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71話 報告と手土産




   改造祝いから一夜明け、

   郁人、チイト、ジークスは

   ギルドの受付でフェランドラと

   話していた。


   ポンドは郁人の影で待機しており、

   ユーは郁人の胸ポケットですやすや 

   寝ている。


   ギルド内はチイトがいる為、

   閑散としており、受付で

   長話しても問題ない。


   「あの威圧野郎また来るのかよ……」

    

   話を聞いたフェランドラは

   顔をしかめた。


   「俺が飲んだ鱗も、時間が経てば

   効果がなくなる可能性があるからって」

   「いや、絶対に来る口実だろ。

   オレはあいつがお前のパーティに

   加わると思ってたしな」


   更にパーティバランスが崩れること

   待ったなしだとフェランドラはぼやく。


   フェランドラの様子からヴィーメランスを

   良く思っていない事がありありと

   感じ取れた。


   「……ヴィーメランス苦手なのか?」

   「いきなり意識が飛びそうな威圧して

   天井壊したいけすかない奴に、

   オレはどうやって好印象を?」

   「……ごもっとも」

   〔ぐうの音も出ないわね〕


   フェランドラの的確な意見に  

   郁人とライコは納得した。


   「大樹の木陰亭を直したのも

   威圧野郎とチイトなんだろ?

   えげつない機能ついてんじゃねえか?

   そのジャケットみたいによ」


   カウンターに肘をつき、

   顎を乗せながら

   郁人のジャケットを指差す。


   「いや、そんな機能はないよな?」

   「うん、ないよ」


   チイトは頷く。


   「2度と火災に遭わないように  

   耐火性にして、魔物が襲いかかっても

   傷1つつかないようにしたぐらい」

   「……シェルター並になってるな」

   〔貴族とかが金を積んで欲しがるわよ〕

   「俺的にはありがたいけどな」


   安全が1番と郁人は告げた。


   「キッチンも使いやすくなって、   

    大きな風呂もあって便利だしさ。

   フェランドラも良かったら

   ミアザさん達と遊びに来てほしい」


   大樹の木陰亭の変わり様を

    説明したい郁人は告げた。


   フェランドラはわかったと頷く。


   「チイトとあいつが手掛けた上に、

   ノームまで関わってるからな。

   興味あるし時間が空いたら行くわ」


   そういえばとフェランドラは

   伝える。


   「カランが関所を使ってくれって 

    頭を抱えてたぜ。

    お前ら使わずにどうやって来たんだよ?」

   「空から来た」

   「……そりゃ通らねーわな」

 

    空からの対策したほうがいいんじゃね?

   とフェランドラは頭をかく。


   「次からはちゃんと通ってやれよ」

   「ごめん。気を付けるよ」


   迷惑かけたなと反省しつつ、

   郁人はホルダーから紙袋を出す。

   

   「あと、これお土産なんだけど……

   今渡していいかな?

   賄賂(わいろ)と思われない?」

   〔たしかに、言われそうよね。

   その子、ギルド運営の関係者だもの〕


    疑われそうよねとライコは告げた。


   2人の心配をよそに、

   フェランドラは快活に笑う。

   

   「別に構わねえよ。

   それに、賄賂だと判断すれば

   この植木が渡し主ごとここから  

   弾き飛ばすからな。

   お前がここにいる時点でセーフだ」


   フェランドラが受付に飾られている

   植木を指差しながら話す。


   「まず、お前みてーなお人好しで 

    人畜無害な奴が賄賂なんてしねーだろ」

   「そう言って貰えて嬉しいよ。

   それにしても、この植木……  

    飾りじゃなかったんだな」


   郁人はじっと植木を見つめる。


   「こいつも役割あるんだぜ。

   こいつ、どこにでもある植木に

   見えるが実は魔物の1種でな」


   魔物に見えねーだろと

   フェランドラは植木をつつく。


   「オレのお袋が従魔契約してるんだ。

   で、こいつの役割は見張りだ」

   「見張り?」


   郁人は不思議そうに首を傾げる。


   〔ギルドのメンバーや役員にも

   不正する奴はいるわ。

   ギルド内に監視する立場の者を

   置くように決められているのよ〕

   <パパにわかりやすく言えば……

   あれかな?

   刑事ドラマに出てくる監察官!

   警察内部の不正を取り締まるやつ!

   あれのギルドバージョンだね!>


   ライコが説明し、チイトが付け足した。


   (成る程な。説明ありがとう)


   郁人は2人に感謝し、植木を見つめる。


   「監視をこの植木が……」

   「こいつ、結構優秀でよ。

   不正を見抜くのがずば抜けて得意だ。

   ギルドの関係者だろうが不正があれば

   自慢の(つた)でバシーンってな。

   ジークスはその場面見たことあるだろ?」

   「そうなのか?」

   「あぁ。見たことがある」

 

