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47話 属性について



目を丸くするサイネリアに、

昨晩の事を郁人は話す。


「俺、ヴィーメランスがあだ名で

呼ばれてるのに驚いたんだよ。

そういうの嫌いそうだしさ。

けど、受け入れていたから理由を

聞いたんだ」


郁人は昨晩、ヴィーメランスから

理由を聞いていた。


『ヴィーメランスがあだ名で

呼ばれてるのにびっくりした。

そういうの嫌いそうだからさ。

理由を聞いてもいいか?』

『大した理由はありませんが……』


ヴィーメランスはあっさり話してくれた。


『俺も呼ばれた当初は、苛ついて

燃やしたりなどしました。

が、あいつは実力もありますし、

何より根性があるので認可しました。

あんな態度ですが、他とは違い、

信を置けますので』


だから認めていると

ハッキリ言っていたのだ。


「だから、サイネリアの事を認めているぞ。

なにより、他と違って信も置けるのは、

友達みたいなものじゃないかな?」


郁人は話を聞いて、

感じたことを素直に告げた。


「……そっか。そうなんだ」


言葉を受け止めたサイネリアは、

瞳を潤ませ、表情が明るくなっていく。

体が小刻みに震えだすと爆発する。


「やったああああああああああ!!」


叫びながら勢い良く立ち上がると、

その場で大きくクルクルと回りだした。


その大声量に肩で眠っていた

ユーがビクッと起きてしまう程。


「良かったああああああ!!

友達と思ってるのはお前だけじゃね?

的な事を周りに言われて

不安だったけど……本当に良かったっ!!」


思いの丈を叫ぶと、沸き上がる喜びに

身を任せたまま郁人の手を取り

立ち上がらせると再び回り始める。


「教えてくれてありがとうイクトくん!

僕!ヴィーくんの背中を任せられる

親友になれるように頑張るね!!」

「うん……。がんばれ!」


嬉しくて堪らないと瞳をキラキラさせ

全身で喜びを表す姿に目を丸くしつつ、

郁人は言葉をかけた。


「そうとなればもっと頑張らないと!

イクトくん!本当にありがとう……!!」


喜びを全身から(あふ)れさせ、

魔物を狩りに猛スピードで走っていった。


「すごいな……」

〔それだけ嬉しかったんじゃない?

竜人って友情も重いから。

あいつの場合、忠誠は女王に、

友情は軍人にってことね。

さらりと女王の好きな人を言及してたけど

良かったのかしら?〕

(俺が知ってる前提なんじゃないか?

リナリアさんとよく話してるそうだし)


郁人は座り画面を出すと、

描くスペースに向き合う。


「さて、なにを描こうかな……」

〔ドラゴンのにしたら、

猫被りがうるさそうね。

“なんで軍人とお揃いなんだ“って〕

「たしかに……」


ライコの言葉に郁人は頷く。


(チイトが拗ねる可能性があるな。

……どうするか)


郁人は腕を組み悩んでいると

ユーが頬を突っついてきた。

どうかしたのか?と言いたげだ。


「俺も空を飛んでみたいからさ。

翼をどうしようかと思ってな。

ドラゴンはヴィーメランスと被るし」


ユーを撫でながら理由を告げた。


すると、ユーは膝に移動して

クッションサイズになると、

背中のチャックから自分の体より

数倍大きい何かを出した。


ーそれは見事な翼だった。


神々しいものから禍々しいもの、

カラーもシンプルなものから

色鮮やかなものもあって

種類がとても豊富である。


ユーは郁人に見やすいように

自慢気に翼を広げている。


〔こいつ本当になんなの?!

背中のチャックは何?!

前、触手が出てきたときは

失神しそうになったのに次は翼?!

千手観音みたいに広げてるけど

多過ぎて気味が悪いわよ!?

こいつ……本当になんなのよ?!

混ざってるのにヤバいのが

居るのか肌がピリピリする……!〕


ライコの悲鳴に似た叫びが耳に刺さった。

鼓膜の揺れを感じながら郁人は頬をかく。


(なんの生き物か俺にもさっぱり……)

〔あんた少しはビビるなりしなさいよ!!〕

(いや、だってなあ……)


ユーは自慢気に見せていたが、

郁人の反応がないので悲しそうに

喉を鳴らす。


「翼をたくさん見せてくれてありがとう。

ユーはスゴいなあ!」


郁人は慌てて気持ちを伝え撫でると

先程とは違い、嬉しそうに喉を鳴らした。


(可愛いからいいかなって)

〔可愛いからってなに?!

見た目に騙されちゃダメよ!?

よく見たらその翼だって

えげつないのばかりなのだから!!〕


可愛がる郁人にライコは警告する。


〔神々しいものは絶滅危惧種のペガサス!

禍々しいものはかなり上位の魔人よ!!

他にも妖精のものや、グリフォンもあるし!!

頭が痛くなってきた……〕

(……そうだったのか。

チイトはどれだけ混ぜたんだ……?!)


悲鳴を上げながらの説明を聞き、

かなりヤバイ翼まであるのを理解する。


「……ん?」


ふと、複数ある大きな翼の中に、

1回りか2回り程小さな純白の翼が

目に止まった。思わず手を伸ばす。


「……すごい!」


触れると例えようが無いほどの

柔らかさに、本当に触れているのか

わからなくなってしまう。


「この羽根……とてもふわふわだ!」

〔その翼はカラドリオスのものね〕

「カラドリオス?」


聞いたことない名前に首を傾げた。

ライコはわかりやすく説明する。


〔治癒魔術に長けた光属性の魔物よ。

羽根に病人や負傷者が触れると治るの。

触れられた羽根は病や傷を吸収し

黒くなるわ〕

(治癒魔術ってあったのか!?

