『書籍化打診のお知らせ』
「えっ! ウソでしょっ?」
見間違いかと思い、ごしごしと目をこする。目をつぶったまま、ふかーく深呼吸。すー……はー……すー……はー。
深呼吸をしても、心臓のばくばくがぜんっぜんおさまらないっ!
夢じゃないはず、幻じゃないはずと思いながら意を決してまぶたを開く。
「消えて無いっ! ついに認められたっ!」
画面には『書籍化打診のお知らせ』と書いてある。どどどどうしよう? あ、ま、まずはスクショ! スクショ撮ろう、あとデジカメでも撮らなきゃ。あーうー、手振れ補正でもブレブレな写真しかとれない。
「ランキングのやつらより面白い話書けてたはずだもん。きちんと完結させたし」
すこしだけ興奮がおさまった所でメールを開く。うっそ! 『黄昏出版』だって! ファンタジーラノベの超大手じゃないかっ。なになに、書籍化を進めるための打ち合わせをする日時を決めましょうって話か。今度の土日となんだったら有給使って時間作れますっと。返信返信。
「……これで作家の仲間入り……」
「また釣れた。『ここ』を狩り場に選んだ『私』天才じゃないかな」
今日だけで11人もだよ。
今度の『謝肉祭』への納品は10人でよかったはず。ふふ、1人余るね。
最後の子がいいかなあそうだそうしよう椅子にがっちりしばりつけて指を1本1本ブヅンッブヅンッて切り落としてわざとくっちゃくっちゃ音を立てながら「もう小説書けないねえ?」って聞いたらどんな声で鳴くんだろうぅもうあふれてしまいそう。
「お腹減ったな、まかないのモツ煮もらってこよう」