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第38話 シューヴァルト学園

「ふあ……もう朝か……今日もいい天気だなぁ……」


あくびをしながら窓の外を見ていると制服に着替えたカイトがやって来る。


「あれ、まだ着替えてないのかい?急がないと遅刻しちゃうよ?」

「へ?遅刻…?……ああぁぁっ!!」(わ、忘れてた…!16年も学生生活から離れてたからうっかり休日の気分だった…!そういえばそうじゃん!何のために昨日早めに寝たんだよ!!)


降助は慌てて制服に着替え、少し余っていた昨日のパンを咥えてカイトと一緒に学生寮を飛び出た。


「走りながら食べると危ないよー」

ふぁふぁっへふ(わかってる)!」


走ったのと寮と校舎が近い場所にあったおかげで授業が始まる前に教室に到着する。


「ふう…間に合った……」

「だね。席は…あの辺りが空いてるね。あそこに座ろうか。」


降助とカイトは窓際の席に座る。それから暫くするとリヒルトが入ってくる。


「おはようございま〜す。それでは出欠確認をしますね。」


それからサクサクと出欠確認が進んでいき、あっという間に終わる。


「それでは早速ですが授業を始めます。といってもこの学園を紹介していくだけなんですけどね。」


そう言うとリヒルトは黒板の横についたパネルに手を当てる。すると天井からプロジェクターのようなものとスクリーンのようなものが降りてくる。


「これは魔法投影機といって魔力を流すとセットされた映像を壁などに映せる道具です。あ、スクリーンの方はなんの変哲もないただの布です。その辺で買える安物ですね。」

(ほぇ〜…教室にプロジェクターが付いてんのか……進んでるなぁ……)

「それでは始めますね。」


リヒルトが部屋の電気を消した後、パネルに魔力を流すとスクリーンに校門とその奥に広がる学園の画像が投映される。


「まずシューヴァルト学園の歴史から説明していこうと思います。バラシアン第一学園都市ができたのは数十年前と比較的最近の事ですが学園自体は100年以上前、大征服戦線紀中に兵として戦線に投入する為に平民を養成し始めたのが起源です。それから征服戦線紀が終わる頃までは兵士を養成する場所として使われて来ましたが、長い戦争が終わりを告げると共にこの学園も一般的な教育の場へと姿を変えました。そして意外かもしれませんが実は平民部の後に貴族部ができたんです。」

(へぇ…てっきり貴族部の後に平民部ができたかと思ってたけど違うのか。)

「先生、質問してもよろしいでしょうか?」

「おや。早速質問ですか、カイトさん。良いですよ。」

「このシューヴァルト学園のように貴族と平民で分かれている学校の大半は、貴族部の後に様々な苦労を経て平民部ができたと聞いていますが、何故シューヴァルト学園は平民部が先で貴族部が後にできたのでしょうか?」

「良い質問ですね。確かに、カイトさんの言う通り多くの学校は貴族部が先にできました。そんな中でこのシューヴァルト学園だけ平民部が先だった理由はいくつかありますが、主な理由としてはまずそもそもがこの学園は平民向けに開かれたものだからですね。先ほども言ったように平民を兵士として養成する為の学園であり、貴族はまた違う場所で教育を受けていたからです。では何故そんなシューヴァルト学園に貴族部ができたのかというと、これにはとある貴族が関係しています。」

「とある貴族、ですか?」

「はい。この学園が長い歴史を持つことや、教育の場として大きく成長しており、貴族が学ぶ場として良いのではないか、と目をつけたフィルソニア家の援助によってこの学園に貴族部ができました。貴族は歴史や伝統、気品を重んじますからね。おかげさまで多くの貴族がここに学びに来ています。」


不意にリヒルトの口から出た単語に降助は呆気に取られた。


(フィルソニア家…って事はクレイってそんなに凄いところの人だったの…!?)

