第六節 手袋(相棒)
「! それじゃあ……」
「うん……ゾムビー達と戦えない……」
驚く尾坦子に、返す主人公。
「この前言った様に、スマシさんに顔向けできるよう、前を向いて生きて行くって決めたのに……やっぱり、ダメみたい……自分の一撃で、スマシさんを葬ってしまったから……」
「そっか……」
数秒の沈黙が、二人を包む。
「それなら……」
「!」
尾坦子が口を開く。
「嫌な事だったら逃げたって良いんだよ? でも、キミが本当にしたいコト、本当にしたかったコトは何かな?」
「僕が……したかったコト……」
(回想)
(やるぞ! コガレ君を、家族を、尾坦子さんを! 守るんだ‼)
(拒絶……拒絶……ゾムビー達にみんなを襲わせたくない!)
(これで力を手に入れられれば、みんなを救うことができる)
ベッドで横になっている主人公。
「僕一人が一方的に守り抜くことなんて、不可能なんだ。……一緒に、共に戦っていこう」
(回想終了)
「僕は……戦っていきたい……皆を守りたい!」
主人公は力強く言う。
「そっか、ならやるコトは決まってるね?」
「超能力を……また使えるようになる!」
尾坦子に返す主人公。
「その為には何かキッカケが必要だね……うーん、アドバイスがなかなか浮かばないけど、何かキッカケを見つけよう! 何かいいアドバイス見つかったら、即連絡するね!」
「ありがとう、尾坦子さん。きっかけ……か。僕もそれを早く見つけるよ、じゃあ」
「うん、バイバイ!」
「ピッ」
電話は切れる。
「きっかけ……きっかけ……と」
ふと机の上に視線をやる。
そこには前回の戦いで手の甲のマークだけとなった、手袋の破片があった。
「そうだ!」
主人公は声を上げた。
「手袋をもう一度作ってみよう……何か変わるかも知れない……」
翌、土曜日――、
主人公は入院していた病院のデイケアに通った。受付の人に挨拶する。
「おはようございます」
「おはよう……あら、ツトム君、久しぶりー。元気にしてた?」
「ええ。まぁ、色々ありましたけど……」
苦笑いしながら答える主人公。
「今日は何をするの?」
受付の人は問う。
「手袋。もう一度作ろうと思って……」
手の甲のマークを見せる主人公。
「アレ、こんなんなっちゃったのー⁉ まぁ……頑張ってねー」
「はい!」
中へ進み、机に座る主人公。
「フ――、よし! やるか‼」
型を用意し、革を切っていく。紐を通すところまで出来た。
(あの時と――、一緒だ……)
(回想)
「我ながらいい出来だなぁ。……革の質感っていいな」
出来たてほやほやの手袋に頬ずりする主人公。
「匂いも……いい……」
「ジリリリリリリリリリリ‼」
(回想終了)
(あの後、ゾムビー達が現れて……)
(回想)
(口から吐かれる体液は無理でも、体から少し出てきている体液くらいならこの手袋で防げるかもしれない!)
手袋を手にする主人公。
「スチャッ」
手を入れ、手を握って動かしてみる。
「ギュッ、ギュッ」
「よし、スキマもないし、しっかりフィットしてる。……行ける……かも……」
(回想終了)
紐を通しながら考える主人公。
「思えば、あの時はほとんど超能力無しでゾムビーに挑んだんだよな……そう考えれば今と同じ――、か……」
二回目ともあって、手慣れた手つきで紐を通す。紐を通し終えた。
「最後は――」
手の甲のマーク、黄色い星のマークを手にする。
(回想)
「何だ、いいしるしがあるじゃないか、ここだ」
「?」
爆破は主人公の手袋の手の甲にある、星を指差した。
「ここに意識を集中させて、力を発動させるんだ。手を合わせてみろ」
言われるがままに手を前に向けて、合わせる主人公。右手が左手の上になっている。
「この右手の星に意識を集中させて、もう一度やってみろ」
「はい」
(回想終了)
「ギュッギュッ」
星のマークを紐で通していく。
(手袋もだけれど、このマークが無ければ、今の自分はなかったかも知れない。この手袋のパーツ、どれ一つとして欠けてはいけないんだ)
気付けば昼過ぎになっていた。昼に出された食事も、半分くらい残して、主人公は手袋作りに集中していた。手袋は完成した。
「(二度目になるけど……)お帰り」
主人公は手袋をはめて感触を確かめる。
「ギュッギュッ」
主人公はふと、思いをはせる。
(グングニル……格上の敵と対峙し、誰かを守るという強い意志が生まれたため、発現した力……か)
手袋の星のマークに集中してみる。
(誰かを……守る……!)
