街に
3話 街に
日が沈み始めた頃、俺たちは街へと辿り着いた。女と出会った場所から体感で2時間ほど歩いたと思うのだが、彼女は何故にそのような場所に居たのだろうか。
Aレートの冒険者が足を踏み込める場所なのだとしたら特に問題は無いのだろうが、それにしては不穏な輩が多く潜みすぎていたように思う。
Aレート冒険者の強さは知らないが、誇っていたようだからさぞ強いというにんしきなのだろう。
まあ、敵意もなく観察しているだけのようだったから敢えて口に出すことはしなかったが、あそこは盗賊らしき人間の住処に近い場所だ。
本の数10メートル先まで行けば、もうそこは盗賊の根城に入っていただろう。
まあ、兎に角……。
「おい、これは並ばなければならないのか?」
俺は、街門に出来た長蛇の列を指さす。
「そうだよ、商人や冒険者が街へと入る時間帯だからさ。あとは、朝も人でいっぱいだよ。街を出る人でね」
「そうなのか。ところで、傭兵とかは居ないのか?」
「ヨウヘイ? 聞いたことの無い人だね」
「人では無い。職業だ」
「だとしても、聞いた事ないね。それ、どんな事をする仕事なんだい? 」
まさか、この世界には傭兵という職業は存在していないのか……。
って事は、国の兵士以外に戦える人間は居ないのか?
「傭兵は、まあ簡単に言うなら万事屋だな。護衛とか、盗賊の討伐とか」
「ああ、冒険者の事だね」
「冒険者とは、旅をするもののことではないのか?」
「違うよ。どっちかと言うと、ひとつの町に留まってる方が多いかな」
「そうなのか」
冒険する者と書いて冒険者と呼ぶのに冒険をしないとは、なんとも違和感を覚えるな。
「ほら、そろそろ順番が来るよ! 」
「ああ」
話している間に順番が来たようで、丁度街の兵士に声をかけられた。
「次の人」
俺は、女に続いて前に進む。
どうやら団体でも1人ずつのようで、一定の場所で止められた。
これは、時間がかかるわけだ。
「身分証を」
兵士の指示女は従い、腰に着けたカバンから1枚の小さな板を取り出して兵士に渡した。
「ふん、ティナ・アルオット。戻ってきたのか」
「………………。」
「まあいい、さっさと行け」
女――ティナは俯いた様子で街へと足を進めた。
どういう訳か、ティナはこの街から歓迎されていないようだ。
「次!」
どうやら俺が呼ばれたようで、兵士の方へと向かった。
「身分証を」
「持っていない」
「どうしてだ? 」
少し兵士の目が鋭くなる。身分証とやらは、誰しもが持っているという認識のものらしい。
仕方がない、適当な嘘をつくか。
「ここに来る途中、盗賊に襲わた。逃げる時に鞄の留め具を壊されてな、命さながらで逃げていて、回収する暇がなかったんだ」
兵士はうっすらと笑顔を浮かべて言った。
「そうか。なら残念だ、金がないと街には入れないぞ」
「心配には及ばない。金は懐にしまっていたからな。それで、幾ら必要だ? 」
「身分の保証が無いからな、小銀貨1枚だ」
確か、あの男が持っていた中には5枚ほどあったはずだ。
俺は、麻袋から小銀貨1枚を取り出して渡した。
「良し。さっさと行け」
手で促す兵士を横目に、俺はティナを追いかけて街へと入った。




