学院への入学試験
2回目!頑張りますよ〜
アンはあの後苺やリスタにきちんと説明をしたが苺やリスタも薄々俺に送った指輪や普段着てくる服等で薄々わかっていたらしく大して驚いていなかった。ちょっと驚く苺がみたかっただけにそこは残念だ。
そこから数日、俺達は学院の入学試験に来ていた。そう学院でも仲良くしてほしいとは言ったものの俺は入学できるかわからないのだ。
ちなみにアンは特待生枠を、苺は1つ下なので来年に試験を受けことになる。つまるところ俺だけが学院に落ちて1人寂しく去らなければならないというパターンもあり得る。それだけはなんとしても避けたい。そんな気持ちで学院の門を叩いた。
「おいおい、そんな腕で大丈夫なのかよ?」
そんな声が少し遠くから聞こえてくる。これは心配というより早く帰れという脅しのようなニュアンスを感じた俺は現場を見に行くことにした。
しかし俺はそこに居た人物を見て後悔することになる。そう、そこに居たのはまさしくこの人生における俺の最大のライバルになるであろう雄だった。だがいくら相手がライバルだからと言ってそれを見過ごすのは流儀に反する。俺は偉ぶっている男に少し魔力を込めて声をかける。
「お前、何してんの?」
「ヒッ...てなんだまた細いのが増えただけかよ」
この男は予想以上にアホなようだ。
「魔法の腕が細い細くないで決まるのか?そう考えてるならお前相当アホだぞ」
「な!?アホだと?我がアルビィス家を愚弄するのか......!」
アルヴィス、どこかで聞いたようなああそうかオーガスタ王国の貴族様か。確か伯爵家だったか。図書館で勉強した時にそんなことが書いてあった気がする。
「いや別に馬鹿にするつもりはないけど視野が狭いなと思っただけだよ」
「お前は絶対この入学試験で叩き潰す」
そんなかっこいい台詞を吐いて彼は去って行った。名前ぐらい教えて欲しかった。家名しか聞いてないから彼の名前はアルビィス君だな。
「君すごいんだね。僕の名前は秋野雄、よろしく」
「俺は朝霧悠馬だ。雄とか言ったか。お前かなり魔力があるようだがなんであいつに魔法を打たなかった?」
「え、朝霧君は人の魔力が見えるの!?」
「ああ見えるぞ。そういう魔法があってな」
嘘だ。多少は人から魔力を感じることはできるが、そんな便利な魔法は存在しない。雄がどのくらい魔法について知っているかのカマかけみたいなものだ。
「ごめん、なんで魔法をうたなかったって話だったね。だってあの人魔法を打つ価値すらなかったからだよ」
俺はこの瞬間一瞬身構えた。何故なら雄から膨大な魔力が溢れ出てきたから。
俺はこんな化け物と対峙しようってのか。がしかし魔力操作が全くなっていない。これが俺と雄の今の差だ。
「そうか。そういう感性は大事にしたほうがいいぞ。じゃあな」
俺は雄の実力は測れたのでそのままその場所を後にして会場へと向かった。
「朝霧悠馬君か...。なんか変な人だったな」
そこに残った雄はポツリとそんなことを呟いた。
「よおまた会ったな。ここで決着をつけようぜ」
アルヴィス家の坊ちゃんがまた絡んでくる。学院の試験というのは筆記試験と実戦試験の2つから選べる。
俺は別にどちらでもよかったのだが前日にアンから「実戦試験で力を示したほうが楽な学院生活を送れるかもしれませんね」という言葉を聞いてこっちに来たのだ。
「でなんだ?相手はお前なのか?」
「ああそうだ。教師に言って相手をお前に変えてもらったのさ」
なるほど。こいつはやっぱりアホだ。学院では身分差は関係なくなる。
貴族というのはなぜ貴族なのかという話もこのお坊ちゃんには必要だろう。それは単に魔法を代々継承して魔力、使う魔法自体の質が平民より高いからだ。なので基本的に貴族の相手は貴族が務める。そうでないと平民との差が激しすぎる為だ。対戦相手を平民に入れ替えてまで学院に入ったら叩かれるのはこのアルヴィス家の坊ちゃん自身であるということを自分で理解していないらしい。
「まあいいや、じゃあ始めようか」
俺達は試験会場の闘技場に足を踏み入れた。
「お前今更謝っても遅いからな!」
お坊ちゃんが詠唱を始める。
『我が願うは太古の焔』
詠唱なんてものがあったということに驚きを覚える。『アルカディアの明日』の時はなかった気がする。つまり別の世界なのか?そんなことを考えながら坊ちゃんの呪文を妨害していく。
まずは坊ちゃんの足元に出ているでかい魔法陣をどうにかしないといけない。
イメージするのは蛇だ。坊ちゃんの魔法陣の性質上恐らく、古代魔法の類だ。古代魔法は威力こそ高いが魔法陣をつなぐ線と線の間が太い。つまり隙間に別の魔力を通して仕舞えば簡単に崩壊する。
パリンと魔法陣が壊れる音が聞こえる。
「なっ!?古代魔法だぞ!そんな平民程度の魔法の割り込み1つで崩れるわけが......」
実は俺は古代魔法をリスタに教えてもらっていた。
「古代魔法を使えるのはお前だけじゃないんだよ」
「古代魔法を古代魔法で相殺したっていうのか......!?」
「少し違うけど多分君にはわからないと思うよ」
そんな会話をしながら俺は氷の古代魔法をイメージしていく。イメージするのは吹き荒れる氷の嵐。
【ブリザード】
お坊ちゃんの体に氷の嵐がまとわりつく。恐らくさっきイメージした蛇と混ざってしまっているみたいだ。
「うわやめろ!やめてくれ!」
坊ちゃんの顔がまるまるうちに青ざめていく。しかしこれは試験なので試験教員がが止まるまで俺はやめられない。
「そこ!今すぐその魔法をやめなさい!」
試験教員に止められたので俺はすぐに魔法を解除する。氷の嵐から出てきた坊ちゃんは顔も体もボロボロだった。
「貴方名前は?」
「朝霧悠馬です」
「では朝霧悠馬、試験で対軍にも匹敵するであろう魔法を人1人に向けるなんてどういうつもり?」
と試験教員に怒られたが先に古代魔法を展開したのはあちらの方なのでその旨を伝える。
「俺はあくまで自衛の為にあれを使いました。相手はこちらを殺めることもできる魔法を詠唱をしていたように見えました。なので早急にそれをどうにかせねばやられると...」
「そう、それなら自己防衛が通るわね。わかりました、貴方の合否については後日連絡します」
俺は内心やりすぎたなと思いながらとぼとぼと帰路についたのだった。
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