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第70話 眠っていたもの

それは感じた。ある存在を。

それは感じた。その接近を。

それは感じた。―邪魔者の存在を。


『見つけた』


"それ"は深い穴の底から湧き上がり、地上に放出される。


「何!?」

「なんだ!?」

「マスター。」

「ああ……これが……!アビス・ホールに眠っていたものか……!!」


アビス・ホールから噴出したヘドロは地面に落ちると、徐々に人型に変形していき、長髪の女性のようなシルエットになる。


『見つけた』『見つけた』『見つけた』

「あれは一体…?」

「…なんかこっちに来てないかしら?」

「マスター。下がっていてください。」


迫り来る謎のヘドロを見て、降助は確信した。ウルボ盆地に来たから感じていた違和感。その正体はこれだと。そして1つの思考が脳を駆け巡る。"あれ"は絶対に破壊しなくてはならないと。


「いいわ。邪魔をするならあなた達から殺してあげるわ!!」

「待った!あれは何かおかしい!!」

『邪魔』『邪魔』『邪魔』

「ごはッ!?」


ジャックはヘドロに向かってナイフを振り下ろすが、ぐにっと沈み込むだけで傷をつける事ができず、頬に強烈なパンチをくらって吹っ飛んでいく。


「ジャック様!」「な、なんだこいつら!?」「お、俺達の方にも襲いかかってくるぞ!」「うわあぁ!!」


場所は変わりキャンプ地にて。急いで戻ってきたクレイは息も絶え絶えのまま、教師を探す。


「ルーク先生!」

「む、クレイか。他のメンバーはどうした?」

「あ、あの…ま、魔王軍が…!」

「なんだと…!?どこにいる!?」

「あ、アビス・ホールの方で……今、他のメンバーが戦っています…!」

「分かった。すぐに向かおう。」


ルークが他の教師も呼びに行こうとしたタイミングで、レインを抱えたカリカもキャンプ地に到着する。


「カリカさん!?それに…レイン様!?一体どうなさったんですか!?」

「話は後!とりあえず彼を救護テントに!」

「容体は?」

「傷は治ってるけどだいぶ血を失ってる!早く輸血を!」

「分かった。救護テントはあそこだ。運んだら中に居る保健医に説明を頼む。……ところでコウスケはどうした?」

「コウスケ……?」

「?居ただろう、クレイのメンバーに。白と黒の髪の。」

「あ……ああ、はい。多分、今も戦い続けてるかと……」

「分かった。すぐに向かお―」


その瞬間、ルークの側をシグルドが駆け抜けていく。


「シグルド学園長!?」

「ルーク!ここの防衛は任せた!クレイ、場所は?」

「あ、あちらの方向です!」

「オッケー、ありがと!!」


シグルドが降助の下へ向かおうとしていると、前方から複数の人影が見え始める。


(前方に敵、数は複数……いや、多いな!?)

『邪魔』『消えて』『いらない』

「人…じゃない?少し違うな。なら、遠慮なく斬らせてもらう!!」


シグルドは敵を流れるように斬っていき、その間を駆け抜けていく。


(手応えが妙だな……まるでスライムとかを斬っているような……)

『来るな』『来るな』『消えて』『死んで』

「数が多いな!なら…《アブソリュートゼロ・スラッシュ》!!」


絶対零度の冷気を纏った攻撃を繰り出すが、先程のようには斬れず、弾かれてしまう。


「なっ…!?」

『無駄』『効かない』

「ぐおっ…!!」


吹っ飛ばされつつも飛んできたパンチを剣で受け止め、なんとかガードする。


「マジか……一応、現役時代に流氷のシグルドって呼ばれる所以になってた大技なんだけどなぁ……」(すまない、コウスケ君…助けに行くのに時間がかかりそうだ……!)


シグルドが苦戦する一方、アビス・ホールでは降助、シャン、人型のヘドロの三つ巴の戦いが繰り広げられていた。


「はぁっ!」


シャンは槍を生成し、周囲を薙ぎ払おうとするが、ヘドロに当たった瞬間から粒子が乱れ、槍が消えていく。


(やっぱり…!こいつら、マナの塊だ!それに対してシャンは魔力の粒子でできた四肢と武器!魔力と気とは反発する性質を持つマナとは相性が悪い……!)「シャン!こいつらは魔力と気とは反発する!早く逃げるんだ!」

「誰が敵の言う事を聞くとでも?」

「うわっ!」


降助はヘドロ改め、マナの塊の攻撃に混じって飛んでくるシャンの攻撃を躱す。


(それにしても、こいつらは一体何なんだ?何が目的で襲ってくるんだ!?)「あれ、そういえば魔王軍は……」


周囲を見渡すと、既に魔王軍はジャックを含めてその場から姿を消していた。


(逃げたか……ま、意識しないといけない相手が減ったし良しとしよう…!)

「クソッ!邪魔だ!僕にまとわりつくんじゃあないッ!ああもう!!鬱陶しいぞ貴様ら!!」

「マスター!」

『行かせない』『消えて』

「ぐ…!」


リスタは大群にまとわりつかれ、攻撃され続けるが、傷付いても片っ端から再生していた。


(チッ…どんな攻撃を受けようと一撃で完全に蒸発させられない限りは修復可能な複製体だが、このままでは限界が来る……!)「おいシャン!僕は帰る!お前も適当なところで切り上げろ!」


そう言うと、リスタ改めその複製体は体を変形させて塊を1体捕まえると、そのままどこかへワープして消えていった。


「あっ!逃げるな!」

「よそ見をしている場合?」

「おっ…と!」


降助はシャンの攻撃を回避するが、マナの塊の背後からの攻撃が迫る。


『逃がさない』

「しまっ…!!」

「ドラアアァァ!!」


攻撃が降助に当たる直前、突如人影がマナの塊に飛び膝蹴りをくらわせ、吹っ飛ばす。


『邪魔……』

「ど…どうしてここに…!?」

「よう」


人影の正体はガーヴだった。

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