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第5話 名前

ふと鳥の(さえず)りが聞こえた。降助は目を覚まし、小さなあくびをして辺りを見回す。窓から差し込む日の光は目を細め、眉間に(しわ)が寄るほど眩しかったが同時にとても暖かく、気持ちよかった。


「お、起きたようじゃの。もう皆待っておるようじゃし、お披露目といこうかの。」

「あ…」(お披露目……そうか、俺の名前を決めるんだったな。降助って名前も気に入ってるけどどんな名前が付けられるのかも正直楽しみだな。)


ハクは廊下に出て階段を降り、昨日の夕食を囲んだ大きなテーブルまで降助を抱えて連れていく。


「お、ようやく来たの。」

「皆さん今か今かと待ち侘びていましたよ。」

「すまんすまん。今さっきこの子が起きたのでな。ではお披露目といこうかの。コウから順番で良いかのう?」

「そうじゃな。では俺からいくぞい。」


そう言ってコウは豪快に名前が書かれた紙を掲げる。


「成る程のう。確かにおぬしらしい名前のセンスじゃの。」

「うむ。とても義兄上らしさがありますの。」

(うん。なんかいい名前っぽさが出てるけど全く読めないんですが……)

「ラギ・ヤカシ。それが俺の候補じゃ。」

(ほへぇ〜そんなふうに書いてあるんだこれ…)

「では次はワシじゃの。」


続いてボウも名前を書いた紙を掲げる。


「ダイヤ・オリハルコか…本当におぬしは鉱石の名前を付けるのが好きじゃの。」

「ワシの家系のしきたりというか自然とそうなる癖というか…でもカッコいいし良いじゃろ?」

(ダイヤモンドにオリハルコンか……とにかく強そうな鉱石挙げてみたって感じだなぁ…でも確かにカッコいい……)

「では次は私ですね。」


アインも綺麗に名前が書かれた紙を掲げる。


「ジーク・レイブといいます。ジークにはエルフの言葉で賢い者、という意味があり、レイブには勇敢な者、という意味があります。つまり賢く、勇敢な子に育って欲しいのでこの名前を考えました。ちなみに他の候補としては強き者を意味する―」


アインの話が長くなりそうな事を悟ったハクが慌てて遮る。


「分かった分かった!ジークじゃな。いい名前じゃのう〜」

「まだ途中だったのですが……」

(今のところジーク・レイブが一番カッコいいかもな……)

「あ、次はわしじゃの…」


ジックは文字が大量に書き連ねられた紙を掲げる。


「ユーリウス・アルヴァイド・ファン・マックネス・ゾルベイド・サー・クリュトス・ジン・アイネス・ヴァット…じゃ。」

(いや長い長い長い。名前長すぎるよ……)

「そ、そういえば魔族はフルネームは長いんじゃったな……」

「ええ…魔族は名前が長ければ長いほど、特定のワードが入っていればいるほど地位や力も高かったりするとか……」

「端折るならユーリウス・ヴァットじゃな。」

「では次はワシじゃな。」


トランは走り書きで名前が書かれた紙を掲げる。


「ヴィア・カルゴじゃ。いい名前じゃろ?」

「そうですね。いい名前です。では最後に―」

「儂じゃな。」


ハクは懐から四つ折りにした紙を取り出し、皆に見えるように広げる。


「ミコト…か。これもまた良い名前じゃのう。」

「これで名前の候補は出揃いましたね。それで問題なのは……」

「どれを付けるか…じゃの……」

「自分の候補こそ、と推したいところじゃが…」

「他の候補も良いから悩ましいのう……」

「そうだ、我々で決められないのであればこの子に選んでもらうのはどうでしょうか?」

「確かに、それが良さそうじゃの。」


6人はそれぞれ名前の候補を書いた紙を降助の前に並べていき、並べ終わったところでアインがハクの膝に乗っている降助に話しかける。


「実は私達はあなたの名前を決めかねているのです。そこであなた自身に決めてもらいたいのですがいかがでしょうか?」

「…あ。」(成程そうきたか…)


それから降助は少し考えた後に目の前に並べられた紙に手を伸ばす。そして……


「む。起きたようじゃなミコト。おぬしはいつも早起きして偉いのう。さ、朝食を食べに行くぞい。」


ハクは降助を抱え、リビングに向かう。


「おはようヴィア。今日の朝ごはんはもうできてるぞい。」

「おはようラギ。今日も元気そうじゃの。」

「おはようございますジーク。朝ご飯を食べ終えたらまた本の続きを読んであげますね。」

(自分で選んどいてなんだけど混乱しないのかな…?)


降助が冗談混じりの軽い気持ちで全ての紙を選んだ結果、それぞれが自分の付けた名前で呼ぶという事になったのだ。


「ほれ、あーん……」

「あー…」(まあ……本人達も満足っぽいしこれでいいのかなぁ……)


そんな事を考えながらハクに手伝ってもらいつつ朝食を食べ終える降助であった。

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