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19 サトルの賭け

ブクマ 「1」いただきました。評価まで、いただきました! ありがとうございます。

「ボクはまだ投稿してもいいんだ。こんなに嬉しいことはない。わかってくれるよね? ラ〇ァにはいつでも会いにいけるから……」

 そんな、ア〇ロの気分です。

仕事の都合で更新時間がマチマチになりますが、どうか、更新を見つけてください。。。

「いったんイルミネーター、いや俺もマサメさんと呼んでいいかな?」

 山村刑事の言葉をスラリンガンが伝えると、マサメは笑顔でこたえた。

「もちろん。ヤマムラ、あんた、もう私の仲間だ」

「ありがとう。ではいったんマサメさんが未来人であると信じることにする。それで? 三ノ輪さん、それが我々の家族を救うこととどうつながるんだ?」

「はい……」

 ノロノロとした動きで立ちあがるボク。

「サトル! 早く説明しろ!」

「どうやって家族を助けるの? 悟!」

 鬼の形相をうかべるマサメと美晴。すいませんね、ボクは適当で優柔不断なもので。

「ええ……マサメの望みは話した通りです。しかし世界各国の最先端の科学者なんて簡単には見つけられないし、アポを取るなんてボクらには不可能です」

「だろうな」

 山村刑事がつぶやく。

「そしてボクらの願いは家族を守ること。脅しをかけてきているのが日本政府である以上、なにをしたって封殺され、大手メディアは偏向報道を流すでしょう」

「どうにもできないってこと!?」

 叫ぶ美晴。

「いや……こうなったら世論を味方につける」

「世論? どうやって?」

 腕組みしてボクをにらむ山村刑事。

「マサメをふくむボクら全員が顔だしして()()()()()とか、ディングドング、ニカニカ動画なんかの投稿動画サイトに生出演する。そして現状をうったえる。ネットでゲリラ放送をするんです!」

「……はぁ?」

 目をまるくしている一同。

「こういういい方はマサメをエサにするみたいで嫌なんだけど、イルミネーターはまだ、世間に強いインパクトを残している。青森で子どもから、ヒーローショーを見ているみたいなノリで声援されただろ? マサメ」

「まあ……そうだったな」

「クエッションマークつきでイルミネーター生出演?の告知をして生放送すれば、世界中のネット民が食いつく。嫌でも世間の注目を集めるに違いない!」

「…………」

 誰もなにもいってくれない。どっかりと河岸の流木に腰をおろしたボクはひとりうきあがっていた。

「スラリンガン! ボクらの家族の名前が印刷されたチラシを持ってたよね?」

「ああ、はい。記念に一枚」

「それも使おう。すべて実名を公表する! 一般市民が政府や米軍に人質にされていることを世界中にさらしてやるんだ。ボクの母さんや美晴、刑事さんの家族が不自然な死に方をしたら誰もが疑惑を持つようにもっていく! 絶対させないようにもっていくんだ! そんな動画をネットで配信してやるんだ!」

 やはり、みなさん無言である。ひとり熱くなっているボクは、笑いがとれずにスルーされる大喜利コーナーの落語家のようであった。

「……その作戦での私の役割は広告塔だけなのか? サトル」

 ようやくマサメが重い口を開いてくれた。

「違うよ、マサメ。マサメは百年後の未来で、マサメの仲間や家族がどんなにひどい目にあったのかをキチンと語るんだ。ネット民てのは世界中にいる、みんなが見てくれるぞ。それに注目の人間兵器、イルミネーターが実は死んでいないことはアメリカはもちろん、ロシアや中国みたいな大国から小国まで全世界の首脳陣や研究者には駄々(だだ)もれなんだ」

 有能な同時通訳者スラリンガンは、ミノウタス語で話すボクとマサメの会話を日本語で即座に伝えてくれる。どこの国にやとわれたのかは不明だが、ボクとマサメが傭兵連合国軍に襲われたことを知らない山村刑事がつぶやく。

