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賢者に育てられた異世界転生児は最強となる  作者: 斬り捨て大根
第4章 少女とひと夏の冒険編
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第49話 出会い

(…昨日はあの夢は見なかったな…結局なんなのか分からず終いだったけど…まあいいか。)「んんっ……ふう。今日もいい天気だな。」


降助はパジャマから着替え、キッチンで朝食の準備を始める。


「今日は目玉焼きとソーセージを焼いて…あとパンも焼くか。」


朝食を作り終えて食べていると、2階から眠そうにあくびをしながらヴニィルが下りてくる。


「あ、ヴニィル。今日はギルドに行ってくるから、お昼とかは適当にやってね。」

「ふぁ……うむ。分かったぞ。」

「―ごちそうさまでしたっと…じゃあ支度して行くか。」


そして食器を片付け、支度を済ませた降助はギルドにやって来ていた。


「そういえばシルバーランクってどんなクエストがあるんだろう…」


依頼が貼られたボードに向かうと、2人の少女が何やら言い合っていた。一方は赤い瞳にワインレッドの髪をポニーテールにし、額から一本の角が生えている、大きな両手剣を背負ったオーガの少女で、もう一方はオーガの少女よりも背が低く、水色の髪のボブカットと髪より若干濃い水色の瞳で、腰には片手剣を下げていた。


「だーかーらー!ラギ・ヤカシだっつってんだろ!!」

「違うよ!ダイヤ・オリハルコだよ!!」

「いーや、確かにオレの記憶ではラギ・ヤカシだね!」

「何度も言ってるけど私の記憶ではダイヤ・オリハルコだってば!」

「はあ…全然埒が明かねぇな……」

「そもそも、なんで外見に関しては一致するのに名前で食い違うんだろう…?」

「そんなのオレが知るかよ。」

「あの、ちょっといい?」

「ああ?なんだよ?」

「私達に何か用?」

「多分2人が言ってるの…俺の事じゃない?」

「あ?…あー、言われてみると……」

「白髪混じりの黒髪に……青い瞳だ……」

「とりあえず…立ち話もなんだし、そこの酒場で座って話さない?」

「まあ…そうするか。」

「だね。」


降助の提案を了承した2人は、併設された酒場のテーブル席に座る。ちなみに、いつも通りリアに絡まれたが降助は適当にあしらい、2人とお互いに自己紹介をする事にした。


「じゃあ、まずはオレから。オレはクーア。ま、この角を見れば分かると思うがオーガだ。職業は一応戦士をやってる。よろしくな。」

「よろしく。」

「私はトーカ。見ての通り、ドワーフだよ。」

「いや…見ての通りって言われても分かんない……」

「……職業は私も戦士だよ……」

「うん…なんかごめん……」

「で?お次はそっちだけど。」

「俺はコウスケ・カライト。種族は人間、職業は魔法剣士だよ。」

「ん?コウスケ・カライト?ラギ・ヤカシじゃねぇの?」

「ダイヤ・オリハルコでもないの?」

「どれも俺の名前だよ。」

「はあぁ!?なんだそりゃ!?」

「えっ…じゃあ3つも名前があるの?」

「いや、7個ある。」

「な…7個……」

「な…なにそれ……」

「で、2人は俺に何か用かな?っていうか…どこでその名前を知ったの?俺が名乗った事があるのはコウスケとダイヤとミコト…それからヴィアだから…トーカがダイヤを知ってるのはともかくとして、クーアがラギを知ってるのはおかしいんだけど…」

「それは簡単な話だ。オレ達は賢者の生まれ変わりなんだよ。」

「そういう事!」

「……はい?」


突然の情報に、降助の脳がフリーズを起こした。


「ん、なんだ?もしかして知らねぇのか?」

「うん…賢者の生まれ変わりってどういう事…?」

「じゃあ、賢者が何かを極めた人がなるものっていうのは知ってる?」

「あー…それは聞いた事がある。逆に言うとそれくらいしか聞いた事がないけど…」

「じゃあそっから話すか。まず、賢者になると力の塊…名前は知らねぇけど…とにかく、そいつが宿る。で、賢者が死ぬとその力の塊は賢者の種となってその瞬間に生まれた命に宿る。」

