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小話 夏休みのひととき

※郁人が幼い頃のお話になります。




   蝉の鳴き声が青空に響き、太陽の日差しが

   降り注ぐなか、郁人は自宅の縁側で扇風機

   の風を浴びながら倒れている。

   小学校は夏休みなので、家でのんびり

   しているのだ。


   「あ〜つ〜い〜〜……」

   「そりゃ、そんなとこで倒れてたら

   暑いだろ」


   そこへ麦茶入りのコップを2つ乗せた

   お盆を持った篝がやってきた。


   「あれ? 篝、遊びに来てたの?」

   「お前がそこでダラっとしてたから

   気づかなかったんだろ。ほら、飲め」

   「ありがとう」


   郁人は起き上がると麦茶を受け取り、

   ごくごくと飲み干す。


   「あ〜! 冷たくて美味しい!」

   「暑いならなんでそこで倒れてたんだよ」

   「床が冷たくて気持ちいいから」

   「そういや、冷房か効きにくくなってる

   ってお前のじいちゃんが言ってたな。

   それでか」

   「うん!」


   篝は納得したあと、郁人の隣に座ると 

   麦茶を飲む。


   「まあ、たしかに扇風機もあるから

   ここはまだ涼しいほうか。そういや、

   妹はどうした?」

   「妹は友達とプールに行ったよ。

   ほら、学校のプールが今日から使える

   から」

   「それで見かけなかったのか。

   お前は行かなくてよかったのか?」

   「俺が泳げないのは知ってるだろ?

   溺れる自信しかないから誘われたけど

   断ったんだ」

   「そうだったな。お前、泳げなかったな。

   なら……その……だな……」


   篝は思い出したあと、視線をさまよわせ

   口をもごもごとしたり、どこか緊張して

   いる。そんな挙動不審な篝に郁人は尋ねる。


   「篝? どうしたんだ? なんかいつもと

   様子が違うけど……」

   「あのよ……その……明後日の水曜日は

   あー……予定は空いてるか?」

   「水曜日?……なにもなかったと思うよ」


   郁人は予定はなかったはずだと

   思い出しながら告げると篝は

   ポケットからあるものを取り出して

   見せる。


   「じゃあ、その……遊園地に行かないか?

   親父がチケットを貰ったんだけどよ、

   ペアチケットだったからお前を誘って

   遊びに行ったらどうだ? って言われてよ」


   ポケットから取り出したものは

   遊園地のチケットだ。

   郁人はそれを見て目を輝かせる。


   「その遊園地、前にテレビで出てた!

   最近できた遊園地で面白そうなの

   いっぱいあったから覚えてる!!」

   「俺も一緒に観てたから知ってる。

   で、しかもこのチケットなんだが……

   お化け屋敷の優待券付きだ。

   お前も行くだろ?」

   「行く!! お化け屋敷行きたかったから

   本当に嬉しいよ!! けど、本当にいいの?

   篝のお姉さん達が前に行きたいって

   言ってたって篝から聞いたけど……」

   「姉貴達は友達と行くからいいんだ。

   その……俺と一緒はいやか?」


   尋ねる篝に郁人は首を横に振る。


   「イヤじゃないよ! むしろ、篝が

   誘ってくれてとても嬉しいから!

   俺、その遊園地のお化け屋敷に

   行きたかったから本当に嬉しいんだ!

   ありがとう、篝!」


   弾けるような笑顔を見せる郁人に

   篝は少し照れてそっぽ向きながら

   頷く。


   「べつに……俺も行くならお前と

   行きたかっただけだし、お化け屋敷も

   気になってたからな。

   ……その、遊園地いっぱい楽しもうな」

   「うん! じゃあ、遊園地のときに

   篝と食べるお弁当を作るよ!  

   楽しみにしててね!」 

   「! おっおう! 楽しみに……してる」   


   楽しみだなあ! と早くもウキウキしてる

   郁人に篝は隠れてガッツポーズを決めた。 


   「ちなみに、どんなのが食べたいとか

   リクエストはある?」

   「俺は……オムライスがいい」

   「オムライスね! じゃあ、片手でも

   食べれるようにおにぎりにしよっか!

   それでもいいかな?」

   「それで……いや、それがいいな!」


   篝はにやけそうになるのを必死に

   耐えながら会話を楽しんだ。    





ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしくお願いします!


ーーーーーーーー


「篝ったら、郁ちゃんと遊園地に行くの

よほど楽しみみたいね! ネットで調べて

たくさんチェックしてるもの!

私に行く時の服装の確認もしてきたのよ!」

「それはよかった! 渡した甲斐があった

もんだ!」


桃山夫妻は自分の子供の様子を

思い出しながら会話を弾ませる。


「篝は格闘技やスポーツの観戦以外

興味ない感じだったのが、郁人くんに

会ってからはいろんなものに興味を

持つようになって嬉しく思うよ」

「大人び過ぎて心配だったのだけど

たくさん笑うようにもなったから

私も嬉しいわ! 郁ちゃんには感謝

しなくちゃいけないわね!」

「今度、一緒にご飯を食べようと家に

招待するのもありかな?」

「それもいいわね! でも、あの子は独占

したがるから嫌がりそうな気もするわ……」

「その反応も見たくて誘うので」

「まっ! あなたったら!」


どのように招待するかなど夫妻は

ますます話に花を咲かせた。


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