第七節 展望
身体が口を開いた。
「ゾムビーの親玉が大体の場所を、通信器を使って教えてくれるようだ。随分とご丁寧に――、な」
「それなら願ったり叶ったりじゃないですか!」
主人公が口を開いた。主人公の言葉とは裏腹に、身体は俯いた様子だった。
「俺としては複雑なんだ」
身体が話し始める。
「倒すべき敵、隊長の仇と、和解など、俺は心から望んではいない。しかし上の者も、亡くなった隊長自身も、和解の道を望んでいる。ジレンマというヤツだな……上の者と隊長の意志と、自分自身の願いとの板挟みにあっている」
「バッ‼‼‼」
逃隠が手を素早く上げた。
「ジレンマ、板挟みとは何だい?」
「……」
周囲は静寂に包まれる。
「ハハ、サケルは能天気で良いな。少し心のもやもやが晴れた気がする」
身体は少しだけ心が穏やかになった。
(サ……サケル君……本当に中学生なの……? ボキャブラリーが小学生並だ……)
一方で愕然とする主人公だった。
「そうだ、ツトム」
身体が口を開く。
「グングニルが少しだけ使える様になったんだったな?」
「何⁉ それは本当なんだい?」
間髪入れずに逃隠が反応する。
「あ、はい。少しだけですが……」
主人公はやや自信なさげに答える。
「なら、第2訓練場に移動だ! ツトムの状態を見ておきたい」
3人は第2訓練場に移動した。
移動する最中、主人公の心中は、
(大丈夫かなぁ。期待外れって言われたらどうしよう……)
更に自信が無くなっている様だった。
訓練場に着いた。
「さあツトム、やってみるんだ」
身体は主人公に言う。
「ハ、ハイ!」
「ギュッギュッ」
作り直した手袋を手にはめ、集中し始める主人公。
(皆を……守る……皆を……守り抜く)
「グングニル!」
「ブワッ」
主人公の両手が見えなくなる程度の、虹色の光が発生した。
(こ……この前よりも大きな光だ……!)
少し集中力が途切れる主人公。
そして――、
「シュゥウウン」
光りは消えていった。
「最後に気を抜いたな? ツトム」
身体は見抜いていた。
「あ……はい、ごめんなさい」
謝る主人公。
「まぁいい、ギリギリ合格だ」
「! ! !」
身体の言葉に喜びを隠しきれずにいる主人公。
「や……やった‼」
喜びを言葉にする主人公。
「へへ、やったんだい」
逃隠は鼻をこすりながら言った。
「さて、二人とも。ここで重大な話がある」
「‼」
「⁉」
身体の突然の言葉に、驚く主人公と逃隠。
「これからの対ゾムビーの対応だが……」
(そ……そうだ。石を集める時にゾムビーと遭遇したら、どうするんだろう……?)
