後 上
恐らく隣の部屋や監視カメラで状況を見ていた同僚達が歓喜しているだろう。
正直俺も嬉しい筈なのだが、その犯人がよりにもよって親しくしていた隣人だった事が本当にショックだった。
俺は密かに隣人の無実の証拠を探していた。
だけど調べれば調べる程、隣人が犯人だと言う疑惑が深まるだけだった。どうしても隣人を疑いたくなかったけど隣人が通り魔の犯人だと思うしかなかった。
しかも何で巧妙に我々の眼を掻い潜ったのか俺の個人調査で発覚した。
隣人の年子の弟がウチの署の新人刑事で、此奴経由で事件の調査を話していたのだ。
隣人が祖父母の家に養子になっていたから新人の苗字が違っていたから発覚しなかったのだ。
しかもこの新人、何で刑事になったんだと頭を抱えたくなる程大馬鹿で、隣人の事を見下す為に自分がこの事件でどれだけ活躍しているのか自慢する為に調査の内容を話していた事を白状した。
それと被害者の罪状と居場所もこの馬鹿経由で入手していた事も分かった。(勿論この馬鹿は発覚後自宅謹慎、事件が片付けられた後は懲戒免職処分が確定だ)
此処で隣人が祖父母の和菓子屋を継ぐ為に養子になり、後を継ぐ為だけに修行と言う名の虐待を受けていた事が発覚した。
しかも両親も兄弟達もその事を知っていながら、祖父母からの多額の仕送りを貰う為に黙認していたのだ。
如何やら給料も今いるアパートの家賃や必要最低限の生活で精一杯の額しか渡されず、殆ど無休でしか朝早くから夜遅くまで祖父母達に扱き使われていた。
和菓子屋の従業員達もあまりにも隣人の待遇が悪すぎて俺達が事情聴取する時に泣きながら隣人の待遇の事を我々に訴えていた。
その話を聞いてベテランの刑事の一人が『これじゃあ人殴りたくなるわな』と思わず呟いてしまう程だ。