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回避とサイコとツトム_第六章 終幕  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十六節 夢

「うぅ……」


主人公は目の前から差し込む、白い白い光を感じ、気を取り戻す。ゆっくりと目蓋を開く主人公。


「やあ、ツトム」


「よお、久しぶりだな」


そこには爆破と抜刀が居た。その空間は、白い立方体の様な部屋で、机や椅子、扉さえ無い、そんな空間だった。


「! 二人……共……何で……?」


主人公は状況を飲み込めずにいた。


「まあいいじゃないか。折角また会えたんだ。話でもしよう」


爆破は気さくに話し掛けてきた。


「ふぅ、さてツトム、私がアレほどゾムビー達との和解を願っていたのに、ゾムビー全員を倒してしまったな。お前にはいろんな意味で期待を裏切られたよ」


「俺としては、仇をとってくれたみたいでアリだけどな!」


抜刀は割って入る様に言う。


「はは……」




「さてツトム、どうして、こんな選択を取ったんだ? 教えてくれ」


「……」


少しうつむく主人公。しばらくして口を開く。


「悔しかったんです」


「!」


「確かに、ゾムビー達との戦いは、人間が宇宙開発をする中で、ゾムビー達の居場所を侵略したことから始まりました。でも、スマシさんやセツナさん、尾坦子さんは人間ではあるけど、ゾムビー達の居場所を侵略していない。それなのにゾムビーの犠牲になって、変わり果てた姿になってしまって……あんまりじゃないかって……悔しくって」


「そうか……私達、犠牲になった者の事を大切に思ってくれていたんだな。ありがとう、ツトム」


「サンキュな」


「あ……はい」


「おっと、そろそろ時間が来た様だ。お別れの時間だ。また会えて嬉しかったぞ、ツトム。これで本当にサヨナラだ」


「あばよ」


「あっ、待って! 二人共!!」


空間は段々と宇宙空間と同じような“色”になっていき、爆破、抜刀の二人は遠く遠くへと主人公から離れて行った。






「待って!!」






ガバッと身体を起こす主人公。周りには金属や無数に並んだランプ、そして見慣れた顔の人間が居た。


「ツトム、目を覚ましたか?」


「だい!」


声を掛ける身体と逃隠。主人公は、ロケットの内部に居た。身体は続けて話し掛けてくる。


「ツトム、全部のゾムビーを……本当に良くやってくれた」


「隊長……」


「俺は、本当は和解などしたくなかった。しかし力不足だった。圧倒的な力を前に、復讐ができなかった」


「隊長、夢の中で、スマシさんとセツナさんに会いました」


「何!?」


「スマシさんは、最初はゾムビーとの和解を成し遂げなかった僕に怒っていましたけど、理由を話すと、納得してくれたようでした」


「ハハ、そうか。爆破隊長も安心して天国に居られるだろうな。さあ、帰るぞ。平和になった地球へ。俺たちの国へ」


「だい!」


帰りの飛行機内でも、疲弊しきった主人公は、機内食も食べずにずっと寝ていた。その間、主人公はどんな夢も見ることは無かった。




狩人部隊は、日本へ帰ってきた。部隊は一旦、狩人ラボへ向かった。身体が狩人の関係者や隊員全員を集め、集会を開いた。身体はマイクを使い全員へ呼びかける。


「皆! 我々狩人は、数多の戦いの末、hunterの協力もあり、見事、ゾムビー達を撲滅する事に成功した!」


パチパチと拍手が起こる。サッと右手でそれを制止する身体。続けて口を開く。


「さて、これからの狩人の活動についてだが、今後は自衛隊と協力して、有事の際には現場に赴き、積極的に活躍して行こうと決めている。また、地球の環境保全の活動も並行して行っていく。これからは新しく隊長になった、この身体スグルに力添えして行って欲しい」


演説の様なモノは幕を閉じる。






そして――、




学校を3週間も休んだ主人公と逃隠は放課後、特別に補習や試験を行った。逃隠は、夏休み期間も補習は続く様だった。




とある日のこと――。


「行っけぇ!」


「回れ回れ!」


河川敷で野球をする子供たちを見ている主人公と友出。そっと口を開く主人公。


「コガレ君。僕、これで良かったのかなって、今でも時々思うんだ――。ゾムビーは環境問題を人々に知らせるために現れたのかもしれないって、そう、最近思うんだ。」


「誰も分かりゃしねぇよ、人生の正解なんて。まっ、あの化け物達が居なくなって、皆安心して暮らせるんじゃねぇの?」


「……そっか」


笑顔になる主人公。




場面は変わり、逃隠邸にて――、


「ほぉラ! ダッヂ2号、おすわり!」


犬を飼うコトになった逃隠。犬種はラブラドールレトリバーのようだ。


「ははは! ふかふかだい!」


犬の毛皮に頬を寄せる逃隠。すると、犬はペロペロと逃隠を舌で舐め始めた。


「ゥわあ! くすぐったいんだい!」


陽だまりの空の下、一人と一匹はじゃれ合った。




再び場面は変わり、狩人ラボ、楕円形の机と、幾つかの椅子、モニターがある会議室にて――、


「以上が、今回のK県の環境保全活動の報告となります。委員会の方々、いかがでしょうか?」


身体が何かしら活動報告を行っている。


「どうと言われてもだな」


「何か、こう……パッとしたモノは無いのかね」


委員会の者達は退屈そうにしており、口々に愚痴を吐いていた。


「(これが爆破隊長の感じていた事か……現場の空気を吸わない者共が、全ての決めごとを扱う)申し訳ございません、こういった資料しか持ち合わせておりません。皆様の意見は、次の報告の参考にさせて頂きます」


小一時間後、身体は狩人ラボの自販機コーナーで、コーヒーを買い、飲んでいた。すると、携帯電話から着信音が。出てみる。


「お疲れ様です。主人公ツトムです」


「なんだ、ツトムか。どうした?」


「狩人の在籍についてですが、本当に離職という形で良かったのでしょうか?」


コーヒーを一口飲み、身体は答える。


「ああ、一向に構わんぞ? ゾムビーは絶滅したので、後は超能力者が居なくてもできる仕事ばかりだ。刀を持ったサケルが居なくても――だ」


「分かりました。二度目になるかも知れませんが、今までありがとうございました。ところで、今の仕事は順調に進んでいますか?」


「ああ、順調だ。前に、地球の環境保全活動と言ったがまずは日本から、自然環境などを守る活動を始めている。少し前にツトム達が行った、大阪の道頓堀川の環境が劣悪で、ゾムビーが出没したことがあったな?」


「あ、はい」


「ああいった場所に赴いて、環境保全に努めている」


「大変そうですね。お疲れ様です」


「なぁに、ゾムビーに比べれば、大した事は無い。そろそろ仕事だ。切るぞ」


「はい、失礼します」


プツンと通話は切れた。




季節は過ぎ去り――、11月。


平々凡々中学校も、三年生が進路選択のアンケートを取る時期に差し掛かった。


「主人公ツトム隊員!」


巨峰が主人公に話し掛ける。


「進路については、どうお考えでありますか?」


「うーん、まだはっきり分かんないや」


主人公は答えた。




「……あ!」




ハッと何か思い付き、主人公は進路選択用の資料を手に取る。次いでアンケート用紙にサラサラとシャープペンシルで進路の希望する高校名、学科を書いた。


「どこにお決めになったのでしょうか!?」


「んー? 内緒」


主人公の書いた用紙にはこう綴られてあった。






『〇×高校環境学部環境科』




第六章 終幕 並びに、回避とサイコとツトム 完

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