第16話 クロススキル
「これ…かな……」
あれから数日、降助はコウの机に仕舞われていた本を眺めていた。
「厚さは…まあまあだな。ちょっと読んでみるか…」
本には手書きで様々な武器のスキルの説明と習得方法が細かく書かれていた。
「うわぁ…ビッチリだ……あ、合掌波も書いてある」
暫く読み進めているとページの間から1枚のメモが落ちていく。
「ん、なんだろうこれ……」
拾い上げた紙にはコウから降助宛に手紙が書かれていた。
「ふむふむ…ま、今はボウさんもいるし必要ないか。」
手紙の内容を確認した降助は紙を本の1番後ろのページに挟む。
「よし、早速やってみるか!」
降助は本を持ってコウと修行した場所へ走っていく。
「まずは…スピアストームかな〜…やり方は…槍を持って高速回転させて竜巻を……できるのか?これ…?」
それから暫くの間、降助は両手で槍を回そうとするが手がもつれて落としてしまったり、回転スピードが足りなかったりと習得は難航していた。
「まぁ…ポンとできたら苦労しないよな……でも、やらなきゃいつまでもできないし。さっさと続きやるか!」
それから暫くして日が沈み始めた頃、ボウは降助を呼びに修行場にやって来ていた。
「おーいダイヤや。そろそろ夕食の時間じゃぞー…」
「《スピアストーム》!《カーブアロー》!《乱飛斬》!《バウンドスピアー》!《インパクトアタック》!」
(ほう……この短期間のうちにここまでスキルを習得するとは……とんでもない才能じゃ。ここにワシの防御やジックの魔法を極めさせれば……ダイヤは最強となるじゃろうな……)
「ふう……あ、ボウさん。どうしたんですか?」
「夕食の時間じゃからの。呼びに来たんじゃ。」
「ああ、わざわざすいません……っと!?」
一息ついて帰ろうとした瞬間、魔法が解けて元の3歳児の体に戻ってしまう。
「あれっ……まりょくはのこってるとおもうんだけどな……」
「…ワシも魔法に詳しいわけではないが魔法は魔力を使うだけでなく魔法陣の構築や維持に気力を使うと聞く。普段より激しい修行な上に一気にいくつもスキルを習得したのならば魔力が残っていようと魔法が切れる事もあるじゃろう。何にせよ、ゆっくり、しっかりと休むんじゃぞ。」
「わかりました!」
数日後、降助はジックと共に修行場に来ていた。
「…今日は元の姿のままなんじゃな。」
「はい。魔法をいっぱい練習しようと思ってるのでマーカイドは最低限にしてます。」
「ふむ…それが良いじゃろうな…そういえばユーリウスは魔法は何が使えたんじゃったかの…?」
「えーっと…攻撃魔法だと…火、水、土、風、雷の初級魔法ですね。それとこの前教えてもらったシールドとヒールですね。」
「成る程の…試しにそこの岩にファイアボールを撃ってみてくれんかの?」
「分かりました。《ファイアボール》!」
降助の放ったファイアボールは岩を少しへこませ、着弾面を焦がしていた。
「今のは…詠唱を省略して発動したのかの?」
「はい。」
「…ふむ。では詠唱を入れて発動してみてくれんかの?…呪文は覚えておるかの…?」
「はい。コホン…輝く火の玉は触れるものを焦がす。《ファイアボール!》」
詠唱して放ったファイアボールは岩に先程よりも格段に大きな傷をつけ、焦げた範囲も広くなっていた。
「ほう……ここまでの差が出るとはの……」
「うわあ……自分でもビックリしてます……」
「ふむ…これは修行中は詠唱は省略すべきじゃの…想定よりは高火力じゃからの。一応呪文は知識として頭に入れてもらおうとは思っておるが。」
「分かりました。」
「そうじゃの……おぬしにはもう少し初級魔法を覚えてもらおうかの。ふーむ……アイスボールとダークボールが良いかのう…」
「アイスボールとダークボール…」
「うむ。それぞれ詠唱は煌めく氷の玉は触れるものを凍させる、渦巻く闇の玉は触れるものを弾く、じゃが省略して撃てるようにするのじゃ。」
「分かりました。」
それからしばらくの間、降助はアイスボールとダークボールを交互に撃っていき、感覚を掴んでいく。
「よし…!《アイスボール》!《ダークボール》!」
降助の放ったアイスボールは岩にいくつかのヒビを入れて砕け、ダークボールは弾けて岩を粉々にした。
「ふむ…中々じゃのう。では…次の修行をするとしようかの。」
「次の修行ですか…!」
「うむ。確か最近は剣やらのスキルをいくつか習得しているそうじゃが……」
「あ、そうですね。他にも弓とか槍とか斧とか…」
「そこでじゃ。武器も魔法も扱えるおぬしにクロススキルを教えようと思っておる。」
「クロス…スキル…」
「そうじゃ。スキルとスキル、スキルと魔法などなど…こうして2つの技能を掛け合わせて発動するのがクロススキルじゃ。それらをいくつか教えようと思う。」
「おぉ…!」
「まずは各属性の魔法をそれぞれ纏わせて放つマジックスラッシュじゃ。試しに火属性のマジックスラッシュ、ファイアスラッシュからにしようかの。」
「ファイアスラッシュですか…!」
「うむ。やり方は簡単じゃ。剣に炎を纏わせるイメージで魔法陣を構築して発動させるんじゃ。ただ、注意するべき点があっての。構築が上手くいかないと炎を纏うどころかそのまま剣を焼きかねん。気を付けて構築するんじゃ。」
「成る程……やってみます。」
木剣に少しずつ魔法陣を構築していき、魔力を少しずつ流す。
「結構…大変だこれ…!」
「ふむ。ちと危ういの。端が少し焦げ始めておるぞ。」
「うわわっ!本当だ…!」
慌てて修正し、遂に炎を纏わせる事に成功する。
「これで…!《ファイアスラッシュ》!」
炎を纏った斬撃は木を切り倒し、断面を焼いていく。
「おぉ…!できた……!」
「うむ。その要領で他の属性もやってみるんじゃ。」
「分かりました!」
-数時間後-
「ぜぇっ…!はぁっ…!しゅ、しゅうとく…できた……!」
「うむ。よく頑張ったの。次は槍に同じように魔法を纏わせるマジックスピアを―」
「いやっ…!もう…!むりです…!!」
「む…そうなのかの?」
「じ、ジックさんって……み、みかけによらずおにきょうかんですね……!」
「そ、そのつもりはなかったんじゃが……すまん……では今日は終わりにしようかの。」
「は、はい……そうしてほしいです……」
すっかりクタクタになり、動けなくなってしまった降助はジックの魔法で浮かせられながら館に帰る事になったのだった。
ふと見る度に評価がぐんぐん伸びてて驚いてます。ありがとうございます。感想等もあればどんどんください。待ってます。あれば。




