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第15話 最後の修行

「さて、おぬしにはこれから実戦形式で修行をつけていく。」

「実戦形式…!」

「まあ、今までの総復習みたいなものかの。復習しつつ、新しいスキルも覚えさせようかと思っての。」

「新しいスキルですか……?」

「うむ。ま、詳細は後々の。」

「そうですか…」

「さ、始めるぞい。」


そう言うとコウは降助に木剣を渡し、自身も木剣を構える。


「では…ゆくぞ!!」

「早っ……!」


数メートル離れた距離を一気に詰めたコウの攻撃をギリギリでガードするが防ぎきれず、後ろに少し飛ばされる。


「うっ……!」

「今のが《スピードステップ》じゃ。まずこれをおぬしには習得してもらおうと思っての。」

「これは……大変そうだ……!」

「さあ、まだまだいくぞい!!」


それから数十分、打ち合いが続くが降助が防戦一方のまま、決着は中々つかなかった。


(ボウさんのおかげで…ガードの仕方は分かるからなんとかなるけど……ッ!攻勢に出れない…!距離を取って飛斬しようとしても弾かれるし、スピードステップで距離を詰められて…!)

「《クイックスラッシュ》」

「うぐっ……!」(この…目にも止まらない攻撃…!1秒間に何回打ち込まれてるんだこれ!?)

「ふむ。ついでにクイックスラッシュも覚えてもらおうかのう。」

「えっ」


それからはひたすらにコウによるスピードステップとクイックスラッシュのコンボが続いた。最初は耐えていた降助も段々と疲れの色が見え始める。


「はぁ…はぁ…はぁ……」

「すっかり息が上がっておるの。」

「ま、まぁ…あれだけ…打ち込まれれば…こうなりますよ……」

「まあただの走り込みと違って集中力もとても使うからの。基礎的な体力はできておるがここら辺も鍛えた方が良いのう。」

「き、休憩とかありますか……?」

「ぶっ倒れて動けなくなったらじゃ。」

「さ、3歳児にやらせる修行じゃないですよ……!」

「見た目はもちっと上じゃし問題なかろうて。」

「人は見た目だけじゃ判断できないですよォー!!」


そこから更に数分間打ち合った後、剣ごとぶっ飛ばされた降助がダウンしたところで休憩となった。


「はぁー……はぁー……い、生きた心地がしない……なんかコウさん急に鬼畜じゃないですか……?」

「…時間が無いからの。長年生きておってもどうにも焦ってしまうんじゃよ。年相応の落ち着きを…とは思うんじゃがな。」

「……。」

「折角じゃしアドバイスしておこうかの。スピードステップは溜めて思い切り地面を蹴って距離を詰めるイメージ、クイックスラッシュはスピードスピアー同様に素早く叩き込むイメージじゃ。後は実戦で掴んでいくだけじゃよ。」

「……分かりました。」


降助は起き上がると木剣を拾い、再び構えの姿勢に入る。


「休憩はもう良いのかの?」

「はい。充分休めました。」

「よろしい。では続きといこうかの。」


再び、激しい打ち合いが始まる。今度は降助も攻めの姿勢に入り、森に木剣同士がぶつかる音が木霊(こだま)する。


(溜めて思い切り…地面を蹴るイメージ…!)

「む」

「そこだ!!」


思い切り踏み込み、勢いよく地面を蹴って木剣を振り(かざ)すが難なく防がれてしまう。


「く……!」

「今のは惜しかったのう。その意気じゃよ。」

「…はい!」


そこから更に打ち合いは続き、遂に…


(今なら…いける!)「《スピードステップ》!!」

「ぬうっ!……見事じゃ。遂にスピードステップ習得じゃの。」

「や、やったー…!」

「さ、次はクイックスラッシュじゃ。気張っていくんじゃぞ!」

「ーーっ……!」


降助から声にならない悲鳴が出た。スピードステップを習得した後も容赦無く続く打ち合いに腕が悲鳴を上げる。


「腕の動きが落ちておるぞ。もっと素早く叩き込むんじゃ。」

「そ、そうは言っても……腕が疲れてきて……!」

「……ま、そうじゃのう。今は習得を目標にしておるからな。休憩としようかの。」

「あ…ありがとうございます……」


そして数分の休憩を挟んだ後、再び修行の続きが始まる。クイックスラッシュを習得する為、上半身だけを動かし、腕の動きに集中しての打ち合いが続いていた。


「目で追えてはおるようじゃが体がついてきておらんのう。もっとキビキビ動かしてみるんじゃ。」

「そう…言われても…無理…です…!」

「おぬしの動きは段々俺に追いつきつつある。この調子でいけば習得できよう。そら、もっといくぞい!」

「うわわっ!?」


コウは更に木剣を振る速度を上げていく。


「ぐ……うおおぉ…!《クイックスラッシュ》!!」

「……見事!」


降助の発動したクイックスラッシュはコウの攻撃を全て防ぎきり、最後の一撃で木剣を弾き飛ばす。


「よくここまで頑張ったの。その歳、その体でようやったものじゃ。」

「はぁ…はぁ…ありがとう…ございます…!」


コウは近くの岩に座り、一息つくと手招きして降助を呼ぶ。


「どうしたんですか?」

「俺に…教えられるのは……ここまでじゃ。」

「コウさん…?」

「おぬしにこれをやろう。」


そう言うとコウは右手に着けていた赤いミサンガを外し、降助に渡す。


「これは……」

「俺からの…贈り物じゃ……受け取っておくれ……それと…俺の机の引き出しに…本が入っておる。まだ…強くなりたいのなら…そこから学ぶのじゃ。きっと…ボウも力になってくれるじゃろう……」

「コウ……さん……」

「ふふ……ちと…生き急いでしもうたかのう。老骨に鞭打ち過ぎたようじゃ。」

「まさか…そんな…!」

「俺ももっとおぬしと共に修行させてやりたかったんじゃがのう。」

「嫌ですよ……!コウさん……!」

「すまない……俺は……ここまで……じゃ……」

「待ってください!まだ、まだ……!」


コウが倒れかけたところで降助が慌てて受け止める。


「コウさん……!コウさんっ……!」


降助はひとしきり泣いた後、ボウを呼びに館へ戻った。


「そん…な…義兄上っ……!」

「……。」

「……いや、泣くのは後じゃの。早く義兄上の墓を建ててやらねば……」

「僕も手伝います。」

「うむ。ありがとう。」


降助はコウの下へボウを案内し、遺体を館まで運び、墓を建てた。


「コウさん…今まで…ありがとうございました…!」

「義兄上…どうか安らかに……」

「……ボウさん。僕、もっと強くなりたいです。だからどうか、これからも修行してください…!」

「ああ。そうじゃの。ところでダイヤよ、そのミサンガは…」

「はい。コウさんから貰いました。……綺麗な色ですね。」

「そうじゃろう。それは義兄上が手作りした物での。…どうか、大切にしてやってくれんかの。」

「勿論です。」


2人は館の中へと戻っていき、コウ達の墓を後にした。

総合評価が30超えててビックリしました。ありがとうございます。これからも頑張って書いていきます。

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