表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/377

50話 剣の先には


※今回、最後に作者が描いた

キャライラストが載っております。

見たくない方はスクロールして、

文章までお進みください。


イラストの無断転載(複製)・

自作発言等は禁止になります。





「パパ……」

「父上……」

「イクト……」


郁人達はヴィーメランスが呼び出した

ブレイズの背に乗り、城に向かっている。


全員の物言いだけな視線から

郁人は逃れようと身じろぎした。


が、背にいるヴィーメランスの

腕が逃さないとがっしり固定する。


<パパ>


横を飛ぶチイトも逃がす気は無いと

目で訴えていた。


(説教を受ける以外はないな……)


お手柔らかにお願いしたい

と郁人は息を吐いた。


ーーーーーーーーーーーーーー


あのあと、血を流した郁人を狙って

一斉に魔物が襲いかかったのだ。


「マスター!!もっと後ろに!!」


ポンドが郁人を更に後ろに下がらせ、

迫り来る魔物を斬り裂く。


ユーも背中から触手を出し、

背後から沸いてきた魔物から

郁人を守る。


(思いの外、反応が早いなっ?!)


魔物の目が血走った様子に

喉がひりついてしまう。


〔あんた!!足元!!〕

「え?」


ライコは思わず声を上げた。


郁人の足元から魔物が来ていたからだ。


「パパ!!」


すぐに反応したチイトが影移動で

郁人の元へ戻ると片手で抱える。


「何でこんな事したの?!」


足元からの魔物の襲撃をかわし、

蹴り飛ばす。


蹴りの威力に、魔物の頭は

ザクロのように割れた。


「チイトありが……」

「自分を傷つける……

しかも、絵を描いたりする

大事な手をなんで……!?」


感謝を告げた郁人の言葉を遮り、

チイトは責めた。


「でも、利き手じゃないぞ……」

「利き手とか利き手じゃないとかの

問題じゃないっ!!

自分で傷つけて良い訳がないだろっ!!」


歯をむき出しにし、近寄る魔物を蹴り殺し、

マントで斬り刻んでいく。


チイトの怒りが手に取るようにわかった。


「父上!

御身を御自愛ください!!

自傷行為などもっての他です!!」


郁人に迫る魔物を次々に焼き付くし、

ヴィーメランスは火の粉を

舞わせながら郁人のもとへ進む。


「イクト!

君が傷つくのは嫌だと言った筈だ!!

それをなぜ自らしたんだ!?

たとえ、自らでも君が傷つく姿など

私は見たくないっ!!」


ジークスも魔物を斬り刻みながら

郁人のもとへ急いで向かう。


自身が傷ついた訳でもないのに

顔が真っ青だ。


「マスター!

私は危険性を教えたのです!

ですのに、自ら危険に突っ込むとは

どういう事ですかな!?」


ポンドは迫り来る魔物を斬り捨てながら

声を上げた。


肩に乗るユーもペシペシと頬を叩き

不満を伝える。


「弁解はさせてほしい。

俺の血が魔物にとってご馳走なんだ。

だから、血で魔物を集めれたら

皆が一網打尽にできるかなと思って。

それに、街に魔物が行かなくて済むし」


皆の様子が思いのほか深刻な為、

郁人は慌てながら説明した。


聞いたチイトは額に手を当てる


「一網打尽ね……。

1ヶ所に集めるならこうやって出来るけど?

というか準備済みだから」


チイトが指を鳴らすと空に黒い穴が

出現する。


すると、闇のような穴は

獣の唸り声のような音を立てながら

魔物を吸い込み始めたのだ。


吸われた魔物の末路は、ゴキリと

固いものが砕かれる音からわかる。


〔なによ……あれ……?!〕


身がすくむ音にライコは声を震わせた。


目の前の光景に全員が息を呑む中、

チイトは淡々と告げる。


「あれで邪竜の気も含め全て一掃出来る。

使うにはたくさんの魔物の魂が

必要だから殺してたけど……

パパがこんな行動に出るなんて……。

ユー、あの羽根を出せ」


指示されたユーは

カラドリオスの羽根をくわえ、

チイトに差し出す。


「パパにはこっちのほうがいい」


傷口に羽根を置くと、傷はあっという間に

消えて羽根は黒ずんだ。


羽根は用済みだとチイトは燃やし、

郁人に背筋が凍える笑みをみせる。


「パパ……

覚悟してね」


つるんと硝子のような、

なにも写さない瞳を郁人に向けたのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


チイトは横を飛びながら、

郁人に心中を伝える。


「パパ、俺の気持ちわかる?

俺はパパに怪我とかしてほしくないんだ。

それなのに、自傷行為とか……酷いよ」


顔を曇らせたチイトは述べていく。


「俺達が戦いやすいように

してくれたみたいだけど。

パパが傷つくなら、そんなのいらない」


郁人の目を真っ直ぐ見て告げた。


「父上」


声をかけられた郁人は振り向く。


「俺達は父上を守るために、

後ろで待機してもらっていたのです。

それなのに、自傷行為をされてしまっては

本末転倒もいいところです」


ヴィーメランスは自身の額に

手を当て、首を横に振った。


「俺は君を守ると誓った。

それは君が傷つく姿を見たくないからだ。

しかし、自分で傷つけられては……

俺はどうすればいいんだ」


ヴィーメランスの後ろにいる

ジークスは口を一文字に結び、

拳を握りしめた。


〔あたしは言ったつもりだけど、

聞いてなかったのかしら?

