第34話 バラシアン第一学園都市 1
町を転々としながら馬車を乗り継ぎ、降助は遂にバラシアン第一学園都市へとやって来ていた。
「ここがバラシアン第一学園都市……!凄い…今まで見たどの町よりもデカい…!」
バラシアン第一学園都市はルリブス王国領内に存在し、国内外から多くの生徒を集め、様々な分野で活躍できる人材を育てるべく、様々な施設を内包した巨大な学園都市であり、シューヴァルト学園こそが降助が入学を目指す学校である。
「確か入試を受ける手続きができるのは明日までだったっけ…今日のうちにやっておくか…」
降助は先ほどから見えていた巨大な建物を目指して歩き始める。先ほどの位置からそれなりに歩いていくとシューヴァルト学園に到着する。
「結構な人だかりだな…これ皆受験希望者かな…?」
パッと見ただけでも100人近くは並んでおり、受付は数日前から行われていた事を鑑みるに相当な人数が受付に来た事は用意に想像できた。列に並び、暫く待っていると降助の順番が回ってくる。
「受験希望ですか?」
「はい。」
「ではこちらに受験する学科と名前を記入してください。」
(学科は確か……武術科と魔法科…それから製作科だったよな…製作に興味は無いしとりあえず武術科と魔法科にしておくか。それで何かしらの学科を選べば座学は勝手についてくるんだよな。それじゃ後は名前を書いて…)
名前と希望する学科を紙に記入し、受付に渡す。
「コウスケ・カライトさんですね。希望は…武術科と魔法科なので合計40000キーカになります。」
「はい。」
「確認しますね。……はい、40000キーカちょうどですね。こちらが受験時に持っていく番号札になります。3日後の試験日まで失くさないようお願いします。」
「分かりました。」
降助は受付の列から離れ、街を見て回る事にする。
「試験まで3日か…何して過ごそうかな……観光でもしようかな…?」
などと考えていたものの、結局は宿屋でゴロゴロと過ごし、気が向いたら散歩に出かける日々を過ごし、あっという間に受験日を迎えてしまう。
「おかしい……こんな筈では……とにかく、過ぎてしまったものは仕方がない。会場に行くか……まずは…魔法科からか。」
魔法科の試験は学園のグラウンドで行われる。内容は使える攻撃魔法を的に向かって撃つというシンプルなものであり、発動速度や威力など様々な点を見て評価される。
(んー…皆詠唱ありだな…じゃあ俺も詠唱した方がいいか…?でもそうなると相当威力を抑えないとまずそうだな……)
「《ファイアボール》!!」
「おっ…?」
音のした方向を見てみると、他の受験生は的に当たった場所が焦げる程度の中、赤髪の青年は的を丸焦げにしていた。
「おぉ…凄いな……」(詠唱を省略して的を丸焦げにできるのか…まあ俺がやったら消し炭どころか灰レベルだけど……)
「次!受験番号1076番!コウスケ・カライト!」
「あ、はい!コホン…輝く火の玉は触れるものを焦がす。《ファイアボール》!」
降助の放ったファイアボールは的に当たり、大きな焦げの跡ができる。
(ふいー…加減するのも疲れるな……)
その後も何度か初級魔法を撃った後、試験が終わる。
「ふう…次は武術科か…確か会場は…」
魔法科試験から数分後、バラシアン第一学園都市から少し離れたところにある山にて。
「ここが会場なのか…」(あ、さっきの赤髪のやつも居る…あいつも武術科受けたのか。)
山の麓に集められた受験生の前に試験監督の男がやって来る。
「これより武術科の試験を開始します。試験内容は至って簡単、反対の麓を目指して山の中を進んでいただきます。しかしながら、山の中は魔物で溢れており、遠くからの外見に似合わず過酷な環境です。気を引き締めて取り組んでください。」
「魔物が溢れてるだって…!?」「そんなの、下手したら死人が出るんじゃ…」「いくら平民部だからってこれは……」
そんなざわめきが起こる中、試験監督はコホン、と咳払いをして話を続ける。
「皆さんが心配されているようなので先に説明しますが魔物で溢れているといってもゴブリンなどの低級の魔物ばかりです。油断せず、落ち着いて対処できればどうということはありません。更に皆さんに装着していただいている腕輪には装着者の命の危険を感知してこちらで指定したポイントへ転移する機能が備えられています。これにより死亡する事はありませんが多少の怪我は防げない他、転移した時点で即時不合格となりますのでご注意ください。」
(ふむ…結構ちゃんとしてるな。まあ…してもらわないと困るけど……)
「それでは皆様、所定の位置へ移動してください。」
試験監督に促され、受験生達は門の前に並ぶ。
「期限は3時間、超過した場合も即時不合格となり、指定ポイントへ転移されます。それでは皆様、ご武運を。」
試験監督がそう言うと共に門が開かれ、受験生が一斉に山の中へ入っていった。




