第3話 洋館に住む翁達
「早速じゃが一応自己紹介でもしておくかの。儂の名前はハク。よろしく頼むの。」
「あう…」(俺を拾ったこのお爺さんがハクさん、か。)
「俺の名はコウ。よろしく頼むぞい!」
「あ!」(この元気なお爺さんはコウさんか。ん?よく見たら角が生えてるな……鬼…オーガかな?)
「ワシはボウ。コウとは義兄弟でワシは弟じゃ。兄弟共々よろしくの。」
「あ〜。」(へぇ、この2人は義兄弟なのか。確かに、角が生えてないな。しっかし結構ガッチリしてるなぁ……鍛えてるのかな?)
「私はアイン。よろしくお願いしますね。」
「あう。」(耳が長い…エルフってやつなのかな、このお爺さん。)
「わしはジック…あまり関わらないと思うがよろしくの。」
「あ。」(この大人しめのお爺さんがジックさんね。)
「ワシはトラン。ワシは料理が得意じゃからな、美味いものをたーんと食わせてやるぞい。」
「あう!」(この人が一番人間に近い…というか多分人間なんだろうな。料理が得意なのか…期待しちゃお!)
一通り自己紹介を終えたところでコウが話を切りだす。
「自己紹介をしたはいいものの本当に俺らで育てるのかの?」
「そうするしかないじゃろう。捨て子じゃろうし親も分からないのでは―」
「あ、じゃあ…わしの魔法で調べてみるかの。」
「おお、そうじゃったな。ジックは対象の血縁者を探しだす魔法を使えるんじゃったな。」
「という事で血を……」
ジックがそう言った瞬間、6人とも一斉に降助を見て固まる。
「??」
((((((血を採るのか??こんな可愛い赤ん坊から??))))))
「ど、どうするんじゃ…?」
「た、確か針を極限まで細くして痛みを感じにくくした注射器があった筈……」
ハクは懐からケースを取り出し、注射器の準備をする。
「ちょっと血を採るが痛くしないから大人しくしているんじゃぞー……」
ハクは恐る恐る降助の腕に注射器を刺し、血を少し抜き取る。
「ふう。全く、心臓に悪いわい…しかし随分と大人しい子じゃの。なんというか慣れてる感じじゃ。」
(まあ…前世で何回も予防接種とかしたし献血も行ってたからなぁ…慣れたもんよ)
「じゃあ…早速魔法を始めるぞい。」
ジックは空中に魔法陣を作り出し、そこに降助の血を一滴、二滴と垂らしていく。
「血は縁。繋がりを手繰り、彼の人を探し出せ。《ブラッドサーチ》。」
ジックが呪文を唱えると魔法陣は様々な向きに回転し、中心に少しずつ文字を描いていく。
「結果はどうなったんじゃ?」
「見つかったかの?」
「……ない。」
「うん?」
「この子に血縁者はいない。」
「なっ…なんじゃと…?」
「厳密に言うと…あるにはあるんじゃが……繋がりが今にも切れそうな程薄く、遥か遠くにあるようで…すぐ側にあるような…とてもあやふや…じゃの。」
「ふーむ…」
「となるとやはり親を探すよりは私達の手で育てていくしかないようですね。」
「孤児院は昔から信用できないからの。それに良い親に巡り会えるとも限らん。確かに、ワシらが育てていくしかあるまい。」
「そうは言っても俺らはもうこんな歳じゃ。差異はあれど大人になる前に皆死ぬ。それがあの子にとってどれだけ─」
コウの意見にも一理ある、と皆が納得し、頭を悩ませる。孤児院に入れるよりも、里親を探すよりも。自分達で育てていった方が良い。しかし、それではきっと彼が大人になるまでに6回も死を見送らせる事になってしまう。最初に結論を出したのはアインだった。
「やはり私達で育てましょう。6回、死を見送らせるのがなんだというのです。それを超えるほどの思い出を、我々が作ってあげれば良いではないですか。」
「……それもそうじゃな。俺は賛成じゃ。」
「ワシも。」
「わしも…」
「儂らで楽しい、良き思い出を作っていこうぞ。」
「美味い食べ物もたーんと食べさせてやらんとな。」
(なんかお爺さん達で凄い団結力が生まれている…)
「「「「「「では改めてよろしくの─」」」」」」
「?」
「…この子の名前…どうしようかの」
「あ…あうー!?」(い…今それいるー!?)