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回避とサイコとツトム_第六章 終幕  作者: 時田総司(いぶさん)


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第一節 消失

「ガッ! ……ドガッ‼」






「ぐあッ‼」






身体が主人公を殴り飛ばした。主人公はそのまま壁にぶつかる。


「見損なったぞ! ツトム‼」


身体は悔しそうに言う。一行はインド洋近海から陸地に移動し、現在はスリランカの軍事施設に駐在させてもらう事となった。


「絶対に元の御姿に戻すんじゃなかったのか⁉」


身体は涙ながらに言う。


「ハ……ハイ。だって、絶対元に戻せるって信じてたから……」


主人公は腹部を押さえながら言う。




「ほ……他にどうすれば良かったんですか⁉」






「! ……」






言葉が出ない身体。


「畜生ゥ」


逃隠がぼそっと呟いた。




そこへ――、


「副隊長、hunter.N州支部から連絡が……」


隊員が通信機を持って近付いて来た。


「……よこせ」


それを手に取る身体。


「How are you! Everyone」


「……」


こちらと明らかに空気の違う、そんな声が聞こえて来た。


『……どうしましたか?』


英語で問う身体。


『今回のミッション、成功に終わり本当にお疲れ様デース!』


N州支部の者からの労いの言葉も、身体には届かなかった。


『ミッション、成功ですか? そちらのエース格の隊員と、こちらの隊長がやられたというのに……?』


身体は感情的になって問う。


『oh! 今回のミッションは、宇宙に出てゾムビー達を倒すという前人未到のミッションデース。成功確率は、五分五分と見ていマシタ。それが、ゾムビー達を見事、撤退させ、犠牲者は2名と軽微なモノで済みマシター。成功と見て良いデショウ』


答える支部の者に対し、俯く身体。


「クッ(隊長が居なければ、今回のミッションは到底成功しえなかっただろう。それなのに! 犠牲者は2名と軽微なモノだと……? あのお方の死はそんな言葉で片付けられてしまうのか……‼)」


『どうか、しマシタか?』


『……いいえ、何でもありません』


感情を押し殺して身体は答えた。


『それでは、今後の活動にツイテ、話しマース。狩人部隊はスリランカから直帰で帰国してもらいマース。こちらのhunter部隊はそこからN州へと帰国させマース』


『ハッ!』


N州支部の者に対し敬礼する身体。


『……』


『……』


英語での会話が続く中、主人公は一人、考え事をしていた。




(あの時――)




(回想)


爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。


「そっ、そんな⁉ スマシさん‼」


主人公は叫ぶ。


「……」


爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。


(回想終了)




(スマシさん……何であんな言葉を……?)


「ム……ツトム」


顔を上げる主人公。そこには身体が居た。


「ツトム! k県に帰るぞ……。コロンボまで移動だ……」


コロンボから成田空港への便を利用する一行。チェックインを済ませ。搭乗して行く。その誰もが俯いていた。飛行機内、主人公は寝ることもなく、機内食も食べず、景色を見る事さえせず、自分の犯した行動を悔やんでいた。一行は成田空港へ到着した。


「ひとまずここで解散だな……」




「ハッ!」




身体に敬礼する隊員達と逃隠。主人公は下を向いたままだった。


(どうしたんだ、ツトム……と言いたいところだが、無理もない、か……せめてそっとしておいてやろう)


電車に乗る主人公。虚ろな目をしている。


「ガタンガタン」


(スマシ……さん……)






主人公は自宅へと到着した。


「ただいま……」




「タッタッタッタッタッタッタ」




「ツトム!」


母が家の奥から走ってきた。




「ひしっ!」




「大丈夫? ケガは無い⁉」


主人公を抱きしめる母。


「あ……うん」


力無く答える主人公。母は主人公と顔を合わせる。


「どうしたの? 元気が無いじゃない」


「あ、……ちょっと、ね」


曖昧に返す主人公。


「まぁいいわ、ケガはしていないみたいだし。ご飯できてるわよ、入って」


「うん……」


その日、主人公は夕食を食べたが、半分以上残してしまった。自室に居る主人公。


「どうすれば良かったんだろう……ねぇ、どうすれば良かったの……? 誰か、答えてよ……」


主人公はその晩、一睡もできなかった。






翌朝――、




「ツトム――! 朝ごはんよ――‼」


一階へと降りていく主人公。


「! ツトム! 何? そのクマは。酷い顔よ」


主人公は眠れなかった所為か、目にクマが出来ていた。


「うん……母さん、今日、学校は休むよ」


力無く呟く主人公。


「何を言って……? まぁそんな体調じゃあ仕方ないわね。丁度今日は金曜日だし、この3日間で体調を戻すようにね」


「うん……母さん」


その日、主人公はトイレ、食事、風呂以外では一回も部屋から出ずに引きこもっていた。「スマシさん……」




(回想)


「危なかったなぁ、少年。」


「ツカ……ツカ……ツカ」


何者かが足音を立てながら近づいてくる。


「しかしもう安心だ。私は爆破スマシ。政府公認部隊・狩人の隊長だ!」




「少年、まだ名前を聞いていなかったな。名は何と言うのだ?」


問う爆破。答える主人公。


「ツトム。主人公ツトムです」


「うん、いい名前だ。ツトム、来てほしいところがあるんだ」




「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」




「…………」




「…………」


「…………」




爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。




「……ダメだ、書き直し」


(回想終了)




「スマシさん……!」




(回想)


「私事で本当に悪いのだが、見た所、相手は1体。暫く、新手は現れそうにない。そこで、自分の実力を確かめておこうと思ってな」


「サケル、セツナ。下がっていてくれないか? 私一人でどれだけ通用するか、試してみる。だが、万が一危なくなったら、頼むぞ」


「しー」


主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。


「ん?」


「ア……!」


二人は爆破の様子に気付く。


「寝てらぁ」


「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」


「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」


三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。


(回想終了)




「スマシさん……‼」




(回想)




主人公の両肩に手をやり、爆破は言う。


「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ、ツトム。人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい。私からの最後の……いや、最期の言葉だ」




「……」




爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。


(回想終了)




「スマシさん……‼ 何であの時、『ありがとう』なんて言葉を……⁉」






「ガッ!」






壁を殴る主人公。拳には少し血が滲んだ。金曜日、土曜日と主人公は変わらず塞ぎ込んだままだった。




「はー」




溜息をつく母。


(大丈夫かしら、ツトム……)


二階を見上げる。




そして――、


日曜日が来た。昼、昼食を食べ終えたばかりの時だった。


「ブー、ブー」


主人公の携帯が鳴る。




「!」




主人公は自室でそれに気付いた。尾坦子からのメールだった。


「『アメリカから、もうそろそろ帰った頃かな? 返信、待ってます』……! 尾坦子さん‼」


咄嗟に返信する主人公。


「『アメリカからは二日前に帰りました』……と」




すると――、




「ブー、ブー、ブー、」




電話が鳴り始めた。尾坦子からの着信電話だった。

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