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賢者に育てられた異世界転生児は最強となる  作者: 斬り捨て大根
第4章 少女とひと夏の冒険編
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第52話 グランドマスター

「…参ったな……」

「どうする…?」


今、何が起こっているのかを簡単に説明すると、4人は衛兵達に包囲されていた。事の発端は遡ること数分前……


- - - - - - - - - -


「へー、あれがギルド本部か…」

「なんだか要塞みたいだな。」

「デカい門まである……」

「山の中にあるから尚更それっぽく見えるね。」

「おい、何やら人間がどんどん出てきてるぞ。」

「…ホントだ。」


そして4人が門の近くまで来る頃には衛兵達に完全に取り囲まれ、剣を向けられる。


「えーっと……」

「手を上げろ!」

「あっはい」

「貴様らの目的はなんだ!」

「えっと…ギルド本部に届け物を頼まれていて―」

「嘘を吐くな!」

「いや嘘じゃなくて…」

「我々は確かにこの目でこちらに飛んでくるドラゴンを見たぞ!」「そして降りたであろう場所から歩いてくるお前達も見たぞ!」「見るからに怪しいやつらめ!」「何か企んでいるならひっ捕えて牢屋に放り込んでやる!」


- - - - - - - - - -


「いや…本当に荷物を届けに来ただけで…シルバーランクの冒険者のコウスケ・カライトか、ホープってパーティー名で伝わりますか?」

「そんなもの知るか!」

「えぇ…」

「それよりもだ!さっきのドラゴンはどこに潜ませている!」

「潜むも何も我ならここにいるぞ。」

「何?貴様、冗談を言うのも程々に―」


衛兵が言いきる前にヴニィルは人化を解除し、元のドラゴンの姿になる。


「なっ…!」「これは…!」

「人化スキルを持った灰色の竜…!やはり貴様ら、只者ではないな…!」


ヴニィルを見て衛兵達はより一層警戒心を高め、武器を構えて一歩にじり寄る。


「なんで人化解除しちゃうかなあ!?」

「う……すまぬ……」

「ヤーラマ山脈の人化を操る灰色の竜といえば、その昔に多くの街を荒らして暴れ回った邪龍と言われている!そんなものを連れてやって来るなど敵としか考えられん!」

「え、何?ヴニィルそんな事やってたの?」

「む…昔そんな事をしていたような…気もするな…」

「……」

「そ、そう睨むな!あの時は…我も若かったのだ。若気の至りというやつだ!」

「はぁ…どうするかな……なんかこの人達話聞いてくれないし…」

「むう…それなら一発殴って黙らせてから話を聞かせてやればいいではないか!」

「この状況で手を出したらもっとややこしくなるでしょうが!」

「ただの人間がこいつを従えられる筈がない…貴様…もしや魔王軍の残党だな!?たった4人でギルド本部を攻め落とそうとは舐められたものだ!」

「いやいや…勘違いもいいところですって…そんな魔王軍の残党だなんて…そもそもそんなのが今居るんですか?」

「とぼけるな!事実、ここ最近魔王軍の残党らしき魔族や配下と思しき魔物の目撃情報が増えている!」「そして我々はこれを魔王復活の兆しと見ている!」「今回もギルド本部を下調べしてあわよくば攻め落とそうとしているようだが…当てが外れたな!」

「当てが外れたというかあなた達の推測が的外れなんですが……」

「もしかしたらこうしている間にも別働隊が行動しようとしているかもしれない!早く捕えるぞ!」「了解!」

「クッソ…コイツらくるぞ!」

「どうするのコウスケ!」

「仕方ない…やり過ぎない程度にいくよ!」

「はぁ…人間は思い込むと視野が驚くほど狭くなるのだな……」


ヴニィルは再び人になり、4人と衛兵達の乱闘が始まる。


「ふっ!ほっ!」

「くっ…!こいつ、素手なのになんて強さだ!」「け、剣が微塵も当たらないだと!?」「俺が隙を作る!絡み、捕え、封じろ!《バインドチェーン》!」

「!」(バインドチェーン…魔力の鎖で相手を縛る魔法か…衛兵にもこんなのを使える人っているんだ……ま、効かないけど。)


