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第91話 学年末試験 1

冬休みが明けてから暫く経ち、降助達は学年末試験を迎えようとしていた。


「という事で!皆で勉強会をします!!」

「久し振りにこのメンツで集まって何すんのかと思ったらそんな事かよ。」

「そんな事って何さ!学年末試験が近付いてるんだよ?勉強会して備えなきゃ!」

「特に、私達貴族部はこの結果はかなり重要になるよ。この学園は学年末試験の結果をメインに、生活態度や途中の授業での成績も含めてランクを付けるんだけど、その数値によっては次の年にクラスが上がったり下がったりするの。特に貴族部はその判定が厳しめだから、本当に重要になるんだよ。」

「そういえばそんなシステムだったね……じゃあ勉強会するとして……どこでやるの?」


降助がそう言った途端、皆が一斉に降助に視線を送る。


「え、俺?」

「まあ、この人数だからねぇ。僕達平民部の寮の部屋じゃ、ちょっと狭いかな。」

「それに、クレイ様の部屋はほら、色々憚られるじゃん?お嬢様の部屋に男もいる大人数でわらわら入るのとかさ。」

「で、でもさ?平民部の生徒が貴族部の建物に入るには色々と許可が要るわけで、あの人達の反応を見るにちょーっと難しそうじゃないかなーなんて―」

「ああ、それなら学園長から許可取れたから問題無いぞ。」

「コウスケの部屋に限っちゃうけど、学年末試験までの間は放課後とか休みの日は自由に出入りして良いってさ。」

「何でこんなに準備良いの!!?絶対計画してたよね?今企画しましたとかじゃなくてちょっと前から練ってた感じだよね!?」

「それじゃあレッツゴー!」

「俺の意見はぁ!?」


結局、降助は渋々自室を勉強会の会場に認め、飲み物とお菓子を用意するのだった。


「ぐぬぬぬ……わーかーんーなーいー!助けてガーヴ〜!」

「チッ…ちょっと見せてみろ。……カイト、パス。」

「うえぇ!?僕!?まあ良いけど……ふむふむ。コウスケ、頼むよ。」

「あ、俺に回ってくるんだね……えっと、これはこの式が使えるから、この数字を当てはめていって…ほら、できた。」

「へぇ〜、成程。こうなってるんだね。ありがとう。おかげでよく分かったよ。」

「最初からコウスケ君に訊けば良かったー!分かりやすくてありがたーい!」

「悪かったな、役に立たなくて。もう自分1人で解けよ。」

「あっ!ごめん!言いすぎたからー!拗ねないでガーヴ〜!」

「別に拗ねてはねぇよ。」

「拗ねてるじゃん!」

「拗ねてねぇ!」

「拗ねてますー!」

「うっせ!拗ねてねぇつってんだろ!」

「ぷっ…あはははは!」

「ふふっ…ふふふふっ……」

「そこー、いちゃついてないで勉強しなさーい。」

「いちゃっ…!」

「はぁ!?コイツとはそんなんじゃねぇよ!やめろ気色悪ぃ!」

「ちょっとぉ!?そんな食い気味に否定しなくて良いでしょうよ!」


それから騒がしい勉強会は続き、学年末試験まで残すところ1週間となった。今日も5人で集まって勉強会をしていたが……


(…?何か視線を感じる……)


ふと降助がドアの方を見ると、覗き見しているリリィを見つける。


(何してんだろ……)

「じー……」

(暇なのかなあの人)

「じいぃぃー……」

「……何か用かな?」

「ぎくっ」

「えっ何?」

「誰か居るのかい?」

「…っ。」


観念したリリィは、部屋に入ってくる。


「べ、別にぃ?たまたま通りかかっただけであって?特に深い意味は無いのよ?ただ強いて言えば?勉強に苦しむあんたの顔が拝みたいなぁーなんて……」

「まだ何も訊いてないけど……リリィも勉強で分からないとこあるの?」

「は、はあぁ!?別にそんな事ないし!平民のノーテンキ脳みそと一緒にしないでくれる?」

「じゃあこの問題解ける?」


そう言って降助は自作した問題集をリリィに渡す。


「えっ……と……ま、まあ……余裕しゃくしゃくよっていうか…できなくもないというか……その……」

「…教えてあげるよ?」

「ホント!?…あっ、コホン。ま、まあ、そこまで言うのなら?あたしに勉強を教える権利をあげなくもないけど?」

「分かったから、ほら。そこに座って。」

「むう……」


勉強会メンバーに平然と1名増えた一方、カイト達はひそひそ話を始める。


「ね、ねぇ…なんか自然と1人増えたけど、絶対貴族部の人じゃない??」

「あれ、リリィ・メイスさんだね。」

「リリィ・メイスっつうと……ルリブス王国でも結構良いとこのお嬢様じゃねぇか?」

「そうなのかい?」

「うん。メイス家はそれなりの歴史と地位を持っていて、色んなところと交流があったんだ。十数年前に長男…リリィさんのお父様が勘当されたらしいんだけど、数年前に復権して逆に乗っ取っちゃったんだ。」

「それは凄いねぇ…って待ってくれ。何でコウスケはそんなところのお嬢様とあんなに親しげなんだい??」

「さあな。アイツに貴族のお嬢様たらしのスキルでもついてんじゃねぇのか?」

「あり得る…あり得るよそれ!ハーレムだねぇ…ウハウハーレムだ!」

「ウハウハーレムって…」

「ねえ、さっきから何ひそひそしてるの?」

「えっ!?う、ううん。何でもないよ。」

「うん。何でもない何でもない。ちょっと質問しあってただけだからさ。」

「ふーん…?」

「ほら、勉強!勉強!」

(…ま、全部聞こえちゃってたんだけどさ。探知系のスキルの熟練度を上げてたら普通に感覚良くなっちゃったんだよね。それにしても、ウハウハーレムって何さ…?)

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