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第11話 修行

「なっ…なんじゃと!?」

「ほ、本気で言っとるのか!?」

「ほんきです!!」


事は数分前に遡る。降助はコウとボウの部屋を訪ねていた。


「あの〜……」

「おや、おぬしがこの部屋に来るなんて珍しいの。」

「どうかしたのかの?」

「じつは…おねがいがあるんです。」

「お願いか…ふむ。良いぞい。どんなお願いかの?」

「ぼくに……たたかいのしゅぎょうをつけてください!!」


そして今に至る。


「……一応理由を聞いておこうかの。」

「ぼくは……ほしいんです。ちからが…まもりたいとおもったものをまもれるちからが…!いままでちからがなくてこうかいしたことがなんかいもあったんです。きのうだってコウさんやハクさんがたすけてくれなかったらどうなってたか…ぼくはもうめいわくもかけたくないしこうかいもしたくないんです!」

「成る程のぅ……」

「義兄上…」

「分かっとる。本気の目じゃ。本気で、真剣に力を欲しておる。しかし昨日の一件でそこまで思い詰めておったか……」

「まあ…おもいつめてるというか…なやんでいるというか…あ、あんまりかわらないかな……」

「気持ちは分かるがのう…おぬしはまだ2歳じゃし、体格も幼すぎる。もう少し時間が―」

「それなら……《マーカイド》」


降助がそう唱えると足元に展開された魔法陣が降助をスキャンするように上がっていき、降助の見た目が5歳ほどまで成長する。


「なっ……!」

「ジックさんに教えてもらった変身魔法です。見た目の変わり具合と時間で魔力の消費量が変わるのであまり長時間はできないんですけど―」

「おおおお、おぬしいつの間に魔法なんぞ覚えたんじゃ!?」

「ジック!ジックを連れてくるんじゃ!!」

「あ……呼んだかの?」

「「「うわあビックリした!!」」」

「たまたま近くを通っただけなんじゃが……それで…何か用かの……?」

「おぬしダイヤに魔法を教えたのかの!?」

「あっ…えっと…その…ユーリウスが…とても…真剣じゃったから…つい…」

「………はあ……それなら仕方ないの。まあラギの思いは伝わったしの。早速今日から修行をつけてやるわい。」

「…!ありがとうございます!!」


そんなこんなで降助、コウ、ボウは盗賊達がいた森の中の開けた場所に来ていた。


「組み手とかに使えるくらいには広いしここで良いじゃろ。」

「押忍!」(む。魔法で成長した姿に変身したおかげで上手く言葉も話せるようになってるな。あ、そうだ。普段も喋る時だけ喉とか舌とかにこの魔法使っとけば良いのでは?)

「まずは基本的な体の動かし方からじゃの。武器の類の扱いはそれからじゃ。」

「分かりました!」

「しかし…まあ…随分と…華奢じゃの。」

「男…じゃよな。傍から見たら女なんじゃが…」

「えっそんなに……?」

「あっちに川があるし見てきたらどうじゃ?」

「そうしてきます…」


早速川を覗き込んだ降助は目を疑った。そこに居たのはふんわりショートの黒髪に白いメッシュが混じっており、長めのまつ毛に綺麗な青色の瞳の人物が映っており、ほぼ女だった。


「うわ……本当に見た目女だ……俺男なのに…つまり…I am 男の娘と……。っていうか俺髪の毛に白混ざってたの……?何気に今気付いた…この世界で2年も生きて今気付いたよ……」


降助は驚きで混乱しつつも川からまた開けた場所へと戻っていく。


「も、戻りました……僕って白い髪あったんですね……」

「え?おぬし今気付いたのかの?」

「言われなかったので……」

「知ってると思っとったから……」

「……」

「と、とにかく修行開始じゃ。まずワシになんでも良いから攻撃してみるんじゃ。全部防ぐから気にせんで良いぞい。」

「わ、分かりました……てやああぁぁ!!」


降助はボウに向かって走り出し、パンチやキックを繰り出すが全て躱されていく。


「どうしたんじゃ?遠慮せんで良いのじゃぞ?」

「いや…遠慮というか…割と全力の部類なんですけど……!」

「分かった。ではワシは一歩も動かん。一撃でも入れられるかの?」

「それなら…!おりゃああぁぁ!!」


降助は続けてパンチやキックを繰り出すが全て腕でガードされる。


「ぜぇ…はぁ…つ、疲れた……」

「これは体力面も要強化じゃの…じゃがそれはそれとして。ダイヤよ、おぬしは一直線な動きばかりで変化が無いし動きのキレも無い。なんの経験も無い子供なら当然といえば当然じゃが精々同年代との喧嘩でトントンくらいじゃ。じゃがおぬしが目指すところはそんなものではないのじゃろう?」

「そうです。もっと…もっと強くなりたいです!」

「そうじゃろう。ならまずは基礎体力じゃ。走り込みに瞬発力を上げる特訓。これを基本に進めていこうかの。」

「はい!」

「それじゃあまずここから麓の町まで往復じゃ。」

「な、成る程……」

「ちなみに2往復で1セット、これを5回じゃ。」

「えっ……それってつまり10回往復するって事ですか……?」

「そうじゃ。」

「に、2歳児にやらせる修行ですかこれ!?」

「強くなりたいんじゃろ?」

「……分かりました!走ってきますよ!!」

「うむ。道中気を付けての。」

「はい!」


そして降助は麓に向かって走り出した。5セット終える頃には日は傾き始めていた。


「はあっ……!はぁっ……!し、死ぬ……!」

「お疲れ様じゃ。これを繰り返して体力をつけていくぞい。」

「は、はひいいぃぃ……」


降助が地面に仰向けに倒れると風船から空気が抜けていくように体が元に戻っていく。


「あ…まりょくつきちゃった……」

「ふむ……昼頃から魔法を発動して夕方になるまで続くとは…どうやら魔力量は相当なもののようじゃの……」

「そうなんですか……?」

「うむ。まあジックはその数倍は保てるんじゃが…それはさておき年齢の割には膨大な魔力量じゃ。」

「まあ…しゅぎょうもたくさんできていいんじゃないですかね……?」

「そうじゃの。では今日のところは終わりにして帰るとするかの。」

「はーい……」


降助はクタクタになりながらコウとハクと共に館に帰っていった。館に着いて中に入るとハクとジックが夕食の支度をしていた。


「あれ…トランさんは?」

「トランは…少し調子が悪いようでの。今は休んでおる。」

「……。」(まさか…な。)

「さ、もうじき出来上がる。手を洗って座って待ってるんじゃ。」

「……はい。」


そうして待っていると料理が運ばれ、いつも通り一緒にいただきますをして食べ始める。コウとジックは降助の魔力量の話をしていたり、ハクとボウは料理の味の話をしていたが降助は頭の中に嫌な予感が残り続け、何も言わないまま夕食を食べ終えて風呂に入り、眠りについた。

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