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 隣人は甘い物が大好きだ。

 それもケーキとかの洋菓子ではなく、餡子がたっぷり饅頭とかの和菓子が大好きな様だ。


 何せ隣人の顔と顔を会わせる度に羊羹を口に咥えて食べている。勿論切って食べているのではなくて塊の状態で食べているのだ。

『そのうち糖尿病で死にますよ?』と苦言を呈した事があるが『その他を節制しているから大丈夫』とけんもほろろだった。


 まぁ本人の言う通り他の食生活に関して一般的な一人暮らしの男性にしては栄養バランスが学校の給食の様にキチンとしていたから(二回程ご飯を作って貰った事があった)もうしばらくは大丈夫だろう。


 隣人は詳しくは教えて貰えなかったが、身体と頭を使う仕事をしていて糖分補給が大量に欲する仕事で、だから昔っから甘い物が好きになったと語っていた。

 その仕事は不規則な仕事の様で一週間家にいたと思ったら一ヶ月位部屋を開ける事もあった。帰って来た時は隣人の顎には無精ヒゲが生え、髪もボサボサだった。着崩れしたスーツを着ていたから激務の会社勤め、恐らくIT系の仕事をしているのかもしれない。


 ボロボロの姿を見てちょっと可哀想だなぁと同情した自分は仕事で売れ残った和菓子をお裾分けしていたら少しずつ立ち話をする様になった。

 最近の話はもっぱら()()()()()についてだ。




 ここ近辺で連続傷害事件が発生している。

 老若男女問わず襲われ最初の事件発生から五ヶ月の間に、何と十八人もの人達が病院送りとなっている。無差別の通り魔として警察は最初は捜査していたが、被害者達には()()()があった。


 それは大なり小なり()()()()()()()者達が襲われたのだ。


(言い方が悪いが)小さい方で万引きやカツアゲ、一番重い罪では殺人未遂だ。勿論被害者達は退院後逮捕された。

 どうやって被害者達の罪を犯人は知ったのか警察は捜査しているが、難航している。

 自分も何度かお巡りさんから持ち物を検査されていた事がある。まぁ必要最低限の持ち物とオヤツ用の羊羹しか持ってないから直ぐに解放されるけど。


 警察が通り魔に手こずっている間、マスコミやネットでは彼等の対応を批難するコメントが多く、逆に通り魔の事を『正義のダークヒーロー』と持て囃す一部のネット民が現れ始めた。

 此れには流石の自分も不愉快だった。



「結局の所やっている事は油断している無抵抗の人間を死角から殴る卑怯者じゃないですか」

「へー意外だねぇ。君は肯定派だと思っていたけど」

「警察に言えば逮捕される案件ばかりなのに、通報しないで殴るのは同じ穴の狢ですよ」

「言うね~」




 最近の楽しみになっていた隣人との軽い立ち話で、自分の憤りを語る。


「まぁそれでも最近は物騒だし、君も防犯はしっかりひた方が良いよ? このオンボロアパートは家賃が安い分、治安は此処らでは悪い方だし。君も仕込みで毎日日付を超えているんだろ?」

「早朝の仕込みは他の人が代わりにやっていますから、最初の頃と比べたら楽な方ですよ。……そう言えば通り魔ってどうやって被害者達の罪状を知ったんでしょうかね? 実は自分の年子の弟が刑事をやってまして、彼に聞いても中々話して貰えなくて」

「まー警察は守秘義務があるからね。犯人独自のルートでもあるのかね。と言うか、君弟さんいたの?」

「自分だけは祖父母の老舗和菓子屋の跡を継ぐ為に祖父母の家に暮らしてますが、下に弟妹が何人かいますよ。……あっ、そろそろ行かないと祖父に折檻される」


 隣人に別れの挨拶をして仕事場に向かおうとした時に、背後から隣人が言う。


「大家さんとこの焼却炉、遂に行政から指導が入って使えなくなったってさ!」

「え〜マジですか」



 このオンボロアパートを経営している大家の偏屈なおばあさんは、庭に昭和の学校にある様な焼却炉がある。しかも現役だ。

 毎日の様に使うからコッソリと自分のゴミも入れて燃やしていたが、やっぱりアレは違法だったみたいだ。此処は柄が悪い人しかいないから、気にしない人ばかりだと思っていたのに遂にお役所にバレたか。 

 自分が良く使っていた事も知っていたから隣人が気を遣って報告してくれたんだろう。


 あ〜あ。アレ便利だったのになー。また何処か探さなきゃ。


 そう心の中で愚痴りながら、朝御飯代わりの羊羹を口に頬張って走った。






















 そして自分は()()()()()()()()()()


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