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第103話 地下探索 2

階段を下り続けること数十分。代わり映えしない景色は、一行の精神を少しずつすり減らしていた。特に、降助は一歩進む度に脂汗が額から滲んでいた。


「…辛いなら帰っても良いんだよ。」

「大丈夫です。まだ行けます…!」(…とは言ったものの、先に進む度に嫌な感覚がどんどん強くなっていく……本当にここには何があるんだろう……)

「チッ…にしても、どんだけ続いてんだよこの階段……」

「少し疲れてきてしまいました…」

「ワタシは正直飽きたわ。」

「なんかこう、変化が欲しいよなー。もっと魔物が湧いてくるとか、トラップが仕掛けられてるとか!」

「そんな危ねえ変化は求めてねえっての。」

「1階の複雑さに対して、下り一直線の階段の設計なんて、少し不思議ですね。」

「ちょっと俺先に見てくるよ。というか、そもそも俺偵察担当で来てるからね!!」


シグルドはスキー板の様に伸ばした氷を足に生成し、凄い勢いで階段を下っていく。


「学園長ー!気を付けてくださいねー!」

「大丈夫よーん!………って、うわああぁぁっ!!」


降助の忠告に返事をしたすぐ後に、シグルドの悲鳴と何かに激突する音が階段に響く。


「何をやっているんだあいつは……」

「大丈夫ですか!?シグルドさーん!!」


慌てて階段を下りるナイザーに続いて皆も駆け足で階段を下りていくと、額を押さえて悶絶するシグルドと、輝く魔法陣が刻まれた扉を見つける。


「《ヒール》」

「ふう……ありがとうナイザー君……あー、マジで痛かった……」

「この扉の魔法陣…何かの封印か?ナイザー、解除できるか?」

「調べてみます。念の為、離れていてください。」


ナイザーが魔法陣を調べ始め、彼以外は数歩下がって各々階段に腰掛けながら待っていた。それから少しして結果が出る。


「ひと通り終わりましたが、結論から言うと解除は不可能です。」

「不可能…難しいとかではなく、不可能なんだな?」

「はい。魔法陣自体はシンプルな封印の魔法です。と言っても、何百、何千と重ねられ複雑化しているのですが…まあ、それだけなら魔導士団総出で作業すれば解除は可能です。ただ……推測にはなりますが、魔法陣を構築しているのが魔力ではなく、マナです。」

「マナだと!?」

「?なあ、魔力とマナだとなんか違うのかよ?」

「確かに、オレも知りてえ!」


驚くバルツの横からユートが質問を投げかけ、ムルクスも同意し、ナイザーが質問に答える。


「…基本的に一部スキルは気、魔法は全て魔力を消費して発動します。そしてマナとはそれらを複合させたもので、マナを使って発動するスキルや魔法は圧倒的に威力が上昇するんです。ただ、このマナは何千年も前に失われたもので、詳しい事はあまり分かっていないのですが、気や魔力など今のエネルギーとは相性が悪いのだとか……」

「私も噂程度しか知らなかったが、そんな性質があったとは……となると、これ以上の調査は不可能か……」


ふと、シグルドが「あのー」と手を挙げる。


「?どうかしたのか?」

「マナなら彼がなんとかできると思いまーす」


そう言ってシグルドはもう一方の手で降助を指差し、驚いたバルツとナイザーが詰め寄る。


「なんだと!?」

「い、一体どうやって!?」

「ま、まあ確かに俺はマナ使えますけど……それと魔法陣が解除できるかは別問題ですよ?」

「えええぇぇぇ!?つつつ、使えるんですか!?マナを!?どどどど、どうして!?」

「実は…このイフラさんがマナを使えるようにしてくれた師匠なんです。」

「師匠でーす。」

「うええぇぇ!?も、もう何がなんだか分かりません!やっぱりあなたが魔導士団団長やってください!!」

「お断りしますよ!?」

「…で、ヴィア殿。解除はできるのか?」

「う〜ん……やってみないとなんとも…?」

「僕は反対するよ。君の意思を尊重してここまで行かせてあげたけど、この先ばかりは駄目だよ。」

「いや、開けさせてもらう。ヴィア殿、解除を。」


バルツがイフラの前に立ち、圧をかけ始めるが、イフラは臆することなく封印を解除することを拒む。


「駄目だ。君達は魔王軍をどうにかしたい筈だ。余計な相手を増やすべきじゃない。」

「その魔王軍をどうにかする為、ここを調査しておく必要がある。そも、最初に私の指示に従う事を条件に君の同行を許可した。従えないのなら帰ってもらう。」

「僕に勝てないのにかい?」

「それでもだ。ヴィア殿、封印の解除を。」

「許可できない。」

「君の許可は求めていない。解除を!」

「駄目だ!」

「解除するんだ!」

「駄目─」

「俺は!!」


降助が割って入り、2人の言い合いは中断される。


「俺は、あんな化け物が湧いて出てきたここを放置するわけにはいきません。ごめんなさい。」

「…ッ。たかだか魔物だろう?そこまで執着する必要は……」

「魔物?いいや、あれは化け物ですよ!マナでできた、スライムの様な人型の、明確な敵意を持った何かなんて!」


そう言った直後イフラの顔色が変わり、冷や汗が流れる。


「──待った、マナでできた…スライムの様な人型の化け物……?」

「はい…そうですけど……」

「野良の魔物かと思ったらそれか…!じゃあ話は別だ!すぐに封印を解く!!」

「えっ?えっ!?」


イフラが手をかざすと魔法陣が素早く消失していき、全てなくなったところで扉を蹴って勢い良く開ける。扉の先は今までと違って石のブロックなどで舗装されておらず、地面が剥き出しのまるで洞穴の様な空間になっていた。


「ここは…!?」

「ッ!」


部屋に入るなり、イフラは急いで空間の中心に駆け寄る。中心には地面に倒れている骸骨と、その倒れている骸骨に酷く錆びついた剣を突き立てている骸骨がいた。


「特に異常は無し…か。となると、一体…?」

「あの、イフラさん。その骸骨は一体…何か知っているんですか?」

「そうだね…それは少し…長い話になるよ。」


そう言ってイフラは降助の方へ向き直る。

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