閑話 みんなのなつやすみ
〜カイトの場合〜
降助がスタトに帰って数日。ひとり寮に残ったカイトは宿題を進めていた。
「こういうのは計画的にやらないと後で泣く羽目になるからね。しっかりやっていかなくちゃ。」
1ページずつ、丁寧に問題を解いていき、見直しも怠らない。
「…よし。今日はここまでにしておこうかな。」
ある程度解いたところで中断し、昼食の準備をする。
「…コウスケは今頃、何をしてるのかなぁ…」
そんな事を考えながら昼食のパスタを食べ終え、息抜きに街へ散歩に出る。
「学園都市だからって遊び場を1つも置かないのはどうなのかなぁ…むしろ学園都市だからこそ1つや2つあってもいいと思うのに…」
そんな愚痴を言いつつも、お菓子を買ったり、本を買ったりと意外と満喫し、夕暮れには寮に帰って剣の素振りを始める。
「ふっ!ほっ!はっ!…明日からは体力つける為に走り込みでもしようかな…」
素振りを終えたカイトは夕食を食べ、早いうちに眠る事にした。
〜ガーヴとミレナの場合〜
「よーし!今日は遊ぶぞー!」
「なんでオレも付き合わなきゃいけねぇんだよ…」
「だって1人で遊ぶのつまらないんだもん!」
「たかが買い物だろ?それくらい1人でできるじゃねぇか…」
「いっぱい買いたいから荷物係がいるの!いいからついてきて!!」
「だぁーっ!分かった!分かったから腕引っ張んな!も、もげる…!」
ミレナはあちこちにガーヴを連れ回し、靴や服、アクセサリーなどを買い込んでいく。
「いやーいっぱい買っちゃったー!」
「おいミレナッ…!少しは自分で持てよ…!く、崩れ…うおっ…!危ねぇ……!」
「しょうがないなぁそっちの袋は持つから頑張って!」
「あのなぁ…オレは積み上げられた箱の方を持てっつってんだよ。腕に通してある袋の方持たれても意味ねぇっての!」
「えー…だってそれ持ったら両手塞がっちゃうし―」
その時、ぐうぅ〜とミレナの腹の虫が鳴る。それからワンテンポ挟んでミレナの顔が赤くなる。
「……っ。」
「はぁ…飯でも食いに行くか。」
「う、うん。」
2人は近くのレストランに向かう。
「ここにしよっかな〜えーっとお金は……」
ミレナは財布を開くが、中はすっからかんだった。
「あ…今日持ってきた分のお金無いや……」
「はぁ…後先考えずにあれもこれもって買い込むからこうなんだよ。オレが奢るからさっさと中入るぞ。」
「ガーヴ…!ありがとう!大好き!」
「うわっ!引っ付くなよ…荷物が崩れるだろ!」
「…ガーヴのばか。」
「んあ?何か言ったか?」
「……何にも言ってないよーだ!早く入ろっ!」
「はぁ…まったく、手のかかる幼馴染だぜ…」
ガーヴの奢りで昼食を堪能したミレナはガーヴに荷物を家まで運ばせ、ガーヴは疲れきった表情でミレナの家を後にした。
〜シグルド学園長の場合〜
「ふあぁ〜あ……今何時かな〜…?」
シグルドは欠伸をしながらカーテンを開け、外の様子を確認する。既に日は沈みかけ、カラスが鳴いていた。
「…夕方かぁ…じゃ、2度寝しよ。」
「何を言ってるんですか?」
「うわあ秘書チャン!?いつからそこに!?」
「『ふあぁ〜あ……今何時かな〜…?』のあたりからです。」
「それって最初からじゃん!それで、何か用かな?」
「はい。まずは着替えて執務室に来てください。」
「…やな予感がするからパスで。」
「駄目です。何がなんでも来てもらいます。」
「嫌です。何がなんでも行きません。」
「では寝巻のまま引き摺って連れて行きます。」
「えっ…ちょ、ちょっと待って…あっやめて!このまま引っ張らないで!寝巻で校舎を引き摺られて仕事させられるなんて俺の学園長としての体裁が…!」
「そんなもの、今やあってないようなものじゃないですか。」
「そんなっ!!」
結局、寝巻のままシグルドは執務室に連れてこられ、深夜まで仕事をする羽目になった。途中、たまたま出会った生徒や教師から白い目で見られた事は言うまでもないだろう。
〜降助のその後〜
始業式を数時間後に控え、降助は食事もとらずに宿題を進めていた。
「はぁ…はぁ…!あと…あと5ページ…!」
目は充血し、顔は若干げっそりし始めているが構わずに問題を解いていく。
「4ページ……3ページ……2ページ……1ページ……!」
遂に解答欄が全て埋まり、降助はペンを放り投げる。
「終わったー!!後はこいつを鞄にしまって…と。」
ノートと筆記用具をしまい、ベッドに倒れ込むと、降助は秒で寝落ちしたのであった。




