第28話 地底湖の戦い
「うわあ…なんだこれ…さっきまでの階層と変わりすぎだろ…!」
あの穴から少し歩いていくとトンネルのような狭さの洞窟が徐々に広がっていき、今居る地点では地底湖や小さな滝があり、水色に輝く鉱石がちらほら見られる幻想的な空間が広がっていた。
「今までのがその辺の山の中通したトンネルだとしたらここはカプリ島の青の洞窟ってくらい違うぞ…!……我ながらなんて例え方してんだ…?」
景色に見惚れている降助に徐々に蛇が這い寄り、不意打ちを仕掛けるが難なく反応され、返り討ちに遭う。
「この景色もゆっくり見させてくれないのか…」
呆れながら振り返ると8匹ほどの蛇が降助を狙っていた。
「ケイブスネーク…8匹もいると厄介だな…とりあえず…火で牽制しとくか。《ファイアボール》」
ファイアボールを発射せず、右手に留めてケイブスネークを牽制する。
「さーてどうするかな……」(合掌波なら纏めて攻撃はできる…が仕留められる程の威力は無いし、牽制用のファイアボールも発射しないといけない…となると…あれだな…そんなに回数やってないからできるか分かんないけど…やるしかなさそうだな。)
右手のファイアボールを左手に移し、剣を引き抜いて炎を纏わせる。
「《炎乱飛斬》!!」
炎を纏った斬撃はケイブスネークを1匹残らず焼き切る。降助はケイブスネークを全て倒した事を確認し、左手のファイアボールを消す。
「それじゃ、もう少し奥まで進むか。」
暫く歩いていると、水色に輝く鉱石の鉱床を発見する。
「そういえば看破って人以外にも使えるのかな…でも物とかに使うなら鑑定…とかだよな?看破の延長線上というか…ものを見破る系統のスキルって事で少しくらいは使えたりしないかな…鑑定!なーんて…」
その瞬間、水色の鉱石の情報が頭に流れ込んでくる。
「うおぉ!?ほ、本当にできた…!マジか…半分冗談でやってみたのに……っと。えーと、この鉱石の名前は…水光石…意外とまんまだな…っていうか鑑定しても名前しか分かんないんかい!用途とかもっとこう、ないわけ!?い、いや…もしかしたら熟練度の問題かもしれないな…となれば…《鑑定》!《鑑定》!!《鑑定》!!!《鑑定》!!!!」
それから数分かけて水光石を鑑定し続けると、遂に名前以外の情報を得ることができた。
「状態:良、水源のある洞窟内に稀に生成される貴重な鉱石……えっそれだけ??装飾品に使われる、とかこういう特殊効果を持つ、とかではなく…?」
思った以上に成果が得られず、肩を落とす降助だったが何かに使えるかもしれない、という事で水光石をいくつか採っていく。
「…もうちょっと奥に進んでも良さそうだな。」
水光石の鉱床を離れ、暫く歩いていると狭い通路のような道を発見し、そこを少し歩いていくと広間のような場所に着く。降助が何があるか確かめるために足を踏み入れた瞬間、何かが勢いよく閉まる音が鳴り響く。
「罠か!?何にせよ出入り口を塞がれた…!」
周囲を警戒していると突如、謎の地響きと共に1箇所に岩が集まりだし、体のようなものを形成していく。最終的に岩達は大きな人型の魔物へ変化し、唸り声を上げる。
「オオオォォォ…!」
「こいつは…確かギルドで貰ったガイドの裏面の魔物図鑑に載ってた…ラージゴーレム…!」
「オアァ…!」
「ッ…!《ストーンボール》!」
攻撃の気配を察知した降助はストーンボールを放ち、ラージゴーレムの腕に穴を開けたものの、周囲の岩が穴を埋めて補修してしまう。
「再生するのか…これは厄介だな…!」
「オオォォ!」
「!」
ラージゴーレムの周囲に鋭い岩が現れ、降助を目掛けて飛んでいくが難なく躱す。
「デカいハンマーでもあれば良かったかな…!」
そんな愚痴を言いつつも剣をしまい、ポーチから両手斧を取り出す。
(確かゴーレムの弱点は体内にある核の筈…そいつを壊す程の技は…)「これだな…!」
「オォ…!」
「っと!」
その巨体からは想像がつかない程の素早さで拳が繰り出されるが降助は躱し、そのまま左腕を駆け上がっていく。
「巨体の割に素早いけど…全然避けられない程じゃないな。」
「オオォ!」
「《ローリングスラッシュ》!」
降助を仕留めようと右の拳が迫ってくるがローリングスラッシュで防御しつつ、その勢いで上へ飛ぶ。
「《グラウンドカッター》!」
「オ…!」
上から迫り来る斧を防ぐべく両腕をクロスしてガードするが、グラウンドカッターは高速振動するオーラを纏った攻撃であり、咄嗟のガードも虚しく斬り落とされていく。
「うおおぉぉ!!」
「オ…オォ…!!」
両腕を斬り落とした斧はラージゴーレムの脳天に直撃し、そのまま体を真っ二つにしていく。そしてガリガリと音を立てながらラージゴーレムの核が割れ、体を形成していた岩は次々と地面に落ちていく。
「ふぅ……倒せた、よね?……再生はしないし倒せたっぽいな。あ、核とかって何かに使えるのかな…」
半分に割れたものの、手の平と同じくらいの大きさの核を拾い、ポーチにしまう。そしてしまい終わるのと同時に広間の中央に宝箱が迫り上がってくる。
「…今度は罠じゃないよな…?」
再びシールドを展開しつつ、宝箱を開けると今度はミミックではなく、中にツルハシのような物が入っていた。
「とりま…《鑑定》」
宝箱の中身を鑑定した結果、不壊のピッケルという名前で、ブレードとピックの部分が壊れない効果が付与されていた。
「あ、これツルハシじゃなくてピッケルなんだ…へ〜…しかも壊れない効果付き…いいね。貰っとこ。」
降助はピッケルをポーチにしまい、他にも行ける場所もなさそうだったので地上に戻る事にした。
「地上に帰るまでがダンジョン探索、帰り道にも魔物は出るか……」
帰り道に魔物に絡まれながらも地上へ戻った降助は、フライトで人目につかない辺りまで飛んで帰ったのだった。