「駄々もれ? そうなのか?」

「日本はスパイ天国なんだそうです」

「……なるほど」

「サトル、だからなんだ?」

 話の腰を折られたマサメが音を鳴らし、川砂利で足ぶみしている。

「わからないか、マサメ? 心ある科学者や、世界最高峰の天文学者だってボクらの動画を見てくれる可能性は十分にあるんだよ!」

「そうか! 私は涙ながらに未来の地球の惨状をうったえればいいんだな?」

「そうだ!」

「スラリンガン!」

「はい、なんです? マンサメリケス」

「目薬、用意しといてな」

「買っておきましょう」

 笑顔のスラリンガン。 

「マサメ、これは賭け(ギャンブル)だが、それしかないとボクは思う。今までみたいな正攻法じゃ、たぶん無理だよ。たとえば山村刑事さんは……」

「うん? 俺?」

「刑事さんは、生死をともにしたことでマサメを人間、仲間だと認めてイルミネーターではなくマサメと呼んでくれるようになったんですよね?」

「そうかもな」

 マサメがうなずく。そして山村刑事も。

「ネット動画は全世界に拡散するんだよ! マサメと呼んでくれる人が世界中にあふれれば、誰もマサメを拘束できなくなる! 人権団体だって黙っていない! マサメを現代の人間兵器としてではなく、未来の進化した女性だとしてあつかわざるを得なくなるんだ!」

「そこでやっとか……そうまでしないと未来からきた女だと認めてもらえないのか……しんどいな、サトル」

「うん、しんどいよ。けど、やるしかない」

「うん……でもサトルさ、実は私、腹がいっぱいで眠たいんだ。少し、寝てもいいか?」

「いや、マサメ、ちょっとまて!」

「あとはサトルにまかせる。それでいいな?」

「いいよ、けどさ」

「そうか。ありがとな」

「でも、さっき美晴がいったことは──」

 信じるな。全部が全部、嘘ではないけど、誇張も多分に混じっているから……と、ミノウタス語でマサメにいいたかったのだが、彼女はすでにボクの太ももの上で寝息をたてていた。まあ……いいか。

「マサメさん、悟のやさしさをいい意味で誤解しているみたいね。曲解かな?」

 いらんことをいいだす美晴。マサメが寝てくれてよかった。

「三ノ輪さん、いいたいことはわかった」

 山村刑事であった。

「はい」

「逆にすべてを世間に公表することで、俺たちの家族が一般人の標的にされる、よくあるネットでのアンチというのか? SNSなんかで誹謗中傷の対象にされる可能性はないだろうか? 自殺に追いこまれるなんてことはないだろうか?」

「……大いにあります。だから正攻法ではなく、賭けだといいました」

「リスクが高すぎる。それでも、やる気か? 三ノ輪さん」

「ほかに方法があるのなら教えてくださいよ」

「…………」

 くやしそうにうつむく山村刑事。

「……時間がないわ。今、こうしている間にも私の家族が拉致されているかもしれない!」

 美晴が涙目を山村刑事へと向けた。

「──わかった。とっぴょうしもない計画だが、その賭けに乗ろう。三ノ輪さん、どうすればいい?」

「……そこなんですよね」

 ボクの熱さが一気に下降し、氷点下まで落ちこんでいく。

「なんだよ?」

「ボク、サイトの投稿動画なんて見る専門で……」

「まさか! 投稿のやり方とか、事前告知の方法を知らないのか?」

「はい。刑事さん、実はネットやサイバー犯罪とかにくわしかったりしないですか?」

 でかくてゴツイ、元オリンピック柔道選手の現役刑事にたずねるボク。

「くわしく見えるか?」

「いえ……まあ、はい。どうなんでしょう?」

「見ての通りだよ。どうするんだ! 今の時間は、いったいなんだったんだ!」

 ボクの首ねっこをつかんで、わしわしとゆさぶる山村刑事。いや、あんたも少しは考えてよ! 

「ねぇ、スラリンガンさん」

 美晴がスラリンガンへ目を向けた。

「なんでしょう?」

「富士の樹海へいく方法はないかしら?」

「どうしてまた、樹海へ?」

「私の彼がいるから」

「はあ、それはどうでしょう? みなさんが承服しますかどうか?」

「するわけないだろ!」

 ボクと山村刑事が同時に叫んだ。ボクのひざまくらで寝ていたマサメが小さく、うるせぇなとつぶやく。

「でも私の彼って、そこそこ食べられるくらいには再生数と登録者数、広告費をかせいでいる()()()()()()なんだけど……」

 まさかの救世主出現! ボクと山村刑事は神々しく輝く美晴のドヤ顔に、ひれ伏さんばかりに手をあわせた! 

 スラリンガンは岸辺に倒れこんで、腹をかかえて笑いころげていたけどね。

                            (つづく)

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当サイトにて、三作品を公開中です。あわせてお読みいただければ幸いでございます。


『ゴースト・キス ~死人しびとの口吸い~ (改)』 

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