   郁人の問いにジークスが頷く。


   「俺を金でパーティに加えようと

   した者がいてな。

   腰巾着になる気が満々だった事もあり、

   断っていたがかなりしつこくてな……。

   それを見かねたこの植木が

   その者を弾き飛ばしたんだ」


   あのときは助かったとジークスは語り、

   植木に触れる。


   「あのときは本当に助かった。

   感謝する」


   頭を下げるジークスに応えるように、

   植木はゆらゆら揺れた。


   「金で実力を買おうとする奴は

   多いからな。

   そういった奴程、迷宮で

   バタバタと死んでいく。

   こちとら犬死にさせる為に

   送ってるんじゃねーってのによ」


   後始末とか色々面倒なんだよと

   フェランドラは目をつり上げた。


   「以前、それでもめていたな」

   「そうなのか?!」


   聞いたことなかったと

   郁人は目をパチクリさせる。


   「あぁ。

   前に甘ったれが家柄と金で

   実力者を集めて潜った結果、

   そいつ以外が全員死亡。

   甘ったれが重傷を負った件があったんだ」


   面倒くさかったと思い出し、

   眉をしかめる。


   「そいつがギルドのせいだと

   ギャーギャー騒ぎ立てやがったから、

   憲兵まで駆り出される騒ぎになったんだ」

   「それ、大丈夫だったのか?」


   憲兵が出てくる事態になったなんてと

   心配する郁人にジークスは口を開く。


   「大丈夫だ。

   非はその者にあったからだ」

   「オレ達にあってたまるかっての」


   フェランドラが口を歪める。


   「オレ達、ギルドはそいつの実力に

   あったものしか提示しねー。

   だが、そいつは実力に見合わねえ

   遥か上のランクをこっちが知らない間に

   勝手に選んだからな」


   気づいたときには手遅れだったと

   とフェランドラは告げる。


   「ギルドの忠告などを

   全て無視した上に行った蛮行だ。

   完全に自己責任と証明された。

   後で、親が謝りに来ていたな」


   その場面を見ていたジークスは

   思い出した。


   「本人が来いって話だが、

   そいつはもう出禁だからな。

   ……っと、面倒な話はここまでだ!

   もやし!土産くれよ!!」


   フェランドラは耳を立てながら

   手を出した。


   その手に郁人は紙袋、土産を手渡す。


   「了解。

   この箱がフェランドラの土産。

   こっちはミアザさんの分だから

   渡しといてほしい」

   「サンキューもやし!

   親父にも渡しとく!

   で、早速開けてもいいか?」

   「どうぞ」


   了承の言葉とともにフェランドラは

   箱を開けた。


   「おっ!   

    腕時計じゃねえか!」

   〔受付の子に似合いそうね〕


   中には、頑丈そうな腕時計が

   入っている。


   瞳を輝かせるフェランドラに

   郁人は説明する。


   「前、壊れたって言ってただろ?

   ワイバーンの鱗が使われてるから

   殴っても壊れないくらい

   頑丈だと店主から聞いた。

   だから、メリケンサックにしても大丈夫」

   「マジか!?

   ワイバーンの鱗って滅多にとれない

   素材だろ?!

   大丈夫だったのか、お前!」


   財布は大丈夫か?!

   と尋ねるフェランドラに

   郁人は大丈夫と頷く。


   「向こうじゃ頻繁(ひんぱん)にとれるみたいで、

   そんなにかからなかったから」

   「あちらでは、魚の鱗や貝殻を

   使ったデザインのほうが高価だからな」


   2人の言葉を聞いたフェランドラは

   遠慮なくいただく。


   「……そうか!

   じゃあ、いただくわ!

   腕時計は頑丈に限るからな!

   マジサンキュー!」


   声を弾ませながら、フェランドラは

   手首につけたり、メリケンサックにして

   着け心地を確認する。


   〔本当に腕時計をメリケンサックに

   してるの?〕

   (フェランドラは非常用の武器として

   使っているんだ)


   ライコの疑問に郁人は答えた。


   (ワイバーンの鱗だから、メリケンサックに

   使っても壊れないと思ってさ)

   <あれで殴られたら、骨が折れるから

   武器として使うのはありだね。

   パパもメリケンサックとか欲しい?

   もっと頑丈な鱗あるから作れるよ>


   無邪気に尋ねるチイトに郁人は

   遠慮する。


   (使う機会は無いと思うから遠慮しとくよ)

   <あっ!そうだね!

   パパみたいに殴り慣れてない人が

   殴ったら指とか怪我する危険が

   あるもん!

   それに、殴るとかの事態になる前に

   俺が消せばいいしね!>


   パパが前に出るなんてあり得ない

   とチイトは納得した。


   〔こいつが動いたらえげつなくなるから

   そんな状況に陥らないでよね?〕

   (自分から危険につっこみはしないから)


   大丈夫と郁人は告げた。


   「よし!  

    お前らがどれだけ迷宮で戦ったか

   見せてもらおうじゃねーか!」


   上機嫌なフェランドラは受付から

   万能クリスタルくんを取り出した。


   「こいつでどれだけ魔物を  

    倒したか測定するぜ」


   フェランドラは郁人を指差す。


   「まずはもやしからだ!

   この2人は予想つくが、

   お前は謎だからよ!」

   「わかった」


   郁人が水晶に触れると手の甲に

   ギルドのマークが浮かび上がる。


   「おわあああああ?!」


   瞬間、水晶が光りだすと

   紙が次々と吐き出されていった。

   

    (コピーを刷った時と光景が似てるな)

   〔のほほんとしてる場合じゃないわよ!

   これは凄いことなんだから!〕


   懐かしそうにしていると

   ライコに遮られた。


   「……お前どれだけ狩ってきたんだよ?!

   せいぜい1,2枚だとふんでいたが、

   10枚以上あるじゃねえか!」


   紙束を抱えながら、フェランドラは

   声をあげた。


   「凄いことなのか?」

   「この紙には狩った魔物のレベルや

   種類ごとに書かれているらしい。

   これだけの枚数が出る事は

   それだけ狩ったということだ」


   首を傾げる郁人にジークスが答えた。


   「マジでどういうことだよ?!」


   フェランドラがまだ飛び出る紙を

   必死に拾い集める。


   「それは……」




   ー 「ズルしたんじゃないか?こいつが」




   後方から下卑(げび)た声が聞こえた。




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