第81話 パレード 2
「あーあ……折角扇動してあげたのに、もう捕まっちゃってるじゃん。しかもこの前戦った子も居るじゃん。やだなぁ…でも、ちゃーんと仕事はやらないとね?」
ルムザが街に近付こうとした瞬間、羽に槍が突き刺さり、近くにあった木に縫い付けられる。
「は?」(槍?どこから?それに端に鎖が付いてる?)
次の瞬間、鎖を魔法陣に引っ込ませながら凄まじい勢いで接近する降助が視界に入るが、更に次の瞬間にはルムザの目前に迫っていた。
「な―」
「はあっ!!」
降助の足がルムザの腹に直撃し、メキメキと音を立てて木にめり込んでいく。
(こいつ…!加速して更に勢いをつけられないように接触ギリギリのタイミングで装甲を……!ダメージを軽減された!)
「が……!」(蹴りが重い…!抜け出せない…!な、何か脱出方法を…!)
ルムザは腕をムカデに変化させ、降助を突き飛ばす。
「ぐ…!《フライト》!」
「ハァ…ハァ…いきなり腹を蹴るとはご挨拶だねぇ?」
「部族を扇動してパレードを襲撃させたのはお前だな?」
「あーそれね。そうそう。僕がやったよ。しっかしあの人達も馬鹿だよねぇ?見ず知らずのやつがパレードを襲撃しようだなんて言い出したのに、疑いもせずにホイホイ話進めちゃってさ。よっぽど今の王サマが嫌いだったんだね?」
「ふっ!!」
降助はどこからか光の塊のような剣を取り出し、斬りかかるがルムザは右腕にミイデラゴミムシの装甲を纏い、前腕の外側で受け止める。
「あのさぁ…君、もうちょっと人の話を聞こうとか思わ―」
降助が少し力を込めると刃はスッと入っていき、ルムザの右腕を切り落とす。そのままの勢いで刃は首に迫るが、ルムザは思い切り体を逸らし、ギリギリで回避する。
「ぐ……」(何故だ…?この装甲は並大抵の武器やスキルでは傷付かない筈!何か、あの光り輝く剣に秘密があるのか?)
「…これはマナウェポン。俺が最近修行して身につけたスキルだよ。」
「マナウェポン…?そんなスキル…知らないねぇ!!」
ルムザは素早く接近し、左腕をカマキリに変化させて斬りかかるが、降助は難なく躱し、左腕も切り落とす。
「ぐあっ…!」
「これで腕は切り落とした。次は足?それとも胴?」
(なんだ……なんだなんだ!なんなんだコイツは!!前戦った時はこんなんじゃなかった!もっと必死そうだった!もっと生っちょろかった!!なのに……押されてる…いや、圧倒…されている…!このままじゃ…負け…いや、死―)「クソッ!」
ルムザは戦意喪失し、必死にその場から飛んで逃走を試みる。
(逃げろ逃げろ逃げろ!!もっと軽く!もっと速く―)
ふと、足に何かが絡みつき、ガクンと動きを止められる。
「な……」
「捕まえた。」
振り返ると、視線の先では降助がルムザの足をバインドチェーンで絡め取っており、ゆっくりと引っ張っていた。
「やめろ…!やめろやめろやめろ!!」
ルムザは絡め取られていない方の足をカマキリに変化させ、何回も斬りつけるが、傷1つ付くこと無く、徐々に降助の方へ引き寄せられていく。
「抵抗は無駄だよ。」
「いいさ…それならこっちだって……!」
ルムザは絡め取られた足を切断し、呻きながらも再びその場からの逃走を試みる…が、ディメンションチェストで先回りされ、頭に踵落としをくらい、地面に激突する。
「《バインドチェーン》《マジックエリクサー》」
降助はバインドチェーンでルムザを拘束し、マジックエリクサーで欠損した四肢を再生させる。
「なんの真似?」
「別に。最初からこうするつもりだったけど。」
(成程ね。根っこの生っちょろい部分は変わってないわけか。おかげで命拾いはしたけど……どう考えても逃走は無理、か。)「…あっそ。あーはいはい降参です降参!煮るなり焼くなり勝手にすれば?」
「じゃあディメンションチェスト行きで。」
「は?何そ―」
言い切る前にルムザをディメンションチェストに放り込み、ユーラの下に戻る。
「戻ったか。急に居なくなったがどこへ行っていたんだ?」
「ちょっとルムザと戦ってました。」
「このタイミングで現れたという事は、やはりルムザも今回の襲撃に関係していると見て間違いないな。それで、ルムザはどうした?逃げたか?」
「いえ、捕まえてディメンションチェストに放り込みました。」
「つ、捕まえたのか?」
「はい。」
「そうか…それはお手柄だ。帰ったら早速報告しないとだな。」
その後、パレードはつつがなく進み、やがて宮殿に帰って終わりを迎えた。
「今回はありがとうございました。幸い、住民の皆さんにも怪我人はありませんでした。本当に、ありがとうございます。」
「俺様からも感謝するぜ。おかげで、妹も傷1つなくパレードを終える事ができた。ありがとよ。」
「いえ。我々は与えられた仕事をこなしたまで。それに、今回はほぼ彼1人の活躍でしたよ。」
「…それもそうだな。礼を言う。コウスケ。それと、前言撤回だ。俺様はお前を認める。」
「ありがとうございます。」
ジュウが手を差し出したので、降助もそれに応じ、握手を交わした。