主人公は疑問を抱く。身体は口を開く。
「捕獲……」
「‼」
「⁉」
「捕獲しろ、と……hunter側から指示があった」
主人公は問う。
「捕獲って……どうやって捕獲するんですか⁉ それに! 捕獲してどうするんですか?」身体は答える。
「どうやって……方法はまだ、決め兼ねている状態だ。捕獲した後は……石同様、ロケットで宇宙に飛ばすそうだ」
「! 倒すよりも難しいじゃないですか⁉」
主人公は強く言う。
「そうだな……だが、石は返す、しかしゾムビーは倒す、では和解とは言えないのではないか?」
「! そ……それは……」
「だい……」
身体の言葉に、何も言い返せない主人公と逃隠だった。
「しかしな、二人とも」
身体が再び口を開く。
「今回の作戦が完全に遂行された時、ゾムビー達との戦いも完全に決着がつく、と俺は考えている」
「ゾムビー達との戦いが……」
「完全ニ……」
主人公と逃隠は口々に言う。
「そうだ。ゾムビーの脅威が無くなり、平和が訪れる」
「平和ガ……」
(回想)
「あはははハ‼」
ダッヂと一緒に、緑生い茂る野原を走り回る幼き頃の逃隠。
「ははハ‼」
「ワン‼」
今度は野原に寝転び、じゃれ合う二人。
「ペロペロ」
「こラッ! くすぐったいゾ、ダッヂ!」
ダッヂは逃隠の頬を舐めている。
「くかァ――」
「ぐぅぅうう」
(回想終了)
(ダッヂ)
グッと拳を握る逃隠。
「平和……」
(回想)
「よし!」
急に立ち上がる尾坦子。
「?」
続いて笑顔で言う。
「好きです、付き合って下さい」
「ひしっ」
尾坦子は急に主人公を抱きしめた。
「えへへ。ずっとこれがしたかったの」
「尾坦子さん……」
主人公は涙を拭いそれに応えた。
「?」
不意に顔を近付ける尾坦子。
そして――
二人の唇は重なった。
「! ! ⁉ ! ! ⁉」
ゆでだこ状態の主人公。
「えへへ。ゾムビーじゃなくなったから、こんなコトもできちゃう。ありがと、ツトム君」
(回想終了)
(尾坦子さん……もう二度とゾムビーの被害者にさせない……‼ いや、誰一人として、ゾムビーの被害者にはさせない‼)
主人公も決意を新たに拳を握る。
「さて、ゾムビー捕獲の方法について考えてみよう。まず、ゾムビーを弱らせる電波が送れる機械を使おうと思う」
(尾坦子さんが被験体となって研究された、あの電波を……!)
身体の言葉に、思いを巡らせる主人公。
「その次だ。電波で弱らせた後、どうするか……」
「は――イ! ハイは――イ!」
身体に対して、手を上げて反応する逃隠。
「どうした? サケル」
「コレだい!」
逃隠は、自身の着ている特殊スーツを指差した。
「ん?」
顔をしかめる主人公。
「スーツ……そうか!」
何かに気が付く身体。
「ゾムビーの体液を防ぐスーツの素材を使い、ゾムビーを覆うか何かして捕獲するんだ!」
「だい!」
「! (サケル君にしては名案だ! だいぶ失礼だけど……)」
主人公は気を使いつつ思う。
「そうと決まれば、製造ラインに連絡だ! 特殊スーツと同じ素材の紐と、ゾムビー1体包めるくらいの袋を、大量生産させよう‼」
即座に連絡は行き渡り、製造ラインは紐と袋を生産し始めた。
「さて、N州支部へ、今後の活動方針を連絡しよう」
「ピピピッ」
身体は携帯を使って連絡する様だ。
『もしもし、狩人、副隊長だ』
『oh! どうしマシタか?』
N州支部の者が電話に応対した。
『ゾムビー捕獲の件だが、こちらの活動方針を伝える。まずゾムビーを弱体化させる電波を使う。そしてゾムビーの体液を防ぐ素材で紐や袋を作り、それで捕獲して行く事と決めた』
『そうデスね。こちらも同じ様な策を考えてマシタ。マサカ、そちらがこの方法を思いつかないとは思いませんデシタので、敢えて連絡は送りませんデシタが』
『! (……いちいち癇に障るヤツだ)分かった。今言った方針で活動を行っていく』
身体は怒りを抑えて、冷静に応じた。
『了解デス。要件は以上デスか?』
『ああ、以上だ。それでは』
『goodbye』
「ピッ」
身体は電話を切った。
「ふぅ、向こうの承諾も得た様だし、あとは紐や袋が揃ったら再び向こうへ連絡し、一番近くにある石を入手しよう!」
「ハイ!」
「だい!」
身体に受け答える主人公と逃隠。
「さて、今日はもう帰っていいぞ? 特殊な素材のモノだ。数時間で揃うものではないからな」
「分かりました」
「了解だい!」
「ウィ――ン」
主人公は狩人ラボを出る。
(捕獲……困難なミッションになるだろうけど、スマシさんの為にもやるぞ……僕はやるんだ)
主人公は決意を新たに、戦いへ臨む。




