テイフスフラフ・ペフ・フッフルカ
「それと――アディラ嬢の呪いを受けてもらう」
陛下は震えているハミルトン侯爵を一瞥し、そう言った。
やっと、仕返しできるわ。
黒魔術の一種、「呪い」は、相手が不幸になりやすくなるという物。
ハミルトン侯爵家を許せないから――これをさせてほしいと懇願したわ。
そして今日、それができる!!
「はあ!? 馬鹿言ってんじゃないわよ!! やっぱりあなたは悪――」
「テイフスフラフ・ペフ・ハウユベック」
黒魔術により黙らされたレイラ様は、口をパクパクさせ、両手を握りしめている。
私に抗議している感じかしら?
抗議しても、無駄よ。
国王陛下がついているから。
まあ……レイラ様には分からないだろうけど、ウィルソン様が従えば、彼女も従うでしょうね。
「呪い」というフレーズに、ただならぬものを感じ静まり返った玉座の間で――ウィルソン様にそっくりのハミルトン侯爵が挙手した。
「陛下。黒魔術の『呪い』とはどういう物で……?」
陛下はそれを聞くと、何食わぬ顔で答えた。
「『呪い』は、呪わせた相手が不幸になりやすくなるというものだ」
「っ!」
一瞬にして、ハミルトン侯爵の顔が青ざめる。
どういう想像をしたのかしら?
爵位剥奪、強盗が入る……とかかしら。
まあ、ありえますわ。
「それでは――テイフスフラフ・ペフ・フッフルカ」
***
「あーもうなんなのよ!! ルドルフは悪魔の事を信用するし!! きっとこの国滅びてしまうわ!」
……なら、このあたしが王になればいい?
でも、衛兵を従わせられなかった……。
「うがあっ!! クズルドルフ!! 馬鹿国王! 悪魔なんか信用しやがって!!」
「――それは国王への侮辱罪と認識していいのでしょうか?」
あたしの独り言を――アディラが聞いていた。
あたし達の絶望は、ここが始まりだった……。