ、話しかけてくる。


「ん?」

「こんなことをして楽しいか?ペテン師め」

「…はい?」

「お前はあの岩があくまで魔法への耐性しか持たず、その他に関しては通常の岩となんら変わらないことを利用し、何か薬品を仕込んだのだろう?」

「いやいや、試験の内容も知らなかったのにどうやってそんな薬品を用意して仕込むのさ?」

「チッ…あくまでとぼけるつもりか…まあいいだろう。では俺が貴様のくだらん小細工を暴いてやる。まず貴様は試験官を買収し、試験の内容を知った。そして貴様はどこからか火に反応する特殊な薬品を調達し、買収した試験官を使って岩に仕込ませた。」

「俺の前にも火属性魔法を使っていた人は居たけど、それについてはどう説明するの?」

「簡単なことだ。他のやつらは岩の一部分に魔法を当てていたが、貴様は全体が燃え上がった。つまり、周囲から死角となる部分に穴が空いており、岩全体を火で覆って誤魔化しながら着火したのだろう。」

「…岩が再生しなかったことについては?」

「それこそ簡単な話だ。魔法陣を消せばいい。魔法がかけられるなら、解くこともできる。試験官だけでなく、魔法の作業をした者も買収したのだろう。」

「面白い推理ですね、小説家にでもなったらどうですか?」

「プッ…」

「貴様、この俺を物書きと愚弄するか!《アサルトサンダー》!」

「おっと」


降助はマナを纏った手で軽く振り払い、魔法をかき消す。


「なっ…!」(詠唱どころか魔法陣も無しに魔法をかき消して……!)

「じゃ、俺はこれで。」

「あたしも失礼しまーす」


2人の背中を見送るレインは、悔しそうに歯軋りするが、すぐに思考を切り替えると、ニヤリと笑みを浮かべた。


「忌々しいやつめ……!ん、待てよ……詠唱や魔法陣を使わずに俺の魔法をかき消した……ということは、奴は試験では所持、使用を禁止されている魔導具を持っているのでは?そうだ、そうに違いない…!きっと昨日の試験でも魔導具を使って俺を倒したんだ!フッ…ペテン師め…すぐに蹴落としてやる…!」

結局前回から1ヶ月以上経ち、「勇者召喚されないし、章のタイトル変えるか…!?」と勇者召喚編から貴族部転入編になり……とまあ、ぐだぐだも良いところですが踏ん張ってコツコツ書き進めていこうと思います。応援お願いします。

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