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不良桜  作者: 嫁葉羽華流
2/11

一話目。

「おはようございまっす、兄貴!」

「おう」

 とある高校で交わされる、不良の挨拶。

 きっと、どこの学校にもあることだろう。

 この話の主人公――――相模喜助は思った。

「喜助ぇ〜」

「おう、左近か」

 田中左近。相模喜助の唯一無二の一般人の友人。顔立ちはとても良く、「カッコいい」という言葉を体で表現したようなかっこよさ。そのかっこよさに普通の女子は振り向いてしまうくらいである。

「おはよ」

「おっは〜」

「相変わらず、お前は番長やってんのなぁ」

「やってるつもりはないんだけどな」

 そう。

 相模喜助はこの高校の番長である。

 上級生を破竹の勢いで倒し、さらにはひとつの町の不良どもを統一してしまうその強さ。

 町の不良たちの頂点に立つ男、相模喜助。

「ま、つえぇことはつえぇんだしな」

「……………」

 おろ? どした?

 左近は思って顔を覗き込むと、喜助は今にも泣き出しそうな顔でうつむいていた。

「おう!?」

「左近…」

「な、なんだ?」

「どうして…」

「???」

「どうして…」

「???????」















「どうして俺はつえぇのに俺は女にもてねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

 そう言って喜助は左近の首と取り巻きの申野の首をそれぞれ片腕で締め上げ、ガラガラを振り回す赤子のように振り回した。

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁ!!!」

「ぐ、ぐるじいッすぅぅぅぅぅぅうううぅうぅううぅうううぅぅぅぅぅぅうぅうううぅぅぅぅ!!」

 二人の頭がトマトのように真っ赤になるまで喜助は振り回していた。そして勢い余って手を放すと、左近は校庭の真ん中にぶん投げられ、申野は校門の壁に頭をぶち当てていた。

「す、すまねぇ…」

 はあはあと息を荒げて呼吸を整えていた。

 そんな中、一人の女生徒が校庭を横切った。

 その女性は凛と立ち、

 人形のような顔立ちでそこを通り過ぎた。

 通った後にはどことなくいい香りが残っているように思えた。

「……………」

 その姿に高校最強の番長は立ち尽くした。

 そしてその姿が校舎の中に消えるまで喜助は見ていた。

 これが、相模喜助が「初恋」という果実を手にした瞬間だった。

 そしてその数時間後、高校に一台の救急車がやってきて、申野、左近を病院に運んでいた。

 しかし、そんなことは喜助には関係がないようにそのままぼ〜っと立ち尽くしていた。

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