あんたは自分の行動に責任を持ちなさい。

それはあんた自身を大事にすることに

繋がってるのよ〕


ライコのいつもとは違う、

淡々とした口調は威圧感がある。


「ポンド」


ヴィーメランスは郁人の影に控える

ポンドを睨み付けた。


実体化していない時は、

影に潜むことが可能のようだ。


「着き次第、首を出せ。

経緯(いきさつ)はどうあれ父上が

傷ついたことに変わりない」

「かしこまりました」

「待てっ!

ポンドは悪くないだろ!?」


ヴィーメランスの発言に

郁人は異議を唱える。


「これは俺が独断でしたことだ!

ポンドは関係ない!!」

「いいえ、マスター。

私は側に控えていたというのに、

マスターの行動を阻止することが

出来ませんでしたから。

私の責任ですな」

「違う!

これは俺の責任だ!」


ポンドが粛々(しゅくしゅく)と受け入れる姿勢に

郁人は反論した。


「では、御身を御自愛ください父上。

俺は勿論のこと、他の奴等も父上が

傷つけば何をしでかすかわかりませんので。

いいですね?」


ヴィーメランスは郁人に確認した。


“次に自らを傷つけるような事をすれば

覚悟するように“

と含みを持たせている。


郁人は暗に言われた事も理解し

深く頷くと謝罪する。


「……わかった。

皆、本当にごめん」


郁人は自分の認識を改めた。


彼らは郁人が思っているより、

いや、それ以上に大切なのだ。

宝物同然なのだ。


だからその郁人が傷つけば、

自傷行為だろうと許せない。

決して、許さない。


彼らの姿がそれを物語っている。


〔薄々感じてたけど、あんた……

自分を(ないがし)ろにする癖があるわよね〕


ライコは長いため息を吐いた。


〔他人が大丈夫なら、自分が傷ついても

構わないって訳?

いじめの件も、女将さん達を

悲しませたくないから

自分が我慢すれば大丈夫的なこと

思ってたみたいだけど……

それは勘違いよ〕


断言し、ライコは続ける。


〔あんたを大切に思う人を

あんた自身の手で傷つけている事に

変わりないわ。

それがあんたの根本にあるのかも

しれないけど……。

あんたはまず自分を大切にしなさい。

いいわね?〕

(……わかった。気を付ける)


郁人は心に刻んだ。


(ここまで大事(おおごと)になるとは……

俺の血で、街や皆も無事ならいいと

思ったんだが)

〔絶対に駄目だから!〕

<許さないからね、パパ>


ライコとチイトの底冷えした声が

断言した。


郁人の性格にライコはため息を吐く。


〔こいつ、どうしたらこんな

自己犠牲というか……

こんな性格になるのよ〕

<双子の妹を守ろうと必死だったからな。

妹がストーカー被害に遭ったとき、

パパは妹を庇って刺されかけたし>


あのときは心臓が止まりかけたと

チイトは呟く。


(そういえば、そんな事あったな)


チイトの言葉で郁人は思い出す。


妹にストーカーがまとわりつき、

そのストーカーがナイフで妹を

刺そうとしたのだ。


郁人は妹を守ろうとしてストーカーに

刺されかけた。


が、誰かが犯人のナイフを蹴り飛ばし、

鳩尾に1発入れて倒したので

刺されずに済んだ。


思いだしながら、自分の行動の

正統性を述べる。


(妹を守るのは当然だろ?

女の子に傷でもついたら大変だ)

<パパが傷ついてもいい訳じゃ無いから。

あの時はあいつが居たから

怪我せずに済んだだけだし。

それ、わかってる?>


冷えた声でチイトは伝えた。


<また庇うような事したら……

パパ以外殺すかもね。

それなら、パパは誰も守らなくて済むし、

傷つくことなんて無いから>

(殺すなんて絶対駄目だからな!)


チイトの言葉に郁人は焦っていると

ヴィーメランスの声が響く。


「庭に着陸し、安置所に向かうのは

時間の無駄。

このまま突っ込みます!!」


ヴィーメランスは来た時と同じ

炎の球体で周囲を囲むと、

一気に突っ込む。


壁は呆気なくも木っ端微塵(こっぱみじん)だ。


いや、それどころが炎の熱によって

溶けてしまっている。


突撃した際の衝撃はヴィーメランスの腕が

郁人を支えていた為、落ちずに済んだ。


「ありがとうヴィーメランス」


郁人は感謝を告げると、

着地したブレイズから急いで降りる。


「サイネリア殿?!」


実体化したポンドが驚きの声をあげた。


ポンドの視線を辿り、郁人は固まる。


「なんで……?!」


郁人も思わず息を呑んだ。

肩に乗っていたユーも目を見開く。


安置所には、護衛騎士と

メンテナンス担当の者達が倒れている。

皆が傷だらけの満身創痍(まんしんそうい)だ。


が、郁人達が驚いたのはそこではない。


郁人達の視線の先には、

壁際に追い詰められ、粉々になった

氷の上に座り込む、剣先を向けられた

リナリア。


そして……


リナリアに、自身の主に剣を向ける

“サイネリア“がいたからだ。




ーーーーーーーーーーー


挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