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第62話 襲撃 3

ブロンドヘアをオールバックにし、ラウンド型の眼鏡をかけた白衣の男は、顎に手を当てて降助を眺める。


「ふむふむ。白髪混じりの黒髪に青い瞳…ロットの言ってた通りだな。」

「戦闘開始しますか?」

「いや、まだ攻撃するな。ちゃんと挨拶しなくては。」

「了解。」


紅紫色の髪と黄色い瞳の少女は頷き、一歩下がる。


「ご機嫌よう、コウスケ・カライト君。」

「…俺の名前知ってるの?」

「まあ、邪魔者と研究対象は徹底的に調べ上げる(たち)だからね。」

「ふーん…それで、何か用?」

「……何か…用…だと?」


男はプルプルと震え、あっという間にプッツンとキレる。


「貴様がァ!!僕のォ!!実験場をォ!!台無しにしたんだろうがァ!!」

「実験場…?」

「とぼけるなァ!!神の足跡だよ神の足跡ォ!!せっっっかくあれこれタイラントフィッシュを弄ってたのに貴様が全部台無しにしたんだよォ!!」

「!お前がやったのか…!」

「そうだよ!!僕がやったんだよ!!良い感じに進んでたのに台無しにしやがって!!ブッ殺してやる!!」

「マスター、落ち着いてください。」

「ふぅ〜…ふぅ〜…すまないね。僕は崇高な実験の邪魔をされると途端にキレやすくなるんだ…ま、特に直そうとは思ってないけどね。」

「あっそ。それで、そっちの女の子は?」

「ああ、彼女かい?彼女はシャン。スンド王国の辺境の村で見つけた賢者の生まれ変わりの魔族さ。」

「…は?今、なんて―」

「魔族を素体にするだけでもかなりのものが作れるが…いやはや、流石賢者の生まれ変わり。最初は何かと苦労したが改造と洗脳を重ね、弄り回した成果がこれさ。実に素晴らしい兵器に―」


降助は縮地で距離を詰め、首元を狙って剣を振るうがシャンが即座に割り込み、防がれる。


「おお怖い怖い。」

「目を覚ましてくださいジックさん!ねえ、ジックさんなんでしょう!?僕です!ユーリウス・ヴァットです!」

「そんな名前は知らない。」

「ジックさん…!」

「ああ、忘れるところだった。僕の名前はリスタ。以後お見知りおきを。じゃ、挨拶も済んだ事だし存分にやりあいなよ。」


そう言ってリスタは足早に去っていく。


「了解。目標の殲滅を開始。」

「ジックさん!!ぐっ…!」


シャンは降助を弾き飛ばすと、粒子でブレードを形成し、斬りかかる。


「くっ…戦うしかないのか…!」(改造と洗脳をしたって言ってたけど…四肢の魔力密度がやけに高いのと関係がありそうだな…!)


降助とシャンは激しい打ち合いを始め、辺りには剣とブレードがぶつかる音が響き渡る。


(ぐっ…攻撃が重い…!あんな細い腕で一体どうやってここまでのパワーを…彼女の魔力を見るに四肢に魔力を纏わせて強化しているのか…?でもおかしい…何か、違和感が……)

「はぁっ!」

「《シールド》―ぐあっ!?」


打ち合いの中、突如シャンが横腹を目掛けて蹴りを入れるが、降助は即座に対応し、シールドを展開する。しかし、シールドでは防ぎきれず、そのまま割られて横腹に重い蹴りをくらってしまい、勢いよく吹っ飛ばされ、壁に激突する。


「ぐっ…!」(痛い…肋骨にヒビ…いや、折れ―)

「ふっ!」


シャンはブレードを消し、地面を蹴って凄まじい土埃を上げながら降助に突撃し、殴りかかる。


(避けれない…!)「う…《グラウンドカッター》!」

「!!」


グラウンドカッターを発動した剣はシャンの腕に食い込み、ギャリギャリと音を立てながら更にくいこんでいく。


「ど、どいてくれジックさん…いや、シャン!このままじゃ、腕が―」

「…」

「ぐ…!」


シャンは構う事なくもう一方の腕で殴りかかるが、降助ももう一方の手を剣から離し、拳を受け止める。


「うっ……」(力が入ると肋骨が…!)

「無駄。」

「がはっ!?」


突如シャンの腕から更に腕が生え、降助の首を締める。


(腕が分裂した!?一体どうなって…)「かはっ…!」

「このまま息の根を止める。」


シャンは足から更に足を生やし、降助の折れた肋骨目掛けて蹴りを何発も入れる。


「ッ〜!!」

「早く死んで。」

「ッ…!」


降助の力が緩んだ隙を狙ってすかさず腕を押さえつけ、首を絞める力も強める。


「!」


グラウンドカッターが解除されると同時に剣とシャンの腕が落ちるが、落ちた腕は粒子になって断面にくっついて再生し、降助のもう一方の腕を押さえつける。


(そうか…シャンの四肢はこの粒子の義肢に置き換えられたのか…!リスタ…なんて事を…!で、でもそれより…これは…ヤバい……!)「か…はっ…」

「しぶとい。」


シャンは蹴りを入れている足から刃を生やし、再び蹴りを入れ、刃は肋骨の間に突き刺さる。


「ああぁぁッ…!」


刃がぐりぐりと押し込まれ、耐え難い痛みが降助を襲う。


(このままじゃ…死―)

「どりゃあーっ!!」

「!?」


突如横から殴られ、シャンは転がりながら吹っ飛んでいく。


「げほっ!げほっ!はぁ…はぁ…」

「大丈夫か、コウスケ?」

「ありがと…助かったよヴニィル……」

「む…ボロボロではないか。」

「大丈夫…すぐヒールで治―」


降助は魔法陣を構築しようとするが、上手く形成できず、すぐに崩れていく。


「おい、どうしたのだ?」

「魔力が…無い…!」

「なぬ!?」

「魔力切れだ…でもそんなに魔法を使った覚えは…まさか…!」

「そう…そのまさか。あなたの魔力は全ていただいた。」

「あいつは?」

「シャン…ジックさんの生まれ変わりで…改造されて洗脳もされてる。」

「なんだと…!それは……」

「マスター、邪魔が入りました。どうしますか?」

『目標はあくまでコウスケだ。他はどうでもいい。とにかくコウスケを始末して撤退しろ。』

「了解しました。」


シャンは槍を形成し、腕にブースターを形成して起動させ、勢いよく槍を投げ、そのまま撤退していく。


「させぬぞ!」

「……さようなら。コウスケ・カライト。」


ヴニィルが飛んでくる槍を掴んで止める。が…


「ゴフッ…」

「む…?」


ヴニィルが振り返ると、槍の先端が伸びており、降助の胸を突き刺していた。


「馬鹿な…!我はちゃんと槍が達する前に掴んで…いや、それよりもコウスケ!しっかりするのだコウスケ!」

(ヤバい…意識が…また、俺は死―)


降助は瞳を閉じ、意識が闇に沈んでいく。

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