「…?コウスケ?」

「…ん?何?」

「いや、なんかぼーっとしていたから。驚いていたように見えたけどどうしたんだい?」

「…何でもない。気にしないで。」

「そう…?ならいいけど…」

「では歴史の話も程々にして学園の施設なんかを見ていきましょう。」


そう言ってリヒルトが再びパネルに魔力を流すと画像が切り替わり、2つの校舎が映し出される。


「手前が平民部校舎、奥が貴族部校舎です。この2つはいくつかの通路で繋がっていますが基本的に貴族部生徒から招かれた場合や、教師の許可などが無い場合は平民部の生徒が貴族部校舎へ行く事はできません。主な施設は同じですが造りが違ったりしますね。貴族部の方がちょっと豪華です。」


また画像が切り替わり、今度は校庭が映し出される。


「校庭は運動する授業や武術科、魔法科の授業はここで行われる事があります。定期的に行われる催しの会場にもなったりするのでとても広いです。」


画像が切り替わり、今度は闘技場のような場所が映し出される。


「ここは武術科と魔法科専用の施設、訓練場ですね。とても頑丈で対魔法の防御結界も張られているので校庭ではできないようなスキルや魔法も使えます。1対1の組み手や戦闘訓練などにも使われる場所です。」


画像が切り替わり、講堂が映し出される。


「ここは講堂です。皆さんが昨日行った場所ですね。基本的に式典以外では使われませんが催しで演劇なんかがある時は会場として使われる事もあります。」


講堂の次は学生寮が2つ映し出される。


「左が平民部学生寮で右が貴族部学生寮です。それぞれ同じ部の校舎の近くにあります。既に寮で暮らしている生徒の人も居ると思いますが快適でしょう?先生も1万キーカの家賃でキッチンがあって風呂もトイレもついてるなんて破格だなぁなんて思ってます。さて、では学園の紹介もこれくらいにして今度は教科書を配っていきます。長く使う物なので大切にしてくださいね。」


リヒルトは教室の隅に積まれた箱から教科書を取り出していき、生徒達に配っていく。


(言語…計算…歴史…ふむ。国語&英語と数学と社会ってとこか。理科は無さそうだな…残念。実験とか好きな方なのに…)

「教科書は皆さんに行き渡ったようですね。明日からはいよいよ本格的に授業が始まります。しっかりと準備してきてくださいね。それでは今日の授業を終わります。おっと…忘れるところでした。武術科、魔法科、製作科の生徒はやる事があるのでこの後所定の場所に行ってください。」


その後解散となり、降助とカイトは訓練場へやって来ていた。


「ここが訓練場か…」

「結構広いね。」


2人が訓練場を見回していると筋骨隆々のスキンヘッドの男がやって来る。


「全員、クラスごとに整列!!」


男の声が訓練場に響き渡り、生徒達はピシッと整列する。


「私の名前はルーク・グワン!武術科担当教師だ。お前達は明日から授業を行う。いいか!武術はこの先冒険者として、あるいは衛兵、騎士としてやっていく上で基礎中の基礎となる!これを疎かにした者から死んでいく。そういう事がある世界だ!心して取り組むように。では、挨拶も程々にして訓練用の木剣と胸当て、アームガードを渡す。消耗品だから多少の損傷は仕方ないが大事に扱うように。それともし、授業に持ってくるのを忘れた場合は校庭を10周してもらう!くれぐれも忘れるなよ?」


忘れ物で校庭を10周もさせられる事にざわつく生徒達がちらほらいたがどんどん木剣や胸当ては配られていき、そのまま解散となった。


「じゃあ僕は先に帰るよ。」

「うん、また後で!」


挨拶を済ませた瞬間、降助は猛ダッシュで校舎の中に向かった。


「うわぁ…全力ダッシュじゃないか…」

「チッ…アイツ…逃げやがったな……!」

(ああ…彼から逃げたかったのか…コウスケも大変だなぁ…)


ガーヴから猛ダッシュで逃げた降助は魔法科用の少し広い教室に来ていた。


「ふう…」


ほっとする降助に紫髪で魔女帽子を被り、丸眼鏡をかけた女が話しかけてくる。


「もう来たんですね。」

「えーっと…」

「わたしはショーウ・インス。魔法科の担当教師です。詳しい説明などは後で皆さんが集まり次第するので座って待っていてくださいね。」

「はい。」


それから数分してガーヴ含め、魔法科と他の科を掛け持ちしている生徒がやって来る。


「皆さん揃ったようなので始めますね。わたしはショーウ・インスといいます。魔法科を担当しています。これから魔法で分からない事があれば気軽に質問してください。それでは早速教科書と杖を配っていきますね。」


その後、教科書と杖を受け取り、そのまま解散となった。


(特にこれといった話もないまま終わったな…)「よし、帰―」

「おい。」


ガーヴに話しかけられた瞬間、降助は猛ダッシュで教室を飛び出して廊下を駆け抜ける。


「クッソアイツ…!」


あっという間に姿を消した降助に苛立ちながらもガーヴは大人しく帰る事にした。

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