妹との誓い
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「苺ちょっと駅前まで出かけてくるな」
「うん、いってらっしゃい」
外に出た俺はまず空を見上げ、やはりと確信した。
『アルカディアの明日』の空には一つ大きな特徴がある。月と太陽がいつでも同じ空にしかも同時に浮かんでいるのだ。
しかし不思議なことに昼には明るいし、夜には暗い。これはユーザー間で7不思議の一つとして数えられていた。残りは後々語るとしてだ。
「ここはやっぱり『アルカディアの明日』の世界で間違えはないみたいだな。ということは魔法も使えるんじゃないか......?」
『アルカディアの明日』には最大の特徴があり、文字をやるだけのいわゆるノベルゲーと違い魔法を用いた探索パートが存在した。
親友枠であった悠馬は序盤から終盤までお助けキャラとしてそこそこ強かった。
俺は目を瞑り『アルカディアの明日』でみた魔法の唱え方の説明文を思い出し、同じように魔力を集め魔法を空に向けて放つ。高位の魔法以外は基本的に詠唱を必要とせず、魔法名とそれに紐づいたイメージをするだけで発動できるというのが『アルカディアの明日』における魔法の特徴だ。
例えば炎であればキャンプファイヤーを連想し、それの温度を高めたければ青い炎をイメージする。
【アイス】
『アルカディアの明日』における最低級氷魔法だ。
作中の雄馬はよく氷魔法を使っていた記憶がある。
体から少しだけ力が抜ける感覚がする。
すぐに雹ぐらいの氷塊が地面落ちる音がしないので俺は少し焦った。イメージしたものは雹ぐらいの氷塊だったからだ。
「もしかしてゲームと違ってイメージと魔法名を言うだけじゃ発動しないのか?」
そんなことをニヤニヤしながら呟いてふと上を見上げた俺は驚愕した。
頭上には期待していた雹ぐらいの氷塊はなく、自分の家と同じぐらいもしくはそれより大きい氷塊が浮かんでいたのだ。
俺は正直焦った。これが家に落ちると考えると流石に我が家はただでは済まないだろう。
とそんなことをぼーっと考えていると家からカチャっと音がして苺が出てくる。
「お兄ちゃん何遊んでるの......?」
「苺?今は危ないから出てこない方がいいぞ?」
「お兄ちゃん危ないのは私じゃなくて私達の家ですよ?それに忘れたんですか?私がああいうの溶かすのが得意なこと」
ハッと俺は思い出す。
苺は探索パートで確か強力な炎の魔法を使っていたはずということを。
「お兄ちゃん終わったよ」
そんな苺の声を聞いて空を再び見上げた俺は驚いた。綺麗に氷が溶かされ、なおかつ水が周りに落ちないように炎で蒸発させるという高度なことまでやってのけていたのだ。
「苺、お前こんなことできるようになってんたんだな......。お兄ちゃん感動だよ」
「お兄ちゃんこそ忘れたの?私達は元々皆に怖がられないようにこの魔法の力を使わないように日常生活をするようにしてたこと。無闇矢鱈に力を使わず信頼できる人にしか力を見せないっていう誓いもお兄ちゃんが作ったんだよね?」
「あ、あぁそういえばそうだったな。ごめんなこんなところで誓いを破って魔法使ってしまって」
「大丈夫だよ!私が居る限り、お兄ちゃんの氷魔法が何かミスをしてもケアできる。お兄ちゃんが居る限り、私の炎魔法が何かミスしてもケアできる。そうでしょ?」
俺はそんなことを言っている苺の頭を撫でた。何故だろう?無性にその言葉を聞いて悲しい気持ちになってしまったのは。もしかしたら俺の中に本来の朝霧悠馬の心が残っているのかもしれない。
そういえば苺は雄のパーティで探索してた時は確かそこまで高位の魔法を使っていなかった。もしかして彼女は律儀に兄との誓いを守り続けていたのか?
これでもう一つ俺は思い出した。苺のルートは何かをずっと躊躇ったり悩んでいるような節があり、選択肢一つを間違えただけでバットエンドに進む様な激ムズルートだった。
なるほど。公表されてなかっただけで兄との関係や誓いについて悩んでたのか。
初めから書いておけと開発陣に思わなくもないがユーザーの考察を楽しみに見てたということなのかもしれない。
「あっじゃあ俺、駅前行ってくるな」
「うん、外で魔法を使ったらダメだよ」
と苺は少しだけ嬉しそうに俺にそう言って家の中に戻っていった。
あれ?そういえば苺のキャラが朝と違う気がするな。そんなことを思いながら俺は他のヒロインのヒントを得る為駅前に向かった。
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