降助はいとも簡単に鎖を引きちぎり、縮地で距離を詰め、衛兵を殴り飛ばす。


「ふっ!」

「がっ……!ば、馬鹿な…お、俺の…バインドチェーンが…一瞬で破られる…だと…!」「な、なんだあいつは!?」「ば、化け物か!?」


一方でクーアとトーカは、剣で攻撃を防ぎつつ、打撃で応戦していた。


「オラッ!」

「はーっ!」

「くっ…この女達も強いぞ…!」「ひ、怯むな!囲んで数で押せ!」

「オラオラァ!どんどんかかってこいや!」

「クー姐!右斜め後ろ!2人!」

「サンキュー!」

「ぐあっ!?」「ぬおっ!?」


クーアとトーカが抜群のコンビネーションで応戦する一方、ヴニィルは衛兵達をボーリングのピンのように吹っ飛ばしていた。


「ふん!はあっ!」

「ぐわあぁっ!」「うわあっ!」「だ、駄目だ!歯が立たない!仲間達がどんどん殴り飛ばされていく!」


その後も降助一行が優勢のまま戦いは続き、立っている衛兵も数人程度になる。


「く…よ、よもやこれまでか…!」「グランドマスター…我らの力不足…お許しください…!」

「あの…そろそろ話聞いてくれませんか?」

「だ…黙れ…き、貴様らに話す事は何もない…!」「殺したいなら殺せ…!たとえ拷問されようとも情報は吐かんぞ…!」

「駄目だな此奴ら。もう完全に我々を魔王軍扱いしている。」

「どーするよ?」

「うーん……どうしたものか……」

「何やら外が騒がしいと思って来てみれば…お前達…何をやっている?」

「あ、貴女は…!」「ぐ、グランドマスター…!」


衛兵にグランドマスターと呼ばれた女性は、黒髪を後ろで束ねて左肩に流しており、灰色の瞳に切れ目でピシッとした服装にコートを肩に掛けていた。


「で、何があった。説明しろ。」

「て、敵襲です…こ、こいつら、魔王軍かと……」

「そうなのか?」

「いや…全然違いますけど……」

「…ふむ。お前達、よく見たら最近スタトでパーティーを結成した"ホープ"だな?」

「あ、はい。そうです。…って知ってるんですか?」

「当然だ。各地のギルドの情報は全て、即座に、私の手元にやって来る。ここに来た要件は荷物を届けに来たのだろう?もっと時間がかかるものと思っていたが…成る程。まさか邪龍を従えて飛んでやって来るとはな。」

「ええ…まあ…おかげさまで勘違いされちゃいましたけど…」

「ふっ。ここで立ち話もなんだ、中でゆっくり話をしよう。おい、お前達。後始末は自分達でやっておけよ。」

「は、はい…」


こうして4人はグランドマスターに連れられ、ギルド本部の執務室前までやって来る。


「少し待っていろ。準備があるからな。」

「はい。」(準備…?)


執務室の前で待つ事数分後、入っていいと言われたので降助は部屋に入る。


「失礼しま……ん??」

「お待たせ!ほら、そこに座って座って!」

「えっと…」


執務室に入ると、子供の女の子が座って手招きしていた。


「グランドマスターは…?」

「私だよ?」

「…え?さ、さっきの女の人は…?」

「私だよ?」

「んー…?」

「取り敢えず、早く座るか全員部屋に入ってきてよ。この姿は部下達に見られたくないから。」

「あ、はい。」


状況が飲み込めないまま、4人はソファに座る。


「まずは自己紹介しなくちゃね。私はグランドマスター、ユーラ。よろしくね!」

「は、はい…どうも…」

「それで…この姿について説明しなくっちゃだね。私は自分の年齢を変えられるの。まあ、性格も引っ張られちゃうのが難点というか…なんというか?それで、部下達の前とか、戦う時はさっきの姿だけど、普段はこっちの方が楽だから子供になってるの。皆には内緒だよ?」

「そうなんですか…」(ふむ…見たところ、マーカイドを使ってるってわけじゃないな…あれを使うと魔力の薄い膜が全身を覆うように広がるんだけど…グランドマスターはそれが無い…一体どうやっているんだろう?)