「…それと俺の名前を知ってる事に関係があるの?」

「まあまあ、話は最後まで聞けって。それでな、その次代の賢者は個人差はあるが…先代の記憶を持っている。早い話、生まれ変わりみたいなもんだな。」

「みたいというか…ほぼそうかも。賢者の種も一部のスキルも記憶も、ある程度の人格も引き継ぐからね。」

「で、オレ達は記憶はお前の見た目と名前、この町の事くらいしか引き継がれなかったからとりあえず来てみたってわけだ。」

「はえ〜…そういう事ね……」

「ちなみにだけど、賢者の種は先代と同じ種族、同じ性別に宿る事が多いらしいよ。」

「ところで…2人が俺の事をラギとダイヤで呼んだって事は…コウさんとボウさんの生まれ変わりって事でいいのかな?」

「知らね。オレ達、その辺はあんまり引き継げてないからな。」

「まあ、コウスケがそう思うんならそうじゃないかな?」

「そっか…ちなみにどっちも男だったけど…」

「…マジか…」

「そうなんだ…」

(しかし…コウさんとボウさんの生まれ変わりのクーアとトーカか。あれ、そういえば最近見てた夢のもやと似てるな……もしかしてあれは予知夢的なものだったのかな?それに、賢者は皆こうなるっていうなら…アインさんにジックさんにトランさん、ハクさんの生まれ変わりにもそのうち会えるのかな……)

「あの……」

「ん?」

「そういえば、前の私達…その、コウとボウ?とはどんな関係だったの?」

「あ、確かに。それオレも気になる。」

「そうだな……家族、かな。俺が赤ちゃんの頃に拾われて、それから7人で暮らしてたんだ。特にコウさんとボウさんには色々修行つけてもらってたから師匠でもあるよ。」

「そっか…家族兼師匠ねぇ……」

「クー姐。」

「ん?」

(へー…トーカってクーアの事クー姐って呼ぶんだ…生まれ変わっても義兄弟…いや、この場合は義姉妹か…それだったりするのかな?)


トーカはクーアにひそひそと何かを話した後、お互いに頷いて降助に頼み事をする。


「コウスケ。」

「オレ達の師匠になってくれ。」

「それはまた急だなぁ…取り敢えず理由を聞いても?」

「単刀直入に言うと…オレ達は賢者の種を持ってるし、スキルもある程度持ってる……持ってるが…全然弱い。そこらのやつよりは腕が立つ自信があるがそれでも弱いものは弱い。実際、ここに来るまでの間に何回か死にかけたからな。」

「ワイバーンの群れに追われた時は義姉妹の誓いまでしたもんね……」

「ああ…たとえ離れ離れになろうと私達はいつまでも繋がってるってな……ま、その後普通に無傷で切り抜けられたとは思いもしなかったけどな。」

「そんな事があったんだな……」

「とにかく、そんなわけで師匠として鍛えてもらいたい。前のオレ達とも修行してたみたいだし、やる事はそんなに変わらなくていい筈だ。頼む。」

「それにその…記憶にいた人…コウスケを探しに身一つで旅に出ちゃって…お金もカツカツだから帰ろうにも帰れないし…面倒見て欲しいなぁ…なんて……」

「おいバカ!そこ(本音)は伏せるって自分で言ったじゃんか!」

「あっ…!」

「まあ…いいよ。コウさんとボウさんの生まれ変わりじゃ無下にできないし。修行もするし面倒も見る。って事で、これからよろしく!」

「おう!よろしくな!」

「よろしく!!」


握手を交わした3人はその後、館に向かう事にした。


「なあ…ところで…なんで7個も名前があるんだ?」

「確かに…偽名とか?」

「いや…全部本名といえば本名かな……昔、6人の賢者と暮らし始めた時にさ、俺の名前を決めようってなったんだけど…中々決まらなかったから俺に選ばせようってなって。半分冗談のつもりで全部選んだら各々が自分が考えた名前で呼び始めたんだよね。俺も当時は驚いたけどもう慣れたよ。」

