第66話 ひと段落
部屋に帰ってきた一行は、再びソファに座って紅茶を飲む。
「…ふう。なんだかどっと疲れたような感じですわ……」
「取り敢えず、攻めてきた魔王軍は殲滅したし終わりって事で良いかな?」
「そうですわね。ご協力、感謝いたしますわ。」
「じゃ、俺達は学園に帰ろっか。」
「はい。」
降助はディメンションチェストを学園の校門に繋げ、そこを通って一行は帰っていった。
「カライト・コウスケ……恐ろしい人物でしたわね。一体どうすればあのような力が……とりあえず、王都に報告の書類を書かなくてはいけませんわね。」
フルイアはペンを取り、紅茶を飲みつつ書類仕事に取り掛かった。
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「だいぶ復興が進んでますね。」
「全壊したわけでもないし、1ヶ月もあればね。」
(あ、あそこはルムザと戦った辺りだ…結構校舎にも攻撃当てちゃったけど殆ど直ってるみたいで良かった…)
「あ、おかえり、コウスケ。」
「ただいま。」
「あ!コウスケ!テメェようやく起きやがったんだな!」
ガーヴが降助を見つけてそう言うと、ミレナとナーフも続いてやってくる。
「えっうそうそ!?あっ!本当だ!コウスケ君起きてる!!」
「眠れる森の美女ならぬ、眠れる学園の美青年のお目覚め、といったところかな?」
「どうも。」(ナーフ先輩、相変わらず何言ってるか分かんないな…)
「復興の方は順調かな?」
「はい。学園はほぼ終わっています。友人と競い、高め合う青春…想い人と何気ない日々を共有し、愛し合う青春…あらゆる青春が集うこの学園で再び、学ぶ事ができます。」
「あ、うん。ありがとうね。」
「ではボクはこれで。」
「じゃあ僕も。」
「オレも戻るわ。」
「私も。」
4人が校舎に戻るのと入れ違いでシグルドの秘書がやってくる。
「ここに居たんですね、学園長。」
「ん?何か用かな?」
「用も何も、貴方がどこかへ行っていた間に仕事が溜まっています。早く片付けてください。」
「え、そんなに溜まってるの?」
「はい。学園の修繕に使った材料や雇った大工への報酬などの金銭関係の書類の確認と今後の学園の運営についての書類、他にも数十種類の書類が―」
「ああっ!イタタタ!いったぁ〜い!お腹が猛烈に痛いぞぉ〜!これは、あ、ちょっとマズいかもなぁ〜!医者に行かなくちゃ〜!うおぉ〜……!」
「三文芝居はいいので早く来てください。」
「た、助けてコウスケ君!!」
「お仕事頑張ってくださいね学園長。」
「そ…そんな…!い、嫌だあぁー!!」
必死に抵抗を試みるシグルドだったが、呆気なく秘書に連れていかれたのだった。
「では我らも帰るとするか。コウスケ、ゲートを頼む。」
「はいよ。」
「じゃあな師匠!」
「ばいばーい!」
「お元気で!」
ヴニィル達はディメンションチェストで館に帰っていき、無事到着したのを確認してゲートを閉じる。
「…もうディメンションチェストから改名した方が良いかも……」
「あ、ヴィア君!」
「クレイ?どうしてここに?」
「ヴィア君の事探してたんだよ。魔王軍の襲撃があってから1ヶ月くらい会えなくて本当に心配したんだからね?」
「あ…そっか。ごめん、心配させて。ちょっと怪我して寝込んでたんだけど…すっかり治ったから大丈夫だよ。」
「そっか…良かった……」
「じゃあ、俺はそろそろ寮に帰るよ。」
「うん、またね。あ、そうだ!ヴィア君にだけ教えてあげるんだけどね…」
「ん?」
クレイはちょいちょいと手招きし、察した降助は耳を貸した。
「実はもう少しで平民部と貴族部合同の授業が始まるんだって。しかもいきなり学園の外でやるらしいよ?」
「そっか…そろそろ授業も再開するのか。」
「うん。じゃ、またね!」
「じゃ。」
降助は寮に帰り、久しぶりにカイトと夕食を食べて過ごしたのだった。




