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第85話 ご挨拶 1

年節祭も終わり、新学期まであと数日となった。そんな中、降助とクレイの2人はタリミアへやって来ていた。事の経緯は数時間前に遡る。


「俺をご両親に紹介したい……そ、そっか。確かに、俺達付き合い始めたからいつか挨拶はしておいた方が良いかなとは思ってたけど……」

「うん。どうせ学校が始まったらタイミング逃しちゃいそうだし、今のうちに行っておきたいなって。」

「分かった。じゃあ支度するよ。」


降助は自分の部屋に戻り、荷物を整理する。


「えーっと……何か手土産とかいるよね……」(それにしても、クレイの実家にご挨拶か……まあ、平民を差別しないとは言っていたし、大丈夫かな。)


支度を済ませリビングに向かうと、丁度クレイも支度を終えて待っていた。


「じゃあ行こっか。」

「うん。」

「あ?オマエらどっか行くのか?」

「うん。クレイの実家にご挨拶に行ってくる。」

「ほーん……ん?何だと?」

「クレイの、実家に、ご挨拶。」

「は、はあああぁぁぁ!?ご挨拶だとォ!?って事はなんだ?オマエら、付き合ってたのか!?」

「そ、そうだよ。」

「どうしたんだいガーヴ、そんな大きな声を出して……」

「ヤベェぞカイト!コイツら付き合ってた!!」

「何だって!それは本当かい!!?」

「うん。ホントだよ。」


騒ぎを聞きつけ、ヴニィルやクーア達も集まってくる。


「なんだよ朝っぱらから騒ぎやがって……」

「どうかしたのー?」

「おい聞けミレナ!コイツら、付き合ってたぞ!!」

「あ、やっぱりそうなんだ。」

「え、反応薄くねぇか…?」

「いやまあ、私達気付いてたし―」

「ううううう嘘だろ!?師匠、彼女いたのかよ!!」

「―1人を除いて。」

「まったく…クー姐は鈍いんだから……」

「あれ、ヴニィルもあんまり驚かないんだね。気付いてたの?」

「あっいや…我はその…気付いてはいなかったのだが……」

「?」

「いやあ!気にするな!うん!めでたくて良いではないか!うむ!幸せにな!」(年節祭での会話を聞いていたとは言えぬ……!)

「?変なの……まあいいや。じゃあ出かけてくるから。クレイの家ってどこが近い?」

「えーっとね…タリミアだね。そこから馬車で数時間くらい。」

「じゃあタリミアに行くか。《ディメンションチェスト》」


2人が通った後、ゲートが閉じる。


「相変わらず便利な魔法だねぇ……」

「じゃあオレ達も修行するか……」

「だね。」

「さ、カイトよ。今日も走り込みをするぞ。」

「ひぃん……」


という事があり、今に至る。


「馬車乗り場はあっちだね。」

「タイミング良く馬車があると良いけど……」


2人が馬車乗り場へ向かうと、丁度馬車がやってきており、クレイは御者に行き先を尋ねる。


「すみません、この馬車はどこまで行きますか?」

「レーシまでですよ。乗られますか?」

「はい。2人お願いします。」

「あ、俺が払うよ。」


降助が2人分の代金を払って先に乗り、クレイに手を差し伸べる。


「…ありがと。」(もう…いつの間にこんな事がしれっとできるようになったの……惚れちゃうよ…あ、もう惚れてたか。)

「10分後に出発します。それまで座って待っててください。」


他にも2、3人程乗ってきたところで10分が経ち、馬車がレーシを目指して出発する。


「家に帰るのも久し振りだなあ…1年くらい帰ってないかも。」

「って事は、夏休みの時もシューヴァルト学園の方に居たの?」

「うん。スタト程じゃないけど、私の家も遠いからね。冬くらいに家を出てそれきりだったから、本当に久し振り。」

「そっか。」


それからは他愛もない会話を挟みつつ馬車に揺られること数時間。何事も無くレーシの馬車乗り場に到着する。


「とうちゃーく!」

「へぇ、ここがレーシか……広くて良い街だね。」

「でしょー。」


レーシにはしっかりした造りの家が多く集まっており、そこから少し外れた市場では、多くの人が行き交っていた。更に遠くの方には畑や牧場が広がっており、雪が積もっていた。


「結構人が居るんだね。冬だからあんまり居ないと思ってた。」

「この街はとにかく色んな産業をやってるからね。服とか、雑貨みたいなのは冬によく売れるんだ。あと、武器とかを作ってるところもあるから、たまにタリミアと取引する事もあるんだ。」

「成程……」

「私の家はあっちだよ。」


クレイの家に向かおうとすると、向かい側から1人の男が歩いてくる。


「…ん?お嬢様?もしや、クレイお嬢様ですか!?」

「お久し振りです、ゴーエン。」

「あれ?この人…どっかで見たような……」

「ふむ…そういう君もどこかで見た気が……」

「コウスケがまだ冒険者になりたての頃に、私がゴブリンに襲われてたでしょ?その時の護衛だった人だよ!」

「ああ!あの時の!」

「ああそうか!いやあ、また会えるとは思ってなかったが、随分立派に成長したのだな。改めて、私はゴーエンだ。よろしく。」

「どうも。ヴィア改め、コウスケ・カライトです。あの時は色々あって別の名前を名乗りましたが、こっちが本名みたいなものです。」

「そうなのか。まあ、そういう事もあるか…それより、クレイお嬢様!こちらに帰るなら言ってくだされば、すぐにでも迎えを向かわせましたのに……」

「ごめんなさい。急に来てしまって。お父様とお母様は家に居ますか?」

「ええ、今日は業務が休みの日なので、家にいらっしゃいますよ。あ、私は見回りがあるのでこれで失礼します。」


そう言ってゴーエンは去っていき、降助とクレイも再び家を目指して歩き出した。

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