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回避とサイコとツトム_第六章 終幕  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十三節 隊長

スパッと縦に切りつけられる石のゾムビー。体の断面から例の石が顔を覗かせている。






「! サケル!」




「だい!」






身体の呼びかけに、答える逃隠。逃隠は刀の剣先でピッと石をゾムビーの体から取り出した。


『今だ! 掛かれ!!』


『ラジャー』


hunter.T州支部の隊員に指示を出す身体と、それに答えるT州支部の隊員。特殊素材の袋を、二人がかりで石を無くしたゾムビーに被せる。石が無くなってしまえばこっちのモノと、手早く捕獲を行う隊員。紐で括り付け、捕獲は完了した。


『あと1体だ』


意気揚々と最後のゾムビーに向かって行くT州支部の隊員。


『待て! 石のゾムビーの可能性もあるぞ!』


冷静な身体。T州支部の隊員へ注意を呼び掛ける。


『へ……?』






「ゾゾォ!!」






突然巨大化したゾムビーは体液を吐いて来た。バシャバシャっと、一名また一名と体液の餌食になる隊員達。




「ゾ……」


「ゾム……」




「まさか……」


身体は一抹の不安を持って例の石をかざす。カッと輝くゾムビーの体。身体の不安は的中する。光った個所は2カ所。このゾムビーは壁のゾムビーだった。




「ゾ……ゾム……」




不気味な呻き声を上げるゾムビー。


「副隊長! どうすれば!?」


必死になって身体に指示を仰ぐ主人公。


「! ……まずはゾムビー化した奴らの処理だ。狙撃用意!」


カチャっと銃器を構える狩人部隊。






「……撃てぇえ!!!!」








「タタタタタタタタ」








身体の号令でゾムビー化した元、hunter.T州支部の隊員を狙撃する狩人部隊。


(さて、どうしたのもか……)


身体は次の指示を冷静に考える。すると、またもや爆破の言葉が脳裏を過ぎる。




(回想)


「私にもしもの事があれば、この部隊を仕切ってくれるのはお前だ。宜しく頼むぞ」


(回想終了)




