三話目。
なれねぇよ…ラブコメ…
死期石が去って翌日。
相模喜助はあの日と同じ部屋の中で便箋と鉛筆を目の前にして考え込んでいた。
さて困った。
自分の命はあと一週間しか持たない。
それまでに告白しなければならないのだが…
(ラブレターって、何を伝えればいいんだ?)
相模喜助は手始めにラブレターを送ろうと考えたのだ。
相模喜助は今の今まで果たし状などは送ったことはあるものの、ラブレターなんてものは送ったことがないのだ。
「こんなときこそ」
救ってくれるは、わが友。田中左近。
プルルル、がちゃ
『はい、左近です。ただいま電話に出ることができません。ピーッとなった後に、お名前と用件をお伝えください』
ピーッ。
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…」
(ちと待て)
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…」
(もちっと待って)
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスっと…ふぅ。人の相談に乗らないからこうなるんだ。馬鹿めが」
そう言って電話を切った。
肝心な時に役に立たない奴だ。まったく。
仕方ないので申野に電話してみることにした。
『はい、どしたんすか? 兄貴?』
「おう、申野か。じつはな…」
といったところで、思った。
(こいつにラブレターの書き方を教えてくれ、なんていった後…
『え〜!? 兄貴、ラブレターの書き方も知らなかったんすか!?うわぁ〜…おっくれってる〜!』
な〜んて言われかねない!)
いや、言われないと思いますけど…
『あ、兄貴? どうしたんすか? もしも〜し?』
とりあえず電話を切った。そして喜助は考え込んだ。ラブレターとはどのようにして書くかを。
(ここまで悩んだのははじめてだっ…!)
恐るべし、ラブレター。
そして、数時間後、ヤットの思いで下書きが完成した。
「できた!」
「できましたか」
「うを!?」
そう言って出てきたのはいつぞやの天使だった。
「死期石! またてめいつの間に!?」
「いやぁ、きみがちゃんとがんばっているか、監視に来たんだよ。お? ラブレターの下書きかい?」
そう言って死期石はひょいとラブレターの下書きを見た。
その内容はこんな感じだった…
はいけい、○○○○さま。
はじめてみたとき、あなたがすきになりました。
というわけで、ぼくとつきあってください。
あなたのことをいつもみているひとより。
「喜助君…」
死期石は喜助の肩にぽんと手を置いた。
そして体は小刻みに揺れている。
「ん…?」
「アッハッハッハッハ、地獄に行こうか」
そう言って笑いながら喜助の首をむんずとつかんだ後、ずるずるとまたどこからともなく現れた扉に引きずっていった。
「ま、まて! なんで連れて行くんだ!?」
「こんなものを出したら確実にバットエンディングしか見えていないからさ」
「なんでだ!? 一生懸命考えて出したんだが!?」
「一生懸命考えて出した答えがこれなんて結構悲惨だよ?」
とにかく、死期石は地獄に連れて行くのをやめて、どこが悪いのかを指摘した。
そして、浮かび上がった問題点はまず一つ。
相手の名前を知らない、ということ。
「いくらなんでも、○○○○というのはひどいと思うけど?」
「し、しかたねぇだろ!? 相手の名前をしらねぇんだから!」
死期石ははぁ、と一つため息をつくと、
「君の命はあと六日しかないってことを忘れないでね」
そのことを告げると、死期石はまた、どこかに去って行った。
死期石が去った後、写真と小さいメモ紙が落ちてきた。
喜助が不思議に思って見てみると、そこには自分が一目ぼれした女性の名前と詳細な情報が示されていた。
「ありがとよ! 死期石!」
どこにいるか分からない死期石に向かって、喜助は礼を言った。




