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回避とサイコとツトム_第六章 終幕  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十五節 最後の戦い

ロケットは一旦、地球の軌道上に乗る事となる。ゾムビーの親玉を見つけるまでの時間、無暗に動くのは頭のいい判断とは言えないからである。ロケットに乗った4人は、親玉の声がしないか、辛抱強く待つ。と、ここで身体がhunter.N州支部の宇宙通信所に連絡をとる。


『こちらロケット内、ヤツの声は聞こえていない。そちらに声は届いているか?』


『……こちら宇宙通信所、親玉の声はこちらにも届いていない。! これは……!!』


『どうした?』


『こちら宇宙通信所、ロケットの進行方向よりおぞましい雰囲気をした球体を発見した』


『! 以前確認された、ゾムビーの巣の様なものか?』


『以前確認されたモノと同様のモノだ。時速30キロでロケットへ進行中。念の為、不測の事態に備える様に!』


『ラジャー』


「隊長、どうしたのですか?」


主人公が身体に問う。


「ああ、以前出くわした球体が、こちらへ向けて進行してきている。ある程度の距離になったら、ツトム、お前が石を持ってロケット外へ出て行ってくれ」


「分かりました。酸素ボンベの準備をお願いします」


主人公に酸素ボンベが装着させられる。装着するのは身体である。過去に経験があるのか、手慣れた手つきでそれは装着させられた。




「隊長ォオオ! あれをォオオ!」




逃隠が叫ぶ。


「どうした? サケル……!」


「!!」


身体、主人公は確認した。コックピットから確かに見える、紫色の球体を――。


「ツトム、心の準備はいいか?」


「……はい」


主人公は内部ハッチがある場所へ向かった。そこに辿り着くと、内部ハッチを開け、外部ハッチを確認した。次に内部ハッチを閉める。フーと大きく溜め息をつく主人公。目をキッとさせる。




(これが最後……これさえ終われば……皆を助けられる……!)




外部ハッチに手をやる主人公。




「……行くぞ」




外部ハッチから宇宙へ出て行く主人公。手には十数個のあの石が。宇宙へ出ると、80メートルほど先に、紫色の球体が存在していた。


「あれだ……以前スマシさんと見たコトがある」


そう主人公が呟いた矢先――、


バコッという音と共に、貨物庫から袋詰めされたゾムビーが球体へ向けて放り出された。


「! そういえばゾムビーも宇宙へ還すんだったっけ。こういう方法なんだね……」




「聞こえるか、ツトム」




「!」


トランシーバーから身体の声が聞こえてきた。


「隊長……」


「もし、万が一だが、相手が攻撃してきたら、グングニルで応戦するんだ。容赦は要らない、向こうがウソをついた事になるんだからな」


「はは……そうですね、でもそうならないように願ってます」


「くれぐれも気を付ける様に!」


「……はい」


静かに言う主人公はリジェクトを使い、球体に近付いて行った。30メートルほど進んだだろうか? 球体はこちらに気付き、速度を下げていく。途中、貨物庫から放り出されたゾムビーを、袋ごと球体が取り込んでいった。不気味さを肌で感じながら、主人公は進んで行く。遂には2、3メートルくらいまで球体に近付いた。そこで主人公と球体は進むのを止めた。


「い……居るのか? ゾムビーの……親玉……」


先に口を開いたのは主人公だった。その数秒後、


「パカァ……」


半径数十メートルはあろう球体は不気味な音を立てながら開いていった。その中は――、


「ゾゾォ……」


「ゾムゥ」


「ゾゾ……」


ゾムビーで溢れかえっていた。その中心に――、


『ヤア……ヨクゾ来テクレタナ』


ゾムビーの親玉が存在していた。


「石を還しに来た! 近くに来てくれ」


主人公は強く言う。


『分カッテイル。今、行ク』


すーっと幽霊の様に親玉は近付いて来た。10秒もしないうちに、親玉は主人公の手が届く場所まで近くへ来ていた。親玉の“声”はロケット内の身体達にも届いていた。


(ツトム……)


