第五節 過去の真実
『日本ノ組織ノ副隊長ハ分カッテイタヨウダッタナ、事ノ発端ヲ』
日は遡り、狩人ラボでゾムビーの親玉と通話した日――。
(回想)
『ゾムビーが地球に発生し始めたのは、我々地球人が宇宙に足を踏み入れて、ゾムビーのウイルスを地球に持ち帰ったからだ。違うか?』
『そ、……ソレは……』
『その時にあの石も数個持ち帰ったのだろう。ゾムビーが地上に発生した原因は、明らかに人間側にある』
(回想終了)
『あっ、あの時の会話か……!』
N州支部の隊員は数日前の会話を思い出す。
『ソウダ』
ゾムビーの親玉は話し始める。
『人類ハ宇宙ヲ目指シ、何度モ宇宙ヘトロケットヲ飛バシテキタ。ソシテ宇宙ニ存在シタ我々ノ体液ヤ、大切ニシテイル石ヲ奪イ去ッタ』
「‼」
「⁉」
隊員は真実に触れ、動揺する。
『石ハ当時、宇宙デハ互イニヒカレ合ッテイタ。ソノ為、奪ワレタ石ニ向カッテ十数個、宇宙カラ地球ヘト飛ンデ行ッタ。我々ノ同胞達ハ石ヲ奪還スベク、ロケットノ後ヲ追ッタ。ソシテ初メニ辿リ着イタノガアメリカノN州ダッタノダ』
『! ここが始まりの場所と言われているのは、その為だったのか……⁉』
ゾムビーの親玉の話を聞いた隊員は、更に真実を耳にする。
『ソノ他ノ同胞達ハ、地球ノ自転ト公転ノ為、マッスグハ向カッテ行ケズニ、結果的ニ地球ノ様々ナ場所ヘ降リ立ッテ行ッタ。ヒカレ合ッテイタ石モ同様ニ、様々ナ場所ヘ散リ散リトナッタ』
「ウィ――ン」
モニタリング室のドアが開いた。
『どうやら、知ってしまったようだな……』
隊の幹部が現れた。
『お、お疲れ様です!』
隊員は敬礼する。
『まぁ良い、他言は無用だ。もし話が漏れた場合にはお前達を処刑する』
『! ……ハッ‼』
幹部の言葉に、更に一礼する。
『ソモソモ、人間ガ宇宙ニ来ル必要ハ無イ』
ゾムビーの親玉は話を進める。
『人間ニハ地上、地球トイウ適シタ場所ガ有ルデハナイカ? 我々ニハ宇宙トイウ場所ガ有ル様ニ。ソノ地球ノ環境ヲ破壊シ続ケ、居心地ゲ悪クナッタラ地球カラ離レテ宇宙ニ出テコヨウナンテ、大層ナオ話ダトハ思ワンカ?』
『火星移住計画のコトか?』
隊の幹部が口を開く。
『⁉ モウ他ノ星ニ目星ヲ付ケテイルトハ……ハハ、オメデタイ連中ダ』
『私達、現場対応する者は上の指示に従うまでだ』
隊の幹部は不満気に言う。
仕切り直して、ゾムビーの親玉は口を開いた。
『マア良イ、人ガ集マッタノデモウ一度言ウ、地上ニ散ラバッタ、全テノ石ヲコチラヘ返シテモライタイ』
『⁉ おい、話はその方向で進んでいるのか?』
隊員達に問う隊の幹部。
『いえ、回答はまだ出しておりません』
隊員は答える。
『よし、分かった』
ゾムビーの親玉に対して目をやる幹部。
『その申し出に対して、我々人間にどんなメリットがある?』
ゾムビーの親玉が口を開く。
『全テノゾムビーヲ地上カラ宇宙ヘ帰還サセ、モウ二度ト人類ヲ攻撃シナイ様ニサセル。事実上ノ停戦協定トイウヤツダ』
『!』
幹部は驚いた後言う。
『信憑性はあるのか? その条件に』
対するゾムビーの親玉。
『今回3ツノ石ヲ返シテ貰ッタノダガ、現ニ我々ハ攻撃ヲ止メテイルデハナイカ?』
『⁉』
(回想)
『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』
(回想終了)
(確かに、あれから一週間以上月日が経過している。そして宇宙通信所から目立った報告もない……信じて……いいのか?)