暫くの間だんまりだった身体、遂に口を開く。


「ツトム! あの壁のゾムビーを倒すぞ!!」


「いいんですか!?」


主人公は不安な表情で問う。


「今、ゾムビー達と和解の道を歩もうとしているのに、倒してしまって。本当にいいのですか!?」


数秒だけ間を置いた身体は主人公に語り掛ける。


「……構わん。全責任は俺が取る。グングニルでアイツを倒すんだ!!」


「! 分かりました!!」


壁のゾムビーの前に立ち塞がる主人公。両手を構える。




「グングニル!! ハッ!!!」




主人公の両手は虹色に輝き、周囲を光で包み込んだ。更に両手から虹色の矢が出て来て、それは壁のゾムビーに向かって行った。




「ゾゾォ……」




矢はゾムビーに襲い掛かる。すると、ブワッとゾムビー自身も虹色に輝き始め、その体はどんどん小さくなっていった。




「ゾォオ……」




壁のゾムビーは更に小さくなっていき、遂にはその姿は消え去ってしまった。




「ポチャン」




壁のゾムビーから出て来た石2つは湿った地面に落ちていった。


「やりましたね」


そう言って主人公は地面に落ちていた石3つを拾い上げた。


「ああ、やったな。ツトム」


身体は主人公に労いの言葉を掛ける。


「昨日の1つと合わせて、コレで全部だい!」


逃隠は石のゾムビーから奪った石を見せびらかしながら元気よく言った。


「でも、本当に良かったのですか? 壁のゾムビーは元々ゾムビーだった個体で、それを倒してしまった。これで和解と言えるのでしょうか?」


主人公は顔をしかめながら身体に問う。身体は堂々と答える。


「なぁに、もしもの事があっても俺が全責任を取る。どんな罰でも受け入れよう」




その時――、




『……ァ……ヤァ人間達』




「!」


「!?」


「!!」




例の“声”が聞こえて来た。


『石ヲ良クゾ集メテクレタ。感謝スル……』


「……ひとつ、いいか?」


身体が神妙な面持ち、でゾムビーの親玉の声を遮る様に言う。


「さっき、ゾムビーを一体、葬ってしまった。和解と言っておきながら、悪かった」


ゾムビーの親玉は返す。


『制御ノ効カナクナッタゾムビーダナ。謝ルノハコチラノ方ダ。ゾムビーニ攻撃シナイヨウ、命令シタガ届カナカッタ。始メハ月ノ軌道上ニ居タ為、距離ガ足リナカッタノダ。今ハ月ノ軌道上ヨリモ地球寄リニ移動シタ』


「成程。だから、今は声も届くのだな?」


『ソウダ。ソシテ、コレデ全テノ石ガ揃ッタトイウ訳ダ。期限ヨリ大幅ニ早ク、石ヲ集メテクレタナ、礼ヲ言ウ』


「では、後は石とゾムビー達を宇宙に飛ばすだけだな?」


『ソウダ。宜シク頼ム。デハ、サラバダ』


身体とゾムビーの親玉との会話は終わった。


(ふう……一山超えたな。…………爆破スマシ隊長……俺は貴女の様な働きができましたか? 貴女に少しでも近付く事ができましたか?)


身体が物思いにふけっているそんな中、主人公が話し掛けて来た。




「やりましたね! 身体……隊長!」




「! 隊長だ……と……?」


思ってもみない言葉に動揺する身体。


「だい!」


逃隠も、身体の事を改めて認め、声を掛けた。主人公は続けて言う。


「そうですよ! 的確な指示があったから、狩人部隊は一人としてケガ人すら居ませんよ?」


「……そう……だな」


暫く間を置いて、身体は口を開く。


「向こう側には悪いが、ゾムビー化したのはhunterの隊員達だけだからな」


「流石は身体隊長だい!」


「よせ、サケル」


逃隠は大喜びの様子だった。身体は少しだけはにかんだ様子だ。




「隊長!」




「!」


再び主人公が身体に話し掛ける。


「この後は、どうするのですか?」


身体は答える。


「恐らくだが、これからN州支部まで石とゾムビーを運ぶ。その後、そいつらをロケットに乗せて発射させる。それで、完全にゾムビー達との戦いが終わる」


「成程、どうして恐らく、なのでしょうか?」


「まだあちらには連絡をしていないからな。これから連絡だ」


そう主人公に言った身体はおもむろに通信器を持ち出した。英語で話し始める身体。


『もしもし、俺だ。石とゾムビーの回収が終わった。そちらで宇宙に飛ばしてもらうが良いか?』




『……』




『……分かった』


通信を切る身体。主人公が問い掛ける。


「どうでしたか?」


「GOサインが出た。明日はhunter.N州支部にもう一度行くぞ!」




hunte.N州支部でロケットを発射する予定が決定した。




「これからロッジに戻って一晩過ごすぞ、皆」




「はい!」


「だい!」




(ん?)


主人公はとある事実に気が付いた。


(一晩泊まるんなら……ゾムビーを一晩寝かせるコトになる――!!)


ロッジに戻り、一晩過ごす一行。ゾムビーも、ロッジの外で一晩過ごした。






翌日――、




クイアバへ向けて、早朝からバスで移動する一行。約四時間後、クイアバに着いたら、空港で飛行機に乗る。ラスベガスへの長旅である。この一年で何度も飛行機に乗ることとなった主人公は、慣れた様子で飛行機の窓から空を少しの間眺めて、すぐに眠りについた。一方の逃隠はやや興奮気味に窓の外を見て雲の様子を観察し、写真を撮っていた。身体は落ち着いた様子で、一睡もせずに只々、飛行機の椅子に座っていた。何か思う事がある様だった。ラスベガスへ着いた頃には夕暮れ時になっていた。


「皆居るか!? 点呼をとるぞ!」


身体が点呼をとり、人数が確認された。ラスベガスから軍用車両で二時間半ほど走った先に、hunter.N州支部が存在している。

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