すると――、
「ブワッ」
「‼」
微かだが、主人公の両手が虹色に輝いた。
「シュゥウウン」
その光はすぐに消えてしまった。
「ほ……報告だ……! 副隊長に報告しないと……!」
嬉し涙を、少しばかり浮かべる主人公であった。
狩人ラボ、身体の自室にて――、
「失礼します!」
「! ツトムか、どうした?」
主人公に反応する身体。
「あの技が……グングニルが少しだけ出せれるようになりました!」
「本当か⁉」
主人公の言葉に、驚きを隠せないでいる身体。
「はい! どこかへ移動して、これから見てもらおうと思って……」
「スッ」
右手で主人公を制止する身体。
「その前に、伝えたい事があるんだ。ツトムが来てくれて丁度良かった。サケルも呼んでいるからそろそろ来るはずだ」
「コンコンコン!」
「! 噂をすれば何とやら、か」
身体は呟く。
「失礼しまース!」
逃隠が身体自室に入ってきた。
「来たな、サケル。……今回二人を集めたのは他でもない。いや、ツトムは自分から来たんだったな。済まない……今回、これからの狩人の活動方針を伝えようと思ってな」
「!」
「⁉」
身体の言葉に虚を突かれる主人公と逃隠。
「そ……」
「それはいったイ……?」
主人公と逃隠は口々に言う。
「単刀直入に言う」
「ゴクリ」
息を呑む二人。
「世界に散らばった、あの石を集めるんだ」
『⁉』
二人は驚愕した。
「あ……あの石ヲ……?」
「世界って、世界中にあの石があるのですか⁉」
再び逃隠と主人公は口々に言う。
「まあ落ち着け」
身体は二人を宥める。そして口を開く。
「上の者が……huter.N州支部の者が決めた事だ……上の者も、隊長の理想とされていた、和解の道を歩もうとしているのかもな」
「一体何でそんなコトに……?」
主人公が問う。
「例の、ヤツだ……」
「?」
身体の言葉にハテナ顔の主人公。
「ゾムビーの親玉が、通信機器に電波を送り込んで会話を試みてきたんだ」
「!」
「‼」
二人は驚きを隠せない様子だった。
「石を宇宙に送る代わりに、ゾムビーが人間を襲わない様に命令するらしい」
「そ……それなら」
身体の言葉に、返す主人公。
「スマシさんの理想としてきた関係が、築けるじゃないですか!」
「そうだ。隊長も、天国で喜んでおられる事だろう」
身体の発した言葉に、笑顔になる主人公と逃隠。
「しかし」
身体の言葉に、表情が引き締まる主人公と逃隠。
「全ての石を集めるのは、途方も無い長旅になるだろう。ある意味、ゾムビー退治よりも厄介な任務かも知れない」
「一体どうやって石を集めるんだい⁉」
頭を抱える逃隠。そこで口を開く身体。
「石は近付けると光っていただろう? あの特性を利用して、石の場所を把握し、集めるんだ」
「な……なるほど! (確かに石が光るなら、そこを探すだけで見つけられる)」
主人公は合点がいく様子だった。
「それに」
再び身体が口を開く。