「なんだそりゃ…つーか賢者6人と暮らしてたって改めて考えるとヤバいな…」

「え…そうなの?」

「ああ。まず賢者自体そんなポンポンいるもんじゃねぇし。それが6人も集まって暮らしてた上にその賢者全員に育てられたって、冷静に考えたら大騒ぎになるぜ。」

「はえ〜…変に昔の話とかしなくてよかった…危うく普通の学園生活が送れなくなるところだったな……」

「学園生活…?どっか通ってんのか?」

「ん?ああ、バラシアン第一学園都市に通ってるよ。今は丁度夏休みでこっちに帰ってきたんだよ。」

「バラシアン第一学園都市!?」

「それってここから凄い遠くにあるけど、どうやって通ってるの!?」

「俺、寮で暮らしてるんだよ。」

「ああ…成程……っていやいやいや、往復にかかる時間どうなってんだよ!?どう考えても片道だけで夏休み殆ど終わるだろ!?」

「そうだよ!こんな悠長に山道歩いてる場合じゃないよ!」

「ああ、それはこれがあるから大丈夫。」


そう言って降助はディメンションチェストを開き、中に入って2人の後ろから出てくる。


「ほら」

「うわあぁっ!?な、なんだそれ…!?」

「これはディメンションチェストっていって、俺が作った魔法だよ。本当はアイテムボックスみたいに使うんだけど、こうやって自由に出入り口を開けるからワープみたいに使えるんだよ。」

「く、クー姐……」

「あ、ああ…どうやらオレ達はとんでもないヤツに弟子入りしちまったみたいだな……」

「前世の私達はこんな化け物を育ててたんだね……」

「化け物は心外だなぁ……」

「いや…化け物だろ…魔法作ったってだけで賢者レベルなのに…しかもそれがアイテムボックスの機能を持ちながらワープもできるって……言葉にできないくらいおかしいからな?」

「そ、そうなんだ……」

「こ、コウスケなら国ひとつ滅ぼせるんじゃ……」

「いやいやいや!流石にそこまではできないしやらないからね!?」

「じゃあどこまでできるんだよ……」

「うーんと…ストームドラゴンを倒すくらいは…?」

「それも自分で魔法作ったって事には劣るけど全然スゲェな。」

「そういえばコウスケは冒険者らしいけど…ランクは?」

「シルバー。」

「しっ…シルバー…!?」

「私達の4つ上だ…」

「4つ上って事は……2人ともウッドランク?」

「まあ…関所とかで通行料を減らす為に登録しといたくらいで、あんまり依頼とか受けてないからな……」

「そっか…あ、そうこうしているうちに着いたぞ。」

「ここが…」

「前世の私達が暮らしてた館……」

「じゃ、中の案内するから入ってくれ。」

「おう。」


降助が2人を中へ案内すると、丁度リビングでくつろいでいたヴニィルがやってくる。


「む。帰ったのだな。……と。その2人はなんだ?」

「ああ、紹介するよ。こっちのオーガの子がクーアで、ドワーフの子がトーカ。あのコウさんとボウさんの生まれ変わりだって。」

「よろしくな。」

「よろしく!」

「い…今なんと……?」

「え?だから、オーガのクーアとドワーフのトーカ…」

「違う!その後だ!」

「…コウさんとボウさんの生まれ変わり?」

「そ、それは本当なのか!?」

「らしいよ。」


降助がそう言った途端、ヴニィルの顔がどんどん青ざめていく。


「なっ…なななななっ…なんてやつを連れてきたのだ貴様はあああぁぁぁ!!」

「うえっ…い、いきなり何!?」

「わ、我が遠い昔に武賢の2人にボコボコにされて山の洞窟に引き籠もっていた事を忘れたのか!?それに賢者の生まれ変わりは前世の記憶を持つというではないか!ま、またボコボコにされる……コウスケだけじゃなく…そこの2人からもいいようにされてしまうのだ……!」

「あの…1人で盛り上がってるとこ悪いんだが…オレ達にアンタの記憶はねぇよ。だからその…安心しろよ…な?」

「ほ、本当なのか?」

「うん。本当だよ。」

「ああ。オレ達はあんまり記憶を引き継いでなくってな。アンタが何者なのかは分かんねえ。」

「そ、そうか!そうかそうか、ならば良いのだ!ガッハッハッハッハ!!それなら構わん!好きにくつろぐと良い!」

「こいつ……」


あっという間に調子を取り戻したヴニィルに内心呆れる降助であった。

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