『ドウスル?』
ゾムビーの親玉が問う。
『……(やむを得ん)』
暫く考え込んで、幹部は口を開いた。
『分かった。承諾しよう』
ニヤリと笑うゾムビーの親玉。
『オ前ガ聡明デ助カッタゾ。アノ3ツノ石ヲ授カッタ時点デ、コチラハソチラヲ信用シテイル。期限ハ問ワナイ、ダガ早急ニ頼ムゾ』
「ジージー、……プツン」
通信が途絶えた。
『やれやれ……ゾムビー退治よりは安全そうだが』
ぼやく幹部、隊員達を見る。両手を軽く上げ、手のひらを見せる隊員。
『時間は倍以上に掛かりそうだ』
日本――、
狩人ラボ、第2訓練場。
「? ……あれ……?」
戸惑う主人公。
「な……⁉」
「だい……」
身体、逃隠も呆気に取られる。
「リジェクトが……出せない……」
主人公は訓練場で、リジェクトの威力を測ろうとしていた。また、何秒に一回打てるか、も知っておこうという目論見もあった。しかし――、
「何でだ……? 出せない……」
「…………」
身体は考える。
(超能力の威力や精度は精神面、メンタル面での調子に大きく左右される。隊長を自らの手で葬ってしまった過去を、ツトムはどこかで引きずっているのか……?)
「リジェク……」
「もういい! ツトム‼」
リジェクトを放とうとする主人公を遮る様に言う身体。
「!」
「次はグングニルだ、出来るな?」
「ハイ! やってみます‼」
身体の言葉に答える主人公。
「グングニル……!」
しかし――、
「シーン」
何も起こらない。
「そ、……そんな……」
落胆する主人公。
「……ダメだな」
身体が口を開く。
「隊長の事を引きずっているな? ツトム」
「……はい。多分、心のどこかで引っかかっているモノがあるんだと思います」
力無く答える主人公。
「このままでは全く戦力にならない。それどころか、ゾムビーにやられて、犬死してしまうのがオチだぞ?」
「はい……切り替えよう切り替えようと思ってもやはり、今まで支えてもらったスマシさんを助けられなかったのは……大きくて……」
主人公は弱々しく返す。フ――っとため息をつき、言う身体。
「そうだな。……超能力の発動は精神面が強く関わってくる。精神状態が悪ければ、力の強さも弱くなってしまう事だってある。……仕方ない。ツトム、これから暫く、狩人の活動を休め。今のままじゃあ、何もできない」
「……分かりました」
身体は最後に言う。
「俺も隊長の事は今でも夢に出るくらい後悔しているんだ。しかし、体術を使って戦える。お前は、超能力に頼るしかないんだ。その超能力が使えないんじゃあ話にならない。力が戻るまで、心を休めるんだ」
「分かりました……失礼します」
力無く答え、ラボを去ろうとする主人公。
「おイ!」
顔を上げると、逃隠が居た。
「俺ハ、待ってるからナ。お前ハ、狩人に必要な人間だと思っていル。じゃあナ」
「う……うん!」
少し明るくなる主人公。
「ウイ――ン」
ラボを出る主人公。
(これから、どうしようか……? 心を休めるって言われても……)
ふと、爆破の背中がよぎる。
「忘れられるはずがないよ……スマシさん……」
主人公は暫くその場に佇んでいた。
すると――、
「ブー、ブー」
携帯が鳴った。
「尾坦子さん……」
尾坦子からのメールだった。
「『内定もらったよ! これからお仕事頑張るからね! 電話いいかな?』かぁ……『いいよ』っと――」
「ブー、ブー」
「ピッ」
電話に出る主人公。
「もしもし」
「もしもし、やったよー。ツトム君!」
元気に言う尾坦子。
「う……うん、おめでとう」
「? ツトム君、何かあったの? 前みたいに元気ないけど……」
返す主人公。
「超能力、使えなくなっちゃった」
「!」




