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第72話 再会

「……ふう。ようやく終わったね……」

「はぁ…はぁ…多いし斬りづれぇしなんだったんだよコイツら…!」

「確かに、なんらかの意思があるっぽかったけど何が目的だったんだろう……」

「ずっと『邪魔』しか言ってこねぇから何にも分かんねぇな……」

「とりあえず、キャンプ地の皆が心配だし戻ろうか。」

「そうですね。早く帰―マズい!!」

「何かあった!?」

「キャンプ地周辺にあの塊の気配が多数あります!」

「な…!」

「急ぐぞ!!」

「ディメンションチェストで繋ぎます!」


降助達3人がディメンションチェストでキャンプ地に帰還すると、そこではマナの塊達と教師、生徒の乱戦が起こっていた。


「まさか、討ち漏らしたか…!?」

「あ、居た!おーい!」

「カイト!」

「状況はどうなってんだ?」

「突然人型のスライムっぽいやつらが攻撃してきて……って、ガーヴ!どこに行ってたんだい?いきなり居なくなってて心配したんだよ?彼女だってほら…」


カイトが指を差した先には涙目になりかけのミレナがガーヴを見ていた。


「…なんだオマエ?泣いてんのか?」

「こんの…バカガーヴっ!!」

「おわっ!?」


ミレナはガーヴの胸板を叩くと、そのまま顔を埋める。


「ぐすっ…心配したんだからね……!」

「マジで泣いてんのか?」

「ひっぐ…うるさいっ!ぐすっ…」

「あーガーヴが女の子泣かせた〜!」

「やれやれ、君も罪な男だねぇ……」

「なんだよテメェら!」

「そこ!ふざけてないで早く助けてくれないかな!?」

「分かってますって。《フレイムチェーン》」


降助の魔法によりキャンプ地に攻撃を仕掛けていた塊達は鎖で拘束され、雷雨の中でも燃え盛る炎によって焼き尽くされる。


「コウスケ君、今のは…?」

「これですか?バインドチェーンで拘束してからファイアボールを伝わせて燃やすのが手間だったのでまとめちゃいました。名付けてフレイムチェーンです。」

「えーっとつまり君は…既存の魔法をくっつけて新しい魔法を作ったと?」

「まあ、そうなりますね。…もしかして、何かやらかしてますか?」

「やらかしたも何も、かなり上位の技術だよそれ…」

「えっ…そ、そうなんですか?」

「1から魔法を作るのも相当だけどまあ、まだ現実的と言えば現実的でね。ただ、既存の魔法を掛け合わせて新しい魔法を作るとなると話は変わってくる。魔法っていうのは魔法陣の構成が重要なのは分かってるよね?」

「はい。基本中の基本ですね。」

「既存の魔法を掛け合わせるという事は2つの魔法陣を組み合わせて両方の効果を持った1つの魔法を作るという事。その魔法陣に欠陥があれば上手く発動しなかったり、最悪暴発してとんでもない事になる。それだけ繊細で難しい事なんだよ。」

「そうだったんですね…」

「とまあ、ちょっとした豆知識の時間はおしまい。怪我人の救護とキャンプ地の修復を始めようか。」

「そうですね。」


降助達はキャンプ地を回り、怪我人の治療を始める。


「ゴホッ……ぐ……」

「ルーク!大丈夫か!?」

「学園長…ええ…まあ、なんとか……」

「嘘つけ。だいぶやられてるじゃないか。」


ルークの鎧は腹の辺りに穴が空いており、そのまま胴体も貫通しているようだった。


「おーい、コウスケ君、頼めるかい?」

「はい、今行きます!」

「う……」

「酷い怪我じゃないですか!?よく生きてましたね……」

「昔から頑丈さだけが取り柄だったからな。ぐぅ……ッ」

(うーん……これくらいならヒールでなんとかなりそうだな。)「《ヒール》」


降助がヒールを唱えると、ルークの腹部に空いていた穴はみるみる塞がっていき、出血も止まる。


「…凄いな。まさかヒールで完治してしまうとは……」

「では俺はこれで。」

「ありがとう。コウスケ君。」

「恩に着る。」


降助はその場を離れ、他の怪我人を治療して回る。


「よし、治療の方はこれで大体終わったかな。」

「あ、ここに居たんだね。」

「クレイ!怪我は無い?」

「うん。大丈夫だよ。」

「良かった……じゃあ、俺はテントの修理とかに行ってくるから―」

「ねえ、ヴィア君…いや、コウスケ、君?本当の名前はなんて言うの?」

「…その名前はどこで?」

「先生達がコウスケって呼んでたの。」

「そっか。あ、先に言っておくけど、別に隠してたわけじゃないんだよ?ただ、初めて会った時はヴィアって名乗ったからその方が良いかなって思ってただけで……」

「うん。大丈夫だよ。別に怒ってるとかじゃないから。」

「そっか…じゃあ、改めて。俺の名前はコウスケ・カライト。他にもいくつか名前があるけど、本当の名前っていうならこれかな。」

「コウスケ…カライト……」


クレイは名前を聞いた途端、手を口に当てて目を見開く。


「…クレイ?」

「……こーちゃん?」

「その呼び方……そら姉?」

「ほんとに、こーちゃん……?」

「な…なんでそら姉がここに…?」

「こーちゃんこそ、どうして…?」

「ああもう…何がなんだか分からないよ…!」(合宿先で魔王軍が現れたと思ったらシャンとも会うし、変なマナの塊にも襲われるし…かと思えばクレイがそら姉だった…?)

「い、一旦落ち着いて整理しよっか……」

「そ、そうだね……」


2人は近くの石に腰掛け、状況を整理する。


「えっと…俺は帰りにナンパされてる女性を助けようとしたら集団リンチされてポックリ逝ったんだ。……改めて思い返すと酷いな……」

「そっか…私なんて大事な会食に向かう途中でナンパされちゃってさ…助けてくれた男の子は死んじゃったし、次の日は上司にセクハラとパワハラのダブルパンチされちゃってさ……色々疲れちゃってそのままビルの屋上からぴょん、って……」

「そっか……色々大変だったんだね……って、それ俺じゃない?」

「……その時のナンパって3人組?」

「うん…その内の1人はサングラスつけてて金髪だったよね?」

「「……」」


思わぬ展開に、2人の間で暫し沈黙が続く。


「あの時の、そら姉だったんだ……」

「あの時の、こーちゃんだったんだね……」

(九怜宙美…俺の4つ上で昔近所に住んでた女の子。確かそら姉が中学生の時にそら姉が引っ越しちゃってそれきりだったけど、まさかまた会えるなんて……)

「その……本ッ当にごめん!!折角こーちゃんに助けてもらったのにその後……!」

「いや、いいよ。またこうして会えたんだし。」

「…それにしても驚いたなぁ。昔は他の子達にからかわれて泣いてたこーちゃんがこんなに強くなっちゃってるなんて。」

「む、昔は昔だよ。今はもう違う。守りたいものを守って、ついでに自分もちゃんと守れるくらいの力は手に入れられたよ。」

「そっか…こーちゃんが立派に育ってくれて、お姉ちゃん嬉しいなぁ…!」

「いや何目線で言ってるのそれ……」

「…ぷっ。あはは!」

「ふふっ…ははは!」


ひとしきり笑った後、2人はキャンプ地の復旧の手伝いに向かう事にした。

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