犬視線 壱
犬の気持ち
僕は犬だ。
いわゆる飼い犬と呼ばれるものである。
僕の飼い主さんは、ヤクザと呼ばれる人種である。
なぜこのひとり語りをしているのかと言うと、飼い主さんがおかしいのだ。
僕の飼い主さんは元気がない。
この前までは、笑顔でいてくれたのに…
好きだ。
…飼い主さんのことが大好きなんだ。
飼い主さんは、最近朝どこかに出かけて行って疲れて帰ってくる。
この前までは昼まで一緒だったのに、夜も遅く帰ってくる。
僕が見つけると、顔が引きつるんだ。
なんでなんだろう。
僕が何かしたのだろうか。
僕には何も出来ない。
でも飼い主さんは僕を撫でてくれる。
ひきつった笑顔で僕になにも知らせないように…
僕にはわかるのに…。
次の日のまた、次の日も。
それは変わることは、無かった。
疲れてるんでしょ?
僕が癒してあげたいのに。
僕にはそんなにも信用がないのだろうか。
また数日が経ったけど、飼い主さんの笑顔はひきつったままだ。
あいかわらず僕は飼い主さんを癒せていない。
僕には何も出来ない。
ぼくは、何にもできないんだ。
耳が垂れる。
しっぽがうなだれる。
かいぬしさん…僕はいらない子です。
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次の晩、僕は家を出た。
飼い主さんを笑顔にできないぼくなんて…もうイラナイでしょ?
ヤクザ目線書きます