第二節 彼女
「ピッ」
電話に出る主人公。
「もしもし」
「もしもし、ツトム君。元気にしてた? 向こうで変な実験とかされてない? あと……浮気、してないでしょうね?」
「はは……全部大丈夫だよ」
少しばかり尾坦子に元気をもらう主人公。しかし――、
「元気ないね、ツトム君。何かあったでしょ?」
覇気の無さを見抜かれてしまった。
「はは、実は……」
主人公は話した。アメリカへ行き、宇宙で戦う事となったこと、宇宙で、何体ものゾムビーを倒したこと、爆破と戦う前、貴重な言葉をもらったこと、爆破と戦い、消滅させてしまったたこと。
「へぇ、そうなんだ。だから今、元気が無いんだね」
「うん……ちょっと、ね」
「でも、残された命なんだから、大切にして、前を向いて生きていかないと、あの隊長さんに顔向けできないでしょ?」
「!」
主人公は目を見開いた。そして――、涙が滲む。
「くっ……うぅっ……えっ……えっ……」
泣き出してしまう主人公。
「わっ! ちょっと、大丈夫? ツトム君!」
「うっ……うっ……」
泣き止まない主人公。
「もー分かった! 今からそっちに行くね! 今日空いてるから! じゃあね!」
「ピッ」
電話が切れる。
「うぅっ……」
依然、泣き止まない主人公であった。
十数分後、
「ピンポーン!」
主人公宅のインターフォンが鳴る。
「はーい」
母が出迎えに行った。
「こんにちは! ツトム君のお母さん」
尾坦子が挨拶する。
「あら、こんな可愛らしい子がツトムに何の用?」
母は尾坦子の綺麗さに驚いている様子だった。
「あ……一応、彼女やってます!」
「まっ! あらあら、ツトムもおませちゃんになっていたとはね。驚きだわ。今、呼んでくるからね。ツトム―!」
母は二階に上がっていった。
数十秒後、
「や……やあ、尾坦子さん」
主人公が自宅から出て来た。
「ツトム君――」
「ひしっ」
尾坦子は主人公を抱きしめた。
「あら、まっ――」
母はそれを見逃さない。尾坦子は口を開く。
「こんなにやつれて、しんどかったね、苦しかったね」
「尾坦子さん……」
主人公は尾坦子の優しさに、少し救われた気がした。
「もっ、もう大丈夫だから……」
主人公は言う。抱擁を解く尾坦子。
「本当?」
主人公の表情を伺う。するとそこにはさっきよりも元気そうな表情の主人公が居た。
「良かった」
笑顔で言う尾坦子。
「ツトム君のお母さん、ツトム君の部屋に上がってもいいですか?」
「えっ、まっまぁいいけど……」
母はやや躊躇する。
「大丈夫です。貞操は守りますから」
自信満々の尾坦子はそのまま主人公宅へ入って行った。
「ささ、ツトム君」
「……」
たじたじな様子の母であった。
主人公自室――、
「へー、男の子の部屋ってこんなんなんだ! シンプルで良いねー」
尾坦子は主人公に話し掛ける。
「はは……まぁ、ね」
主人公は適当に返す。
「もう! 何それ⁉」
少し怒った様子の尾坦子。
「ご……ごめん」
謝る主人公。続いて口を開く尾坦子。
「まぁいっか、少し話しようよ。あの隊長さんが最期に暮れた言葉、覚えているよね?」
「!」
(回想)
「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ」
(回想終了)
「……うん、人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい……。スマシさんはそう言ってた」
主人公はそう答えた。暫く考えた後、尾坦子は口を開いた。
「じゃあ、そうするしかないじゃん」
「⁉」
虚を突かれる主人公。
「今回のコト、失敗や過ちと捉えて、それを反省して、前を向いて生きて行くしかないじゃん。私からは二回目になるけど、前を向いて――ね」
「う……うん」
涙が滲む主人公。
「せっかく良い言葉もらったんだから、実践しなきゃダメだよ?」
「分かったよ、尾坦子さん」
尾坦子に答える主人公。
「それと――、」
尾坦子は不意に顔を近付けてきた。
そして――、
二人の唇は重なった。
「!」
「えへへ、こんなコトしかできないけど、これで元気出してね」
はにかみながら言う尾坦子。
「! ‼ ⁉」
混乱する主人公。
「バシッ!」
尾坦子は更に主人公の背中を叩く。
「シャキッとしなさい! 主人公ツトム‼」
「あ……ハイ」
心のもやもやが取れた気がした。
「……尾坦子さん」
「?」
尾坦子に話し掛ける主人公。
「僕、頑張るよ。この残された命を大切にして、前を向いて生きて行くよ」
笑顔になるお坦子。
「OK! じゃあ、そろそろ帰るね。就活中なので色々準備するコトあるから!」
部屋から出ようとする尾坦子。
「尾坦子さん!」
主人公は叫ぶ様に言う。
「?」
「ありがとね。わざわざ来て、色々話してくれて」
「どういたしまして。でもあんまり気にしないでね、私はキミの彼女だから」
「!」
主人公は尾坦子の言葉に顔が真っ赤になった。
「じゃっ、じゃあ玄関までだけど送るよ」
「センキュー」
尾坦子は帰って行った。
(今、僕に出来ること……)
主人公は決意を固めた。
次の日――、
主人公は学校へ通った。そして放課後、逃隠を誘い、狩人ラボへ足を運んだ。未だ本拠地襲来時の傷跡が消えない狩人ラボ。そのラボ内を歩き、身体の元へと進む。身体の自室まで辿り着いた。
「バタン」
「副隊長!」
扉を開ける。
「おお! ツトムにサケルか。丁度明日くらいに呼び出そうと思っていたところだ」
そう身体は言う。
「! 何かありましたか? 僕とサケル君は次の戦いに備えて、トレーニングをしに来たのですが……」
「だい!」
主人公と逃隠は口々に言う。
「まあ話すよりは見せた方が早いだろう。論より証拠、百聞は一見に如かず、だ。会議室に移動するぞ」
身体はそう言い、3人は会議室に足を運んだ。
「見せるって何を見せるのですか?」
主人公は身体に問う。
「そう焦るな。見てからのお楽しみ……とまでは行かないが。少し待ってくれ」
会議室に着いた。
「一体何を……」
主人公は思いを巡らせる。会議室のスクリーンに何かが映った。それは文章の様だった。
「これは……?」
「だい……?」
主人公と逃隠は疑問を持つ。
「爆破隊長の遺書だ」
身体は答えた。
「!」
「⁉」
主人公と逃隠は驚愕した。
「スマシさんはいつ、こんなモノを……?」
主人公は問う。
「ひとまず言えるのは、この前のアメリカ遠征前だ」
身体は答える。
「隊長は、死ぬ覚悟であの遠征に臨んだんだい?」
逃隠は問う。身体は再び答え、話を進めた。
「まあ読んでいけば分かる、読むぞ。この文章は、爆破スマシが書いた遺書だ。この手紙を読んでいる者が居るとすれば、アメリカ遠征中に私に何かあったのだろう」
――、
『今後の指揮は全て身体スグル副隊長に委ねるとする。さて、ここでは私の言い残した指令の様なモノを書き連ねていくとしよう、少々長くなるが、読み手の者は覚悟して読んでもらいたい。私達狩人は、ゾムビー達と常に対立してきた。存在するゾムビーは全て倒す、全て殺すといったスタンスで行動してきた。しかし、今となって思う。何か別の方法があったのではないか、と』




