二話目。
「………………」
喜助は誰もいない自分の家の鍵を開け、入った。
「ただいま…」
そんな事言ってもだれかが返してくれるとは思えない。
喜助はそう思いながらも誰もいない六畳間の中心に寝た。
両親は死んだ。
兄弟はいない。
育ててくれた、叔父や叔母も死んだ。
誰もいない。そんな部屋の中、
一人机を出して茶をすすっていたスーツ姿の男性が、正座をしながら、
「お帰りなさい」
と返した。
「誰だお前!!!!!!!????????」
当然このような反応が返ってくるだろう。
「いやぁ、いい茶葉ですね。もう五杯くらい飲んじゃいましたよ、お茶」
「勝手に人ん家にあがりこんで茶なんて飲んでんじゃねぇ!」
そういいながら喜助は握りこぶしを固め、スーツ姿の男性に殴りかかった。
男性はよけようとせず、そのまま手のひらで抑えた。
するとこぶしはそこに壁でもあるかのように止まった。
「や〜れやれ。聞いたとおりの気の短さだなぁ、相模喜助君」
「!? ど、どうして俺の名を…?」
ひょっとして、今流行の詐欺師、というものだろうか。
「流行ってないから。実は僕、こういう者なんだけれど…」
そういってスーツ姿の男性は懐から名刺を取り出した。
全世界死人協会 協会役員兼寿命告知役兼天使役
協会員番号003322659
死期石 司
そして上には死神が持っていそうな鎌に天使の羽がが生えたようなマークがあった。
「私、天使です」
「……………」
新手の冗談か。
すぐに喜助は思った。しかし、この死期石とか言う男が放つ気…おそらくは本物、だろう。
(天使になんてあったことがないしな………)
ひょっとして、自分の魂を狩に来た死神なのかもしれない。
「いや〜、最近って便利ですよねぇ。昔は告知するのに何回も天使の羽を必要としていたりしていましたが、今の世の中、ワープ装置ってもんがありますからねぇ。いやぁ、移動が楽ですよ」
羽が生えて自分を天まで連れて行くという喜助のイメージが一瞬にして崩れ去った。
「んで、何のようだ?」
「まあまあ、かけてかけて。あ、お茶飲みますか? おいしいですよ? 私のじゃありませんが」
そういってきたので、とりあえずは座ることにした。落ち着いて話ができない。
「え〜、あらためて言わせてもらいます。相模喜助君」
死期石が真面目な顔になった。さっきまでへらへらとした顔だったのに。
まるで、死人を本気で送り出すかのように。
「君はあと、12時間の命だ」
「早えよ! 残り半日!?」
「嘘。残り一時間」
「それも早え!」
「というわけで、さっさと地獄、もとい天国に来てくださいかわいい女の子たちがいっぱいいますよ?」
「ぜってぇ地獄だろうが!」
女の変わりに鬼や悪魔がいそうだ。
「プールとか、針マッサージとかもありますし…」
「地の池地獄と針山地獄!? 俺を待ってんのそれかよ!?」
「というわけで、今すぐレッツゴー☆」
首根っこをつかんでどこからともなくドアを出してきた。
「ま、まて! 待ってくれ! 俺はまだ死ねねぇ!」
「よくいるんですよそういう人。大丈夫。体のほうは心臓麻痺で死神に処分してもらいますから」
デス○ートかよ!?
「違ぇ! せめて、せめて一週間待ってくれ! ぜってぇ地獄に行くから!」
「だめですよ。そうやってずるずるずるずる寿命を延ばす人が後を絶たないんですから」
「頼む! 一週間でいい! 待ってくれ!」
「…………なんで一週間なんですか?」
唐突に死期石が聞いてきた。
「答えてください、相模喜助君。何で一週間なんですか?」
「そ、それは………………」
ちょっと間があって、喜助は言った。
「す、好きな人に、こ、こきゅはくする為だ………………」
噛んだ。
ぶほッッっっっっっっっっっっっ!!!!!!
思いっきり死期石が緑色の液を吹いた。
「てめぇ、何がおかしい!?」
「いやいや。君のような不良がすきな人に告白するために寿命を延ばしてほしいなんて…」
そう言いながら死期石は首根っこを放し、振り返って言った。
「わかりました。では、特別に一週間、一週間だけ待ちましょう。一週間たったら君に死んでもらいます」
いいですね? とでも言うような顔をしてこちらを向いてきた。
「ああ。構わない」
「では、一週間後」
そういった後、死期石は煙のように姿を消した。
お便り待ってます!