あと、光属性って雷じゃ……)


郁人は羽根の効果にも驚いたが、

その事実に口を開ける。


〔あるわよ。

そして、光属性はたしかに雷が

多いけど、本来は違うの。

折角だから教えてあげる〕


ライコが教壇に立つように教える。


〔そういえば、あんた。

光以外の属性は知ってるかしら?〕

(たしか……

無・炎・水・風・花・土・闇だっけ?

でも、内容はあまりかな……)


郁人は以前、ジークスから聞いた事を

思いだし、そのまま口にした。

が、詳しくは知らないなと頬をかく。


〔正解よ!

じゃあ、他の属性から話しましょうか。

まず“無“は誰でも使える属性なの。

身体能力向上や空間魔術はこれに属するわ。

あと、他の属性に当てはまらない場合も

これに分類されるわね〕


誰でも当てはまる属性だから

ステータスに表示されないと告げた。


〔“炎“は文字通り、火に特化した魔術よ。

属性の中でも、攻撃力がずば抜けて高いわ。

無の次に使い手が多い属性でもあるわね〕

(ヴィーメランスの属性だな)


郁人は風の護りを通り抜けれる

炎の壁を思い浮かべた。


〔あの軍人レベルは異常だから。

まず魔道具使ってないから魔法よ〕


軍人は規格外だからと告げ、

咳払いして再び口を開く。


〔“水“も文字通り。派生で氷も使えるわ。

そして、水に当てはまった人の大半が

氷を使うわね。

液体を自由に動かすのは至難の業だから。

水を使えるのはスゴいことなのよ〕


滅多にいないのだからと告げる。


〔“風“は遠距離の攻撃や、

風を使って移動速度をあげたりと

生活面でも利用できる属性よ。

派生で重力を操れるらしいけど

あまりに高度だから使い手はいないわ〕

(チイトが空飛んだりしてるのは……)

〔この属性よ。

空を悠々と飛べるのもスゴいわ〕


あの猫被りも勿論規格外

とため息を吐いた。


〔“花“は植物や虫、動物といった

自然に関わる属性で、

サポート系が多く見られるわ。

従魔もこの属性に分野されるわね〕

(他人から見れば、俺は花になるのか?)

〔そうね。

猫被りが改竄して従魔と記してるから〕


ライコは同意し、再び口を開く。


〔“土“は地面や岩を操り、

ゴーレムを作ったり、拠点作成、

罠を仕掛けたりとか出来るの。

これもサポート系の魔術が多いわね〕


あまり花形の属性ではないと話した。


〔“闇“は気配遮断や影を使用した

移動とか暗殺に長けて、精神操作や

呪いといった黒魔術もこれに属するわ。

今思えば、猫被りはこの属性なのに

風も使えるわよね……どうしてかしら?〕

(他の属性も使えることは珍しいのか?)


郁人が尋ねると、説明してくれる。


〔別に使えてもおかしくないわ。

属性は1人に2つある事だってあるし、

属性が付与された魔道具を使えば

誰だって他の属性は使えるもの。

でも、猫被りは闇属性だけなのに

魔道具無しで高度な魔法を使って……〕

<説明するならさっさとやれ。

貴様は本題に入る前の話が長すぎる>


チイトがわざとらしい長いため息を吐いた。

遠くで狩っているが、聞いていたようだ。


〔別にいいじゃないの!

詳しく知らないって言ってたのだから!

あんたは狩りに集中してなさいよ!〕

<相手が弱すぎるから問題ない。

貴様がブンブンと耳障りな(こえ)

出してるから不快になっただけだ>

〔あたしの声は(はえ)の羽音か!!〕

<パパ!

わからない事があったら俺に聞いて!

わかりやすく説明するから!

あっ!良いの見つけた!>


ライコの抗議を他所に、チイトは優しく

郁人に以心伝心(テレパシー)で話し、狩りに戻る。


〔自由過ぎじゃないあいつ……!!

ごほんっ……そして、光は雷に派生し、

雷を用いた魔術で敵をスタンさせたり、

ダメージを与えたりと大半が雷なの〕


息を整え、咳払いしたライコは

説明に戻った。


〔けど、本来の光はサポート。

特に治癒魔術に長けたものなの。

光の使い手は滅多にいないし、

その使い手をある国が昔から独占してるから

知ってる人がいないのよね〕

(そうだったのか……!?)


こちらに来てから、治癒魔術が

存在しないと認識していたので、

存在する事、独占されている事に

息を呑んだ。


〔全く……!!

貴重な治癒魔術を独占するなんて

何を考えてるかわかったもんじゃないわ!

その魔物もそこに独占されてるから

滅多に見られない伝説級なの。

……そうだ!その翼にしましょう!

あんた触り心地気に入ってるみたいだし、

あたしその国の方針好きじゃないから

当てつけに!!〕


言葉尻からその国を好いていない事が

よくわかる。


(いいよ。この翼を気に入ってるし。

当てつけになるかはわからないけど)

〔それはあたしの気分の問題だから〕

(……そうか)


郁人はユーにお願いする。


「ユー、この翼をじっくり見たいから

他のは仕舞ってもらってもいいか?」


ユーは体全体で頷くと、

指定された翼以外は全て仕舞った。


「……よし!」


郁人は両頬を叩き、

気合いを入れるとデッサンに集中した。




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