「もう…そんなに女の子をジロジロ見ないでよ〜えっち!」

「えっ!?あ、すいません…」

「ふふふ。冗談冗談。ちょっとからかっただけだよ。君、魔力が見えるよね?多分私がマーカイドを使ってないか確かめてたでしょ?」

「は、はい…どうしてそれを…」

「私が看破スキルを使えるっていうのもあるけど…仕事柄、色んな人間を見てきたからね。観察眼には自信があるんだ。ちなみに答え合わせすると、私はマーカイドは使ってないよ。あれの制限は知ってるでしょ?」

「確かに、あれは若干容姿を変えられるだけで、大人から子供にするくらいの変身はできなかったですね。」

「そゆこと。じゃ、雑談は一旦終えて荷物を貰おっか。」

「はい。どうぞ。」


降助はディメンションチェストから荷物を取り出し、ユーラに渡す。


「へぇ〜…アイテムボックス持ち……いや、ちょっと違う…?」

「あ、分かるんですか?」

「うん。スキルを使う時には感じない筈の魔力を感じる。アイテムボックスはスキルだから魔力は感じない筈なんだけど……」

「…実はこれ…自作した魔法です。」

「……はぇ?」

「自作したんです。これ。」

「ど、どうやって…!?」

「マジックポーチにかけられた魔法を解析して、1から組み上げてって作りました。」

「まじっくぽーちにかけられたまほうをかいせき…?いちからくみあげて…?」

「はい。」

「……プラチナランクに上げちゃおうかな…」

「いやいやいやいや!ちょ、ちょっと待ってください!それは流石にやり過ぎじゃ…!」

「大丈夫大丈夫。冒険者ギルドじゃ私が法だから。いけるいける。」

「しょ、職権濫用ー!!」

「いやいや、本当に。そんな事ができる人材をシルバーランクで燻らせておく事はできないから。それに、衛兵達も言ってたように最近は魔王復活の可能性が出てきているからさ。なるべく高ランクの冒険者を揃えておきたいんだよ。」

「そうなんですか…」

「まあでも…何もなしにいきなりプラチナランクっていってもあれだし…1つ依頼を受けてほしいんだけど…」

「依頼なら良いですけど…1つで良いんですか?確かプラチナランクになるには3つ受けないといけないんじゃ…」

「私が良いって言ってるから良いんだよ。」

「あっはい」

「それで、肝心の内容なんだけど―」


翌日。ヴニィルは3人を乗せてヤーラマ山脈のギルド本部から出発し、南東に向かっていた。


- - - - - - - - - -


「神の足跡を調査してほしいんだ。」

「神の足跡…?」

「ああ、それか。我は知っているぞ。確か巨大な足跡の形をした湖だっただろう。そしてそれを聖地とし、囲むようにロトウィーナス教皇国があった筈だ。」

「そうそうその通り。そこの調査に行ってほしいの。」

「調査は具体的に何を?」

「具体的にって言われると難しいな〜…とにかく、調査は調査って感じ。」

「うーん…?」

「なーんか異変が起こってるらしいんだけどいまいち情報が集まらなくて。だから君達に現地まで行って調査してきてほしいの。」

「分かりました。出発は明日で良いですか?」

「もちろん。泊まる用の部屋に案内するからついてきて!」


- - - - - - - - - -


(昨日もまた夢を見たけど…だいぶ近くなったな…という事は神の足跡かロトウィーナス教皇国ってところで会えるかもしれないな……)

「ふあぁ〜…ずっと空飛んでると暇だな〜…」

「陸路だと結構時間かかるししょうがないよ。それに、私は結構楽しいよ?空を飛んで移動するなんてなかなか体験できないし。」

「そろそろ腹が減ってきたな。コウスケ、一旦降りて昼食にしないか?」

「確かに、日も真上まで昇ってきてるしそうするか。」


そして4人は地上に降りて焚き火で肉を焼いて食べる事にした。

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