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第68話 迫る脅威

「さーて、リストには何が書いてあるのかなー?」


平民部と貴族部合同の合宿では各グループごとに複数のクエストが書かれたリストが配られており、合宿期間である7日間のうちに一定数クリアする事が目標となっており、降助が広げたリストには沢山のクエストが書かれていた。


「うわ……多過ぎ多過ぎ……」

「7日間もありますし、少しずつやっていけば目標はクリアできると思います。」

「どーかなー?約1名、協力する気がなさそーだけど。」

「寄越せ。」

「ちょっ…」


レインは降助からリストを奪い取ると、流し見した後、投げて返した。


「ふん。この程度のクエストか…おい下民共、俺の足を引っ張るなよ?」

「うーわ…急にえらそー……っていうか、クレイ様は下民じゃなくてお貴族様じゃんね。」

「おそらく呼び分けるのが面倒くさいだけでしょうね。まあ、それはそれとして貴族は王族よりも格下である意識が強い、というのもあるかもしれませんが…」


3人がレインの態度に呆れていると、晴れていた空が突然曇りだし、あっという間に暗くなっていく。


「うわぁ……あっという間に曇ったし…幸先悪いねぇ……」

「今にも降り出しそうですね……」

「……」

「ヴィアさん?」

「……ん?」

「行きますよ。」

「ああ、うん。」


降助達のグループがクエストをこなしに向かう一方、不穏な気配もまたウルボ盆地に集まりつつあった。


「ウルボ盆地に飛空艇が2つも着陸したと思ったらシューヴァルト学園のガキ共じゃない。」

「いかがいたしますか?」

「それは勿論、皆殺しよ。私はルムザみたいに遊んでしくじったりはしない。行くわよ。」

「はっ。」


真っ白な肌に銀髪、黄色い瞳の魔族の女が配下の魔物を引き連れてウルボ盆地を進む一方、また別の場所では。


「ああったく……空気がジメジメしてきたぞっクソッ……!」

「マスター、一体どこへ向かっているのですか?」

「それは勿論ウルボ盆地で最も深い窪み、アビス・ホールさ。」

「理解しました。ではアビス・ホールへ何をしに行くのでしょうか?」

「それは勿論研究だ。アビス・ホールだなんて大層な名前をしてるんだ。興味が唆られるだろう?」

「…そうですか。」

「フン…興味無さげだな。まあいい。さっさと行くぞ。」


迫り来る脅威に気づく事なくアビス・ホールに向かう降助一行。そして最初に出会ったのは―


「先輩。」

「ん。分かってるよ〜」

「!」

「ほう…早速お出ましのようだな。」


4人の前にクエストで討伐対象になっていたバーサーカーボアが何匹か現れる。


「よ〜し、サクッとやっちゃお〜」

「後方支援は任せてください!」

「…ふん。はあっ!」

「あっ!待て!無闇に突っ込んだら…!」


レインは降助の制止を無視して走り出し、バーサーカーボアもそれに反応して雄叫びをあげながら走り出す。


「ブギイイィィッ!!」

「ふん。この俺が獣風情に後れを取ると思ったか?《アクアカッター》」

「プギィアァッ……」


レインは突進を躱しつつアクアカッターを繰り出し、次々とバーサーカーボアの首を断つ。


「ふーん。腐っても王族、それなりの腕はあるんだね〜。」

「先輩、こっちに気付いた他のボアが来ています。行きましょう!」

「おっけ〜!」


降助とカリカも戦闘準備を整え、バーサーカーボアの群れに突っ込んでいく。


「とりゃとりゃとりゃ〜!」

「プギィッ!?」「プゴッ!?」

「うわあ…カリカ先輩が蹴ったボアがボーリングみたいに転がっていって他のボアを吹っ飛ばしている…怖……」

(ヴィア君…滅茶苦茶よそ見してるけどボアの攻撃を全部躱して斬り捨ててるんだよね…凄いなぁ…)「私もサポートしなきゃ。我が盾は如何なる干渉も阻む、《シールド》!」

「さんきゅークレイ様〜!」

「頑張ってください!」


その後、3人は驚異的な速度でバーサーカーボアを倒し終え、小休止をとる事にした。


「次のクエストは何だっけ?」

「えーっと……ゴブリンの討伐ですね。」

「ゴブリン……」

「あ、クレイは無理しなくても……」

「いえ、大丈夫です。今回もあなたが居ますからね。」

「おい。いつまでも座ってないでさっさと行くぞ。」

「はいはい分かってますよーだ。じゃ、行こ―」

「!!」


気配を感知した降助は素早く片手剣を構え、周囲を警戒する。


「ど、どうしたの後輩君?」

「警戒してください。何かが近付いています。」

「魔物ですか?」

「いや、魔物じゃない……これは……魔族!?」


次の瞬間、ナイフが降助を目掛けて飛んでくるが即座に反応し、叩き落とす。


「誰だ!」

「あら、中々やるわね。今のはそれなりの速さで投げたつもりなのだけれど。」

「…ッ」(今の速さで"それなり"!?それはちょっとマズくないかな?)

「それで、誰だって聞いたのよね?それじゃあ自己紹介。初めまして。私は魔王軍幹部、殺賢(さっけん)のジャックよ。」

「魔王軍幹部!?何故こんなところに…!」

「…!」(魔王軍幹部も驚きだけど……今、なんて言った?殺賢?まさか、あいつも賢者なのか!?だとしたら…相当ヤバい!)

「ふっ……この俺を誰と心得ている?ルリブス王国第2王子、レイン・ラジットであるぞ!そんな俺の前にのこのこ現れるとは、魔王軍幹部も愚かだな!」

「あらあら、随分と威勢のいいガキじゃない。お前達、殺してしまいなさい。」

「へい!」「ジャック様の命令だ!」「皆殺しだァー!」

「ふん……その程度で俺を殺そうなど片腹痛いぞ!」

(相手の数も考えずに突っ込もうとするお前の方が片腹痛いわ!)「先輩!俺達も行きましょう!」

「だね!」

「クレイは急いで先生に状況を伝えてくれ!」

「分かりました!」

「グヘヘ、行かせるかよォ!」「逃すな!」

「させない!」


降助は、クレイを追う魔物に向かってディメンションチェストから取り出した槍を投げてマナで操り、そのまま他の魔物も貫いていく。


「白髪が混じった黒髪に青い瞳の青年……あのガキ、妙に強いと思ったらルムザが苦戦したっていうやつじゃない。いいわ。私が直接やる。」

「おお!ジャック様が出るぞ!」「ヘッヘッヘ、アイツも運が無いなぁ!」

「俺を無視とはいい度胸だな!魔ぞ―」

「邪魔よ」


レインがジャックに斬りかかるが、次の瞬間にはレインは胸部から大量の血を吹き出しながら倒れ、ジャックは血が滴っているナイフを片手に降助に近付いてきていた。

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