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第17話 人を守る術と自分を守る術

「今日は防御魔法を教えようと思っておる。」

「防御魔法…というとシールドみたいな?」

「そうじゃ。今回はそれよりも上位の防御魔法、バリアを習得させる。バリアはシールドよりも強固かつ広範囲を守れるのじゃ。覚えておいて損はなかろう。」

「おぉ…!」

「詠唱は我が壁は如何なる干渉も阻む、じゃ。今回は詠唱した状態で魔法を発動させ強度を確認した後、省略した状態で同じ強度になるように修行をしようと思っておる。」

「いつもと少し違うんですね。早速やってみます。……我が壁は如何なる干渉も阻む。《バリア》!」


魔法を発動すると降助の前に半透明の巨大なドームが生成される。


「おぉ…これがバリア…!」

「…ふむ。《ファイアボール》」

「えっ!?ちょっ…!?」


ジックの放ったファイアボールは降助のバリアに直撃し、ヒビを入れる。


「ほう…想定よりは頑丈じゃのう。」

「ちょ、いきなり何してくるんですか!」

「む?言ったじゃろう?強度を確認すると。」

「だ…だからってそんないきなり……」(ジックさんってなんか…ちょっとズレてんのかな……?)

「おそらくもう少し強度を上げられる筈じゃ。いつも通り何回か詠唱して慣らすんじゃ。」

「わ、分かりました…」


それから数回詠唱してはジックにファイアボールを撃ち込まれるを繰り返し1時間が経とうとしていた。


「我が壁は…如何なる干渉も阻む…!《バリア》!」

「《ファイアボール》」


ジックの放ったファイアボールがバリアに直撃するが傷1つ入る事なくバリアは展開されていた。


「うむ。合格じゃ。」

「や…やった〜…!」

「それでは次は詠唱無しの状態でその強度が出るように修行じゃ。」

「えっ…」

「えっ…て言われてものう。そもそもの趣旨はそこじゃからな?」

「あっ…そうでした……」

「さ、ゆくぞい」

「ひぃ〜……!」


そこから更に詠唱を省略してバリアを展開し、そこにファイアボールを撃ち込むのを繰り返して1時間強が経とうとしていた。


「《バリア》!」

「《ファイアボール》」


ファイアボールを撃ち込まれたバリアは詠唱がある時同様、傷1つない状態で展開されていた。


「ふむ。詠唱がある時と同じ強度が出るようになったの。」

「やった〜…!」

「では次は…《エレメントボール・セブン》」

「へぇっ……?」


7つの属性の初級魔法が一斉に降助のバリアに飛んでいき、凄まじい音を立てて着弾し、土埃を立てる。土埃が晴れると粉々になったバリアと無傷なものの急な出来事に腰を抜かしている降助が現れる。


「…ちとやり過ぎたかの……」

「こ…今度はなんですか!?」

「その状態で更に強度を上げていくぞい。」

「お…鬼ですか…?」

「賢者じゃ。」

「賢者…ああ、確かに魔法を沢山使ってるから賢者と言われればそうですね。」

「いや…別に魔法が沢山使えるからといって賢者というわけでもないんじゃがの……」

「えっ?じゃあどういう…?」

「…コホン。賢者とは何かを極めた者が覚醒するものじゃ。アインは膨大な知識を蓄え、知を極めた知賢(ちけん)、トランはあらゆる食材に精通し、様々な料理法も開発した食を極めた食賢(しょっけん)、コウとボウは長い修行に戦いを繰り返し、武を極めた武賢(ぶけん)でコウは攻撃、ボウは防御に秀でておる。そしてわしは長い間魔法を研究し、独自の魔法もいくつも開発した魔を極めた魔賢(まけん)、ハクは薬学に精通し、様々な薬を生み出した薬を極めた薬賢(やくけん)じゃ。」

「へぇ〜……知らなかった……」

「そういえば誰も言っておらんかったようじゃの。まあ、おぬしにはあまり重要な事では無いと思うがの。とにかく、今日は終わりじゃが今後は詠唱を省略したバリアの強度を上げていく修行になるからの。気を引き締めておくんじゃぞ。」

「…はい!」


季節は秋半ばに移り変わり、降助はジックの魔法修行と並行してボウから自分の身を守る術を学んでいた。


「そもそもの話、しっかりと攻撃を受け止められなければ話にならん。受け流すだのカウンターだのは基礎がしっかりしてからじゃ。様々な方向からくる攻撃をしっかりと防ぐんじゃぞ。」

「はい!」


様々な武器を取っ替え引っ替えするボウの攻撃を降助は片手剣1つで受け止めていく。


(ジックさんからは防御に秀でた武賢だって聞いたけど…全然攻撃もヤバいっ……!)

「ワシも義兄上程ではないが武器の扱いは長けておる。油断していると痛い目に遭うぞい!」

「分かって…ます…よっ!」


降助は真っ直ぐに振り下ろされた両手剣を片手剣で受け止めるがボウは直ぐに両手剣を手放し、降助の懐に潜り込む。


「え……」

「こういった不意打ちにもしっかりと対応して防御せねばならんぞい?」

「ゴフッ……!」


平手から発せられた衝撃波で腹部を押され、そのまま吹っ飛んでいく。


「は、腹……うぷっ……」

「だ、大丈夫かの?そこまで強くしたつもりはないんじゃが……」

「い、いえ…ちょっとお腹弱いみたいで…オエッ……」

「本当に大丈夫かの!?す、少し休憩にしようかの……」

「はい……」


木陰で一休みし、暫くして降助の調子が落ち着いたので修行を再開する事にした。


「では再開して良いかの?」

「はい。お願いします!」

「うむ。では攻撃を受け止める修行を続けるぞい。」

「はい!」


それから2人は武器での打ち合いや素手での組み手を繰り返す。ボウが攻撃しつづけ、降助が防御に徹する。徐々に降助は不意打ちへの対応が上達していた。


「ほっ!」

「くっ…!」

「その調子じゃ!最後まで気を抜くんじゃないぞい!」

「はい!」


それから少しして日が沈み出した頃、ボウは攻撃の手を止める。


「今日はここまでじゃ。」

「はぁ…はぁ…ふぅ。分かりました。」

「しかし随分と成長したものじゃ。そろそろ攻撃を受け流してからのカウンターの修行をしても良いかもしれんの。」

「本当ですか!?」

「うむ。もう攻撃をしっかりと受け止めて防御できておるからの。しかし本当におぬしは学んだ事を吸収していくのが速いのう。」

「まあ、結構勉強は得意なので。それに…ボウさん達と修行しているのも…とても楽しいんです。」

「そうか……そう言われるとワシも嬉しいのう。」


そんな事を話しながら2人は館に帰っていった。

作中の季節は今なんだったかとかあの出来事からどのくらい経ったかとかが頭の中であやふやになりつつある今日この頃ですが頑張って書いていきますので応援よろしくお願いします。

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