第77話 おやすみ
「ただいまー」
「あ、おかえりコウスケ……って随分な大荷物だねぇ……」
「まあね…クレイ、ここで降ろしていい?」
「うん、ありがとね…もう大丈夫……」
「修行ほっぽり出して買い物たぁ随分なご身分で。」
「別に良いでしょ、たまには休みがあっても。無理は続かないよ?」
帰ってきた降助達の様子を見て、女性陣は1名を除き、何かに勘付いたようだった。
「これは…ベルちゃん…」
「…ですね……」
「やっぱり、そうだよね?」
「んあ?どうかしたのか?」
「え!?クー姐気づいてないの!?」
「何がだよ?」
「コウスケ君とクレイ様、絶対デキたって!」
「デキ……まあ、はい。私もあのお2人は付き合い始めたのではないかと思います。」
「そうかぁ?オレにはあんまり分かんねぇけど……」
「もう…クー姐は鈍いんだから……」
「?よく分かんねぇけど訊くのが早えよな!おーい師しょ―」
「「ストーップ!!」」
「もごご。」
「なななな、何やってるのクーアちゃん!」
「ふぁ、ふぁっへほぉ…(だ、だってよぉ…)」
「はーいあっちに行きましょうねクーアさーん……」
その後、全員で夕食を食べ、降助は風呂に入ってゆったりとしていた…のだが……
「ねぇ待ってなんで居るの」
「別に良いじゃん。昔はよく一緒に入ってたでしょ?」
「昔とは違うんだよ!?」
「しーっ!そんなに騒がないの。誰か来ちゃうよ?」
「うっ…ぐっ…はあ……」(今日だけで一体どこまでいくつもりなんだろうか……)
「……」(う〜…こーちゃん、全然こっち見てくれないし、あんまり恥ずかしそうにしてない…?あの時のキスといい、なんか悔しい…!)
「じゃあ俺は先に上がるね。」
「あ、うん。」
降助はそそくさと風呂を出て寝巻きに着替え、寝室で眠りにつこうとするが、少ししてネグリジェを着たクレイがやって来るのだった。
「…寒くないの?」
「…ちょっと寒いかも。」
「だろうねぇ…」
「へくしっ…」
「まあいいや。とりあえずベッドに入りなよ。いつまでもそこに立ってたら寒いでしょ?」
「うん…ありがとね。」
降助は少し端に寄り、ベッドにクレイを入れる。元々1人用のベッドなので少し手狭になったが、その分お互いの体温で暖かさは増した。
「一緒にお風呂に入ったのも、こうして一緒に寝るのも凄く久し振りだね。」
「確かに。あれから……30年弱経ってる…?」
「確かに…こっちで16年、あっちでも10年以上は前だったし…」
「もう俺、中身はアラサーだ……」
「そんな事言ったら私だってもうアラフォーになっちゃうよ…?」
「こ、この話はやめやめ!早く寝よう!」
「そ、そうだね!」
「じゃあ、おやすみ。」
心に深い傷を負いかけたところで話をやめ、互いに目を閉じる。
「……ねえ、こーちゃん―」
「すー……すー……」
「寝るの速っ……おやすみ、こーちゃん。」
クレイは起こしかけた体を再び寝かせ、眠りにつく。
「……」(び……ビビったー!そら姉は今日だけでどこまでいくつもりだったの…!?というか自分の心臓うるさっ!眠れないよ…!本当に…キスした時も…風呂の時も心臓バックバクだったのに…こっちの気も知らないでさぁ…!)
降助は必死に自分の心臓を落ち着かせ、やがて眠りについた。