(だい……)


身体や逃隠は祈るような思いで戦況を見つめていた。親玉は主人公に手を差し伸べる。


『サア』


コクリと頷いて主人公は右手にあった十数個の“石”を差し出した。そのまま親玉の手のひらに石を渡す主人公。


『ソウダ……ソレデイイ。サア、我ガ同胞達ヨ、我等ガ住処ヘ、還ロウゾ……!』


両手を広げるゾムビーの親玉。主人公は不意に、謎の気配を感じ、地球を見る。地球の数カ所から、紫色の光がゾムビーの親玉目掛けて差し込んでいた。そして――、


ブワッとそこからゾムビー達が親玉目掛けて引き寄せられていった。




「ゾゾ……」


「ゾム……」


「ゾゾォ……」




「! 何を……!?」


動揺する主人公。




「ゾゾ……」


「ゾム……」




次々とゾムビー達は地上から引き寄せられていく。




「今、何をした!?」




主人公は親玉に問う。親玉は淡々と答えた。


「ナアニ、石ノ力デ同胞達ヲ地上カラ宇宙ヘ引ッ張リ出シタマデダ」


(!? 石に、そんな力が……これで、地上から全てのゾムビー達が居なくなる。本当に和解できるんだ……)


主人公は不意に、爆破の残した遺書を思い出した。




(回想)


ゾムビー達が大切にしている石を奪ったのも私たち人間だ。そこは反省すべき点だと、私は切に思う。ゾムビーにも手を差し伸べる、共に歩んでいくという道もあるかも知れない。そこで具体的な方法を何か模索してくれないだろうか? 身体副隊長、サケル隊員、ツトム隊員、その他の隊員達でも構わない。何か策を考案して欲しい。そしてそれを実行に移し、ゾムビー達との戦いに、終止符を打ってくれ。


(回想終了)




(これで……スマシさんの悲願も叶う……これで……?)




『本当にいいの?』




主人公の陰が、主人公に語り掛けてくる。




『本当にこれで良かったの?』




抜刀、爆破の姿が脳裏に浮かぶ。




『二人の命を奪った敵……』




そして尾坦子との想い出が過ぎる。




(僕の大切な人を一時は……)


地上からの光は全て消え、全ての地上に居たゾムビーは球体の中に還った様子だった。


『オ帰リ、同胞達ヨ』


一方でうつむく主人公。ぼそりと何か呟く。




「……るか」




『ナンダ?』


その声をはっきりとは聞き取れなかった親玉は、主人公に耳を傾ける。








「お前達に僕の気持ちが分かるかぁあああ‼」








主人公の体は、両手から全身へと虹色に光り輝いて行った。


『!?』






「グングニル!!!!」






カッと輝き出すゾムビー達。


「ゾゾォ……!!」


「ゾム……!」


少しばかり苦しそうに声を上げる。


『人間ヨ。ココマデノ力ヲ持ッテイタトハ……私モ、コレマデカ……』


光は、ゾムビー達、紫色の石、球体、そしてゾムビーの親玉を包み込んで行き、その全てを消滅させていった。








「ハァァアアアア!!!!」








更に力を込める主人公。輝きは強く激しくなっていく。


そして――、シュウウンと光とゾムビー達は消えていった。


「やった……か……?」


主人公は全ての力を使い果たして、疲労困憊となっていた。


「ツトム! 倒したのか!? ゾムビー達全てを!」


トランシーバーから身体の声が聞こえてくる。


「あ……はい。今、戻ります。リジェクト……」


衝撃で自身をロケットの方へ飛ばしていく。やがて、外部ハッチまで辿り着いた。目の前は霞んで良く見えない中、内部ハッチを開け、ロケット内に辿り着く。


「ツトム!」


最初に声を掛けたのは身体だった。


「だい!」


逃隠も出迎えてくれた様だった。


「二人……共……」


主人公はフッと力が抜けて、気